炭酸刺繍幻想

弾ける泡沫うたかたは玉響たまゆらに　ふるえる大気圏を抱き　　　
百舌は泣く　失われた約束の梢に早贄を刺し　
モンスーンを従え　蝶がカルビン回路を巡る　
吐き捨てられた孤独を集め　夜の帳とばりがおりる

流れる泡沫に　ストラディバリが泣いている　
風には千の跫音あしおとがあり　海に千尋の聲を掬すくう
ぷらあんよわあんと糸遊はのどけき光の戯れ
鉄の壁に凭もたれて聴こう　遠き約束の子守唄を

移ろう泡沫は　パウル・クレーの素描に遊び
蝋石の線路は消され、鯨の影は銀河を彷徨う
ひねもすたゆたう春の海に信天翁あほうどりは凪を縫う
天蚕糸てぐすを縒り繻子しゅすに明日の約束を刺繍しよう

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※補足
（１）カルビン回路：光合成における炭酸固定反応のこと。
（２）糸遊：春の晴れた日に蜘蛛の子が糸に乗じて浮遊する現象。
　　　　　　陽炎のことをさすこともある。

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こちらの企画に参加させていただきました。
藤家　秋様、はじめましてですが、どうぞよろしくお願い申し上げます。