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第2回「ガチ中華」人気4ジャンル~①「麻辣(マーラー)料理」

「ガチ中華」には4つの人気ジャンルがあり、「麻辣(マーラー)料理」「羊料理」「ご当地麺」「小吃(シャオチー)」であることを前回お話しました。

なかでも、いま都内を席巻しているのが「麻辣料理」です。「ガチ中華」の代名詞ともいえます。こうしたことから、一般に「ガチ中華」は辛いというイメージを持っている方が多いかもしれません(実際にはそうでもないのですが)。
 
以下、主な麻辣料理を紹介しましょう。
 
■四川火鍋
 
麻辣料理の代表は、痺れる辛さに口から火を吹き出しそうになる「四川火鍋」でしょう。
 
四川省や重慶で愛される激辛火鍋です。真っ赤なトウガラシが鍋を埋め尽くすほどのド派手さです。
 
牛脂や豆板醤(トウバンジャン)、乾燥トウガラシ、痺れの元である中華山椒の花椒(ホワジャオ)、ショウガ、ニンニクなどにスープを入れて沸騰させ、さまざまな具材を入れてゴマダレなどにつけて食べます。どす黒く煮えたつスープの痺れや辛さ、熱さで体から噴き出る汗はハンパではありません。
 
鍋というより大量の油で具材を煮ているような感じです。
 
都内にはこの「四川火鍋」が食べられる店がたくさんあります。2000年代にはすでに火鍋の店が現れていましたが、ここ数年の特徴は、本場四川のスタイルがそのまま持ち込まれていることです。

■マーラータン(麻辣燙)
 
火鍋の進化系ともいえるのが、マーラータン(麻辣燙)です。

麻辣燙の「燙(タン)」は、わかりやすく「湯(スープの意味)」と書く場合もある


これはいわば「一人用火鍋」のようなもので、たいていラーメンどんぶりのような器で提供されます。2000年代以降、中国ではマーラータンの専門チェーンも続々登場。その特徴は50種類以上もの具材や辛さの程度を自分で選べるようカスタマイズして楽しめることです。こういう食の現代化、進化こそ、「ガチ中華」らしさといえます。
 
すでに東京には中国No.1マーラータンチェーンの「楊国福」が出店しています。店を訪ねると、日本に住む若い中国の人たちだけでなく、韓国人や若い日本の女性も見かけます。

 
■マーラーシャングオ(麻辣香鍋)

ひとことでいえば、汁なしマーラータンのこと。

都内には「楊国福」以外に「張亮」などの中国チェーンも出店している


中国には「干鍋(汁なし鍋)」という料理のジャンルがあり、マーラーシャングオ(麻辣香鍋)の具材は、海鮮(エビ・イカ)、肉(豚・鶏)、野菜(レンコン、タマネギ、ニンニクの芽)など盛りだくさんで、これも自分で選べます。
 
ぼくは個人的にマーラータンよりこちらが好み。というのも、マーラータンの場合、スープに含まれるトウガラシや花椒のかけらが喉に引っかかってむせぶことがよくあるからです。汁なしならその危険性は若干軽減されるからです。あとはスープで煮込まれていないぶん、具材がしっかり味わえるところも理由です。
 
こちらも都内で食べられる店はたくさんあります。最近の四川料理店では、たいてい提供しています。

 
■串串香(ツァンツアンシャン)/冷鍋串串(ロングォツァンツァン)
 
串串香(ツァンツアンシャン)は、竹串に刺したさまざまな具材を麻辣火鍋のスープで煮ながら食べるもの。一方、冷鍋串串(ロングォツァンツァン)は、同じ串に刺した具材をいったんお湯で茹でてから、冷たい麻辣スープに浸して食べます。

軽食として軽くつまめる冷鍋串串。写真は池袋の友誼食府の中にある四川料理店「香辣妹子」


具材選びやタレ作りを客がやるスタイルは共通していますが、スープが冷たいぶん、辛さが得意でない人には、冷鍋串串のほうが食べやすいかもしれません。これも火鍋の進化・派生系の料理といえ、若い世代に人気があります。

 
■水煮魚(シュイジユーユィ)
 
食べやすい大きさにスライスした白身魚を花椒や乾燥トウガラシを入れた油で炒め、水や豆板醤などを加えて煮た料理。器に真っ赤なトウガラシを敷き詰めたようなビジュアルが圧巻です。

店によってはテーブルで店員さんがこのトウガラシを取り除いてくれることも


中国語では「水煮」といっていますが、実際には油煮といってもいい料理です。
 
初めてこの料理を食べたのは北京でした。テーブルに運ばれた器の上のハンパじゃないトウガラシの量を見たときは、かなり驚きました。「こんなものが食べられるのだろうか」と思いましたが、白身魚のとろけるような食感とともに、痺れや辛さが油で包まれているぶん、気持ち抑えられるのか、とにかくクセになる味で、その後、中国に行くたびに必ず一度は食べに行ったものでした。
 
その後、東京でも食べられる店が増えてきたのですが、自分から食べに行くというより、北京で自分が感じた驚きを友人たちに伝えたいという思いから出かけることが多いです。
 
この料理は、2000年代前半の頃から中国で流行していた四川料理のひとつです。
 
■烤魚(カオユィ)
 
「烤魚」をそのまま日本語にすると「焼き魚」という意味になりますが、実際にはまったくの別物です。

これはスズキを使った烤魚。写真は上野の四川料理店「撒椒」


ひとことでいえば、いったん焼いたり、油かけをした白身魚を、野菜や豆腐などと一緒に麻辣スープで煮込んだ料理です。
 
この料理は、この10年くらい中国で最も流行した料理といえるでしょう。都内でも食べられる店が増えていますし、実をいえば、海外にある中華料理店でも人気メニューとなっていると聞くように、ワールドワイドな料理です。
 
たいてい大きな四角い鍋でジャガイモやレンコンなどと一緒に魚を煮込みます。もともと内陸に位置する四川省の料理なので、コイやナマズなどの川魚を使いますが、日本ではなかなかこのような川魚が手に入らないので、スズキなどの海鮮魚で代用しているところが多いようです。
 
でも、どうしてもナマズじゃなければ気がすまないという在日中国人向けには、ベトナムから取り寄せているナマズを使うそうです。ぼくも何度か食べたことがありますが、ナマズの身はふくよかでプリッとした淡白な味わいです。

 
正直なところ、ぼく自身は、麻辣料理はあまり得意ではなく、火鍋を食べると顔中汗だく、びしょびしょになるほど発汗してしまいます。ですから、わざわざ自分から行くことはありませんが、ある種のイベント性があって、大勢で火鍋をつつくのは楽しいものです。
 
まだほかにもいろいろあるのですが、今回はここまでにしておきましょう。
 

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