大豆田とわ子という偶像

今期のドラマの中でダントツにはまった「大豆田とわ子と三人の元夫」。ひさしぶりに夜の楽しみができた。仕事が終わって「今日は火曜日だ。9時までにやること終わらせよう」というモチベーションになった。

元々坂元裕二さんの作品は好きだった。相変わらずフレーズの裏側を探りたくなってしまうような秀逸な台詞。登場人物を演じる役者たちの醸し出す雰囲気。そして、日常をほんのちょっと前向きに捉えられるような気持ちになるストーリー。流石です(ちなみに私が坂元作品で最も好きな台詞は「泣きながらご飯食べたことある人は 生きていけます(『カルテット』より)」)。そんな中、本作は繰り返し見たくなるくらいはまった。なぜなら「大豆田とわ子」が自分と重なったからだ。

現代を生きる女性として

大豆田とわ子は、結婚を3回し、離婚を3回している。娘が1人。建築設計事務所の雇われ社長。酸いも甘いも経験している女性だ。一方私は彼女と比較するとまだまだあまちゃんな経験値しかない女性。明らかに住む世界が違う。けれど、なぜだか彼女に共感してしまう。家の中で足の小指をぶつける、ラジオ体操でなんか人とずれてしまう、パンをきれいに食べられない…背負っているものや経験とは裏腹に、彼女はいたって普通の女性だ。加えて、彼女は世の中が女性に被せる殻を破り、彼女らしく、働いている、生きている。加えて彼女は「女」を武器にすることも「捨てる」こともしない。自分の弱い部分は元夫や男性にさらけ出すし、いざというときは社長として男性に立ち向かう。とてもバランスのとれた女性なのだ。共感するというより、こう在りたい、と思える存在なのだ。

「大豆田とわ子」という器に入ってみる

この作品を観るようになってから、日常で辛いこと、問題が発生したときについ自分と大豆田とわ子を重ね、ふふっとなってしまう(たぶん私だけではないはず!)。仕事で失敗したとき、「頭を抱える大豆田とわ子」というナレーションが脳裏をよぎる(作品では、大豆田とわ子の状況説明役として女優の伊藤沙莉がナレーションを担当している。)。ちなみにナレーション、この声・存在がまたいい。朝ドラのように、主人公のおばあちゃん、お母さん、といったバイアスが全くかかっていないし、いい意味で感情が伝わりづらい話し方がより客観性を強調している。

「大豆田とわ子」という主人公の名前が、よりこの減少を増長させていると思う。だってこんな名前の人周りに絶対いないでしょ。だから自分を「大豆田とわ子」と重ねやすい。演じる松たか子も(とてもいい意味で)役の中で強い個性を表現していないから、スポっと収まることができている気がする。


大豆田とわ子になって、伊藤沙莉の声が聞こえて、日常がほんのちょっぴり楽しくなっている。そんな最近です。

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