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他空派の宗論 21

第ニ項[依るものである智慧]を説くにあたり、[智慧の本質を認識する][それが所知を知る方法]のニより、

第一項[智慧の本質を認識する]において、[自ら起こった智慧を認識する]と[他から起こった智慧を認識する]のニより、

第一項[自ら起こった智慧を認識する]に[定義][分類]のニより、

第一項[定義]
「法界と智慧が主客ニ元として無い本性であり、断と証の全ての功徳を原初から自質として具えている、不変の円成実性」が、自ら起こった智慧の定義。

第二項[分類]
名称の面から分ければ、法界体性智、勝義の大円鏡智、勝義の平等性智、勝義の妙観察智、勝義の成所作智と、五ある。

第二項[他から起こった智慧を認識する]に[定義][分類]のニより、

第一項[定義]
「仏地の正しい智慧であり、修行道を修した力によって、八識の継続が世俗の色身と、有為の智慧にありさまが変化した、誤りのない円成実性。」が、他から起こった智慧の定義である。

第二項[分類]に四あり、それらの定義のみを記せば『現観荘厳経論』より説かれたごとくである。
本質的特徴は五法を具え、補助的な特徴は他の三智を具え、働きの特徴は報身などが現れる基をして、三の特徴を具える智慧。」が、大円鏡智の定義。
上記の五法についても、合致しない方向によって偏りに落ちることがない。場所は完全に途切れることがない。時が途絶えない。対象が途絶えない。様相が途絶えない、の五である。

「本質的特徴は輪廻と涅槃の極辺に留まらず、全てを正しく平等にご理解されており、補助的特徴として慈愛などを具え、働きとして所化の確信に応じて色身の姿を直接に現させる智慧。」が、平等性智の定義。この「慈愛など」という言葉の「など」から大慈悲が暗示される。
「本質的特徴は一切法(現象)を知ることに対して遮るものはなく、法を教示することに精通した智慧であり、補助的特徴は禅定と果てしない陀羅尼と相応し、働きの特徴は、周囲の者達の中にさまざまな御身の分身をおいて見せて、法輪を回す増上縁をする智慧。」が、妙観察智の定義。
「本質的特徴は量り知れない神変をおこして、さまざまな衆生の利益を成就する智慧であり、付随的特徴は禅定などを具え、働きの特徴は所化の利益を不可思議に素晴らしく成就される智慧。」が、成所作智の定義。この(付随的特徴の)「など」という言葉の意味に、「形あるものの門」などをあげてもよい。

「他から起こった」その四智は、ニ諦のうち世俗諦であり、四聖諦のうち道諦で、ニつの円成実性からは誤りのない円成実性、五法のうち正しい智慧であり、
「自ら起こった」その五智は、ニ諦のうち勝義諦であり、四聖諦のうち滅諦で、ニつの円成実性からは不変の円成実性、五法のうち真如であると主張することは、自派の特別な説である。

新しく起こったその四智の因は、以前の学道時に法(現象)と意味を正しく認識する。自他平等を修する。法(ダルマ)を説く。利他を成就することを助けるなどである。
アラヤ識(全ての基となる識)があり方を変えて大円鏡智となり、マナ識(煩悩の識)があり方を変えて平等性智となり、意識があり方を変えて妙観察智となり、五感覚の知覚があり方を変えて成所作智になると承認し、大円鏡智は法身であり、平等性智と妙観察智は報身であり、成所作智は応身の本質として具わると説かれた。

法界、自性身が
拠りどころとしてあり、

それに依るものとして
仏陀の智慧がある。

仏陀の智慧も
ずっと昔から法界とともに
もともとあった智慧と

修行したことによって
新しく得た智慧の二つがある。

断とは、捨て去るべきもの(例:煩悩)を
捨て去った功徳。
証とは、悟るべきこと(例:空性)を
悟った功徳。

もともとあった法界と不別の智慧には
断と証の功徳が具わっている。

修行して新しく得る智慧は、
仏陀になる前の八識(八種類の知覚)が
修行したことによって浄化され
仏陀の智慧になる。

八識は唯識派が使う言葉である。

眼識(視覚)
耳識(聴覚)
鼻識(嗅覚)
舌識(味覚)
身識(身体感覚の知覚)
意識(顕在意識)
マナ識(我執)
アラヤ識の八で、

アラヤ識は「全ての基」になる
潜在的な意識、

マナ識は「煩悩の意識」と書き、
アラヤ識を対象とした我執であると
唯識では説明する。

仏陀の智慧は一つだけれど
働きや性質から五の名をつける。

大円鏡智:全てを映し出す智慧
平等性智:全てを平等にみる智慧
妙観察智:全てを正しく判断する智慧
成所作智:働きをなす智慧

そして、
仏陀の智慧の空性を
法界体性智という。

全ての様相を含みながら
特定の様相がないありさまに
智慧の名をつける。

様相のないことが
最も豊かな様相をもつ。

今のわれわれのどの知覚が
仏陀のどの智慧になるか?

考えてみると面白い。

仏陀が近く感じられる。

仏陀もニコニコ見ているだろう。

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