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HDDの故障 - 物理障害と論理障害

ハードディスク(HDD)とは、磁力を使って大容量のデータを保存する記憶装置のことです。

PCの内部ストレージや外付けHDDなどの外部ストレージとして幅広く使用されているHDDですが、一般的に寿命は3~5年程度しかありません。

加えて、HDDは「世界一精密な機器」とも言われ、故障した際の復旧は非常に難しいとされています。今回はそうしたHDDの障害について詳しく説明していきます。

1. HDDの内部構造、データ保存の仕組み

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HDDは複数の部品で構成されていますが、主に以下4つの各パーツを中心に構成されています。

プラッタ
・データを記録する円盤状の部品
・1枚だけでなく複数枚で構成され、それぞれにデータが記録されていく。磁気ヘッド
・プラッタに対して磁気データを読み書きする装置
スピンドルモーター
・HDDの回転軸となる主要なモーターで、プラッタを高速回転させる。
・機器により異なるが、プラッタは毎分約5000回転から1万5000回転する。PCB基板
・HDDの電気的な接続を担うパーツで、モーターに電源を供給する。
・それ以外に、ファームウェアなど、HDDを制御する重要なプログラムが搭載されている。

まとめると、HDDは次の流れでデータが読み書きされています。

①「PCB基板」から電源が供給され「スピンドルモーター」が回転する
② モーターの回転にともなって「プラッタ」が回転する
③レコード針にあたる「磁気ヘッド」が回転する「プラッタ」の表面を浮遊してデータを読み書きしていく

このことからわかるように、HDDは非常に物理的な仕組みとなっています。

HDDが「世界一精密な機器」と呼ばれる理由

① プラッタと磁気ヘッドの隙間はナノ単位

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プラッタと磁気ヘッドは非接触構造となっており、約10nmというごくわずかな距離を保って浮遊しています。

この距離は自然界で例えると、コロナウイルス(100nm)よりも小さいのですが、例えこの二つが少しでも接触すると、ともにクラッシュし、深刻な障害を引き起こしてしまいます。

このように、HDDは非常に精密な構造のため、経年劣化などで機器やデータが破損し、読み込みが不可能になってしまうことがあります。

② プラッタは1枚あたり4兆字で構成されている

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HDDの最少記録単位は「セクタ」と呼ばれています。このセクタは「0」か「1」の2進数で構成され、1セクタあたり4096字が書き込まれます。

動画や画像などもセクタがパズルピースのように寄り集まって出来ており、例えば1MBの写真は、約2000セクタ約800万字で構成され、500GBのプラッタともなると、約10億セクタに4兆字ものデータが集まっているのです。

しかし、データが破損すると、セクタを構成するデータが虫食い状態になってしまいます。このようなデータの修復作業は、ソフトで簡単に出来るものではありません。修復にはバイナリエディタという特殊なツールで「0」か「1」のデータを16進数に変換し、どの値が崩れているのかをエンジニアが膨大な文字量から一つ一つ手作業で順不同に解析していく必要があります

次のパートではHDDに起こるデータ障害の原因について解説していきます。

2. HDDが破損する主な原因

主な原因としては次の6つがあげられます。

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1. 経年劣化

HDDは消耗品で、内部のパーツは長期にわたって使用することにより摩耗し、経年劣化します。特に駆動部品である磁気ヘッドやモーター、プラッタは劣化しやすいです。

パーツが劣化した状態で使用を続けると、ヘッドがプラッタに接触するなどの異常が発生し、HDDの物理的な障害に繋がってしまいます。

2. 物理的な衝撃

ナノ単位で高速稼働するHDDが物理的な衝撃を受けると、内部のパーツが破損し、甚大な物理的障害を引き起こすのは言うまでもありません。

物理的な衝撃が原因の場合、HDD修復の専門設備で、HDDの開封や部品交換、プラッタの修復が必要なケースがほとんどです。

3. 高温・多湿

高温多湿の環境では、HDD内の部品がダメージを受けやすく、基板の腐食や磁気情報の変質により、物理的故障を引き起こしやすくなります。火災や水没、夏季の車内放置などのケースがあります。

4. 誤操作

誤操作はデータ消失の原因の約3割を占め、データを誤って消去・初期化・フォーマットすることによって論理的な障害が引き起こされます。

誤操作の後に操作を加えてしまうほど、データが上書きされ、障害悪化に繋がってしまうため注意が必要です。

5. 突然の停電

落雷やケーブル抜けなどでHDDが急停止すると、駆動部品が異常停止することによって物理的故障を引き起こしたり、データを管理するファイルシステムの整合性が崩れ、OSやデータが破損することがあります。

6. ウイルス感染

HDDがウイルスに感染すると、データにアクセスが出来なくなったり、データが破壊・消去されてしまうことがあります。また、身代金要求型ウイルスのランサムウェアは、HDDのデータを暗号化し、期限までに身代金を支払わないと、データを外部に流出させようとします。

次のパートではHDDに起こるデータ障害の種類について解説していきます。

3. HDDの物理障害

物理障害とはHDDが物理的に破損することで生じるデータ障害のことです。

ここからは物理障害の種類について解説していきます。

1. 磁気ヘッド障害(ヘッドクラッシュ)

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物理障害で過半数を占めるのが「磁気ヘッド障害」です。

磁気ヘッド障害は、衝撃や経年劣化などで、磁気ヘッドとプラッタ間の隙間がなくなり、両者が接触(=ヘッドクラッシュ)することで発生します。

磁気ヘッド障害の特徴は主に次の通りです。

・損傷したヘッドは同じ場所を往復し続けるなど、正常に動作しなくなる。
・その際ヘッドはストッパーに接触し、カタカタカチカチと異音を発する。
・ヘッド交換はクリーンルームなどの専門設備で行わなければならない。
・復旧時はオリジナルと完全に一致するパーツを揃え、機器ごとに「ファームウェア」という動作プログラムの微細な調整も行わなければならない。

このように、磁気ヘッド障害からの復旧は非常に煩雑かつ困難で、専門技術でないと対応できません。もしこの状態で使用を続けると、ヘッド・プラッタともに更なる損傷を引き起こす可能性がきわめて高くなります。

2. ファームウェア障害

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ファームウェアとは、HDDの全般的動作を制御するプログラムで、プラッタや磁気ヘッドなどの動作を制御する重要な役割を担っています。

ファームウェア障害が発生すると、正常にデータ領域にアクセス出来ず、データを読み込む磁気ヘッドも不規則に動作して異音が生じやすくなります。

しかし、ファームウェア修復の取組みを行っていない企業では、初期診断でファームウェア障害と分からず、開封してしまい、データ復旧が不可能となることがあります。

なぜ、他の障害と比べてファームウェア障害の修復や解析が、専門業者であっても非常に難しいかというと、次の4つの理由を挙げることが出来ます。

① HDDの大容量化に伴い、プラッタやヘッドが増設され、その分ファームウェアも複雑化したため
②HDDのファームウェアは「メーカー」「型番」「製造年」などで、性質が異なっているため
③ ファームウェア情報は非公開であり、どこが問題なのか、何が原因なのか、それぞれのファームウェアを0から理解する必要があるため
④ファームウェアには、強力なブロックが掛けられており、解析には、そのブロックを超えられる特殊なツールや設備が必要となるため

このように、ファームウェア障害は、最新の技術や設備を導入し、正確な診断と手順を踏まなければ、解析・修復することが出来ません。

もちろん当社では世界中からファームウェア修復の最新技術を導入し、技術開発などの取組みを積極的に行っているため、古い機器から最新機器まで、幅広くファームウェア障害の修復に対応することが可能となっています。

3. プラッタ障害

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プラッタ障害とは、磁気ヘッドの接触や、水害での泥の付着などでプラッタが物理的に損傷・汚損している障害で、HDDの障害でも最重度の症状といわれています。

プラッタ障害の特徴は主に次の通りです。

・プラッタ障害によって生じる円形の傷は「スクラッチ」と呼ばれている。
・プラッタ表面に塗布されている磁性体がスクラッチで剥離すると、その部分のデータは永久に失われる。
・スクラッチの修復には、クリーンルームでHDDを完全分解後、プラッタに特殊な加工を施す必要がある。
・復旧難易度が高く、データ復旧の専門業者でも対応できない所がほとんど

実際にプラッタ障害からの復旧に成功しているのは、アジア圏でも当社程度しかありません。なぜ、プラッタ障害に当社では対応可能かというと、スクラッチ専門の開発部門を設けており、定期的に海外の最先端技術を導入し、技術力を高める取り組みを日夜行っているからです。

ただし、プラッタが汚損・破損したHDDで通電を試すと、プラッタの破損が悪化してしまい、最悪の場合、当社でもデータの取り出しが不可能となってしまう恐れがあります。故障したHDDには絶対に通電してはいけません。

4. モーター障害

「モーター障害」とは、プラッタを高速回転させるスピンドルモーターの障害です。

スピンドルモーターに障害が起きると、プラッタが回転したり止まったりを繰り返し、データを正常に読み込めなくなります。またモーターの軸がぶれると、ヘッドがプラッタに接触して深刻な物理障害につながりかねません。

モーターが回転したり止まったりする場合は速やかに通電を控えましょう。

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5. PCB基板障害

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これは、HDDの裏側に取り付けられているPCB基板が、湿気や経年劣化などで破損する障害です。PCB基板は、HDDの駆動部品を制御する「心臓部」の役割を担っており、ここが破損すると、間違った動作命令を出してしまい、スピンドルモーターなどが異常な動きをする原因となります。

PCB基板障害が発生したHDDからデータ復旧を行うには、オリジナルのHDDと同じメーカー・型番のドナーを用意し、基板移植を行う必要があります。さらに、機器ごとでPCB基板に書き込まれている情報は異なるため、交換以外にも基板上の情報の書き換えなどを行わない限り、データの取り出しが困難です。また、PCB基板の修復方法は、HDDの使用状況によっても異なるため、個人やメーカーで対応することは出来ません。

4. HDDの論理障害

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論理障害とは、機器自体に破損はなく、データやファイルが破損したデータ障害を指します。

1. 誤操作によるフォルダやファイルの削除

HDDの論理障害で最もよく見られるものが誤削除です。これは、データ移行時に、間違えてゴミ箱にデータを移動させてしまうことが最たる原因です。

一度削除されたデータは元の状態では残っておらず、通常ではアクセスできない場所に追いやられてしまいます。また「データの痕跡」は、機器の電気を入れるだけでも、どんどん上書きされ、復旧が困難になってしまいます。

当社では誤削除による論理復旧として、削除データ復元の専門エンジニアが、専用の解析設備でデータ全体を解析し、お客様ごとの機器に合わせた、もっとも効率的かつ適切な手法で、データ復元を行っています。これにより当社では、迅速な対応を高い復旧率で行うことが可能となっています。

2論理n障ん害・物理障害 復旧作業流れ

2. ファイルシステム障害

ファイルシステムとは、データの保存場所やフォルダ名・ファイル名を管理する、本棚や目次のような仕組みです。パソコンはファイルシステムに合わせてデータを読み取り、私達が画面で視認できる形に表示しているのです。

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しかし、強制終了や誤操作などでファイルシステムが壊れてしまうと、データ構造が崩れ、ファイルの名前や保存場所が分からない状態になります。
この場合、パソコンが直接処理するバイナリデータ(=人には理解できないデータ)を解析しなければ、所定のデータを復元することはできません、

5. 故障時の注意点

1. 通電しない

もしHDDがおかしいと思ったら、一切の通電は控えましょう。お客さまの多くは、異常に気付いた後も通電を試みておりますが、障害の種類にかかわらず、通電行為を行うことによって重度障害につながる恐れがあります。

特に「データが読み込めなくなった」「ファイルを削除してしまった」「異音などが聞こえる」場合、通電し続けるとデータ消失や故障の連鎖に繋がります。大切なデータを復元したい場合、個人での対応は極力控えましょう。

また物理障害は、個人での修理・修復がほぼ不可能であり、最悪の場合、データの記録面に引っかき傷が付く「スクラッチ」につながってしまいます。これ以外にも、HDDの故障は複数の原因が絡んでいるケースが多く、本当に必要な修復作業が何であるのか、症状からだけでは単純に判断できません。

やみくもに故障原因を探れば、さらに破損を広げ、本来なら取り戻せたデータが壊れてしまう可能性が高くなります。このように失敗すれば取り返しがつかないため、障害が疑われる場合は、むやみに機器を触らず、すぐに復旧サービス業者までご相談して下さい。

2. フォーマットや上書きを行わない

データは削除されても、その痕跡はHDD内に残っているため、理論上は復元が可能です。しかし削除後、電源を入れるだけでも、データは上書きされてしまい、データを復元できる可能性が低くなってしまいます。重要なファイルを誤って削除してしまったことに気づいた際は、極力通電を控え、フォーマットや上書きも行わないようにしましょう。

なお、ファイルシステム障害が発生したWindowsは「フォーマットされていない新しい機器が接続された」と認識し、フォーマットを要求するエラーを表示してリセットを試みようとします。

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しかし、このエラーメッセージが表示された際、フォーマットを選択してしまうと、中のデータがフォーマットされて読み出せなくなります。

保存データが重要であれば、絶対にフォーマットしてはいけません。

3. データ復元ソフトはリスクが高い

データ復元ソフトは誤削除したファイルのデータを検出し、復元させるソフトウェアです。しかし、復元ソフトの使用は使用者のリテラシーに大きく依存し、実際に復元ソフトを使用したことにより症状を悪化させてしまうことがあります。復元ソフトの使用は十分に注意し、失っては困る大切なデータを復元させる場合は、なるべく復元ソフトの使用を控えましょう。

4. 個人でHDD障害に対応するのは難しい

障害が発生したHDDを個人で修復するのは非常にハードルが高く、障害を悪化させてしまうリスクも伴います。このような場合だとデータが完全に失われてしまうこともありえるため、故障した機器に、重要なデータが保存されている場合、いち早くデータ復旧業者までご相談ください。

6. 故障時の対処法

1. 周辺環境をチェックする

HDDやPCが全く起動しない場合、特に多い原因が「ケーブルが抜けている」「接続の仕方が間違っている」「ケーブルが折り曲がっている」というケースです。この場合は機器本体に深刻なトラブルが生じているわけではなので、まずは落ち着いて電気周りの接続状況を確認しましょう。

あるいは、機器がお使いのパソコンに対応していない場合もあるので、他の機器での接続も試してみましょう。ただし、通電により破損が広がる可能性があるため慎重に対応を行うことが重要です。

2. 専門業者に相談する

「自動修復機能で対応できない」「異音など明らかな異常が発生している」場合、HDDに物理障害が起きていると考えられます。これは「部品交換」や「ファームウェア修復」などが必要で、個人で対応できません。

また、自己流の対応を繰り返すと、HDDが損傷する恐れもあり、最悪の場合、機器・データともに破損する危険性があります。もし重要なデータが保存されていてデータ障害が発生している場合は、デジタルデータリカバリーまでご相談ください。

7.まとめ

いかがだったでしょうか?
当社では、他社が復旧不可とするような障害が発生した機器であっても「1秒でも早く、1つでも多くのデータを最も安全に復旧する」使命のもと、データの復旧を行っております。

その技術力は、個人のお客様から、法人・官公庁・大学・上場企業まで幅広く支持をいただいており、累積相談件数は29万件以上にのぼります。
ご相談・診断は無料になっておりますので、お困りの方は、まずはお電話にてご相談ください。

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