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妖怪の孫 安倍晋三がもたらしたものは、何か

あらすじ

連続在任日数2822日を誇った歴代最長在任総理大臣・故安倍晋三。
総理退任後も、凶弾に倒れるまでキングメーカーと称され、群を抜く影響力を維持していた。
北朝鮮や中国を敵視する強硬なタカ派的な外交政策と所謂“アベノミクス”に代表される経済政策を行い、高い人気を誇った半面、国会質疑応答中での野党議員を揶揄する発言や物議を醸す言動や森友学園関連の公文書改竄や加計学園設立への口利き疑惑や桜を見る会での不透明な会計処理などスキャンダルの絶えない人物であった。
そんな彼が心酔していた母方の祖父・岸信介。
その風貌と社会の表と裏を渡り歩き、政財界を操る実力者としての異名から“昭和の妖怪”と呼ばれ、第56・57代内閣総理大臣を務めた。
幼心に、祖父の教えとして刷り込まれた自主憲法設立の野望を実現しようと、極端なまでに前のめりな政治姿勢であった背景にあった血縁と生い立ちの秘密とは。
そして“美しき国、日本”をスローガンに掲げていた安倍元総理とはいったい何者であったのか、この国に遺したものは何だったのか……。
「パンケーキを毒見する」の内山雄人監督が“日本の真の影”に切り込み、昭和の妖怪と呼ばれた政治家・岸信介の孫であり、連続在任日数2822日を誇るも凶弾に倒れた元総理大臣・安倍晋三。彼の政治を総括し、日本の姿、その根本にあるものを紐解くドキュメンタリー映画。
原案は、古賀茂明の著書「分断と凋落の日本」。

感想など

映画は、2022年9月23日の安倍晋三国葬から始まる。
会場近くの公道では、右翼の街宣車が「安倍首相は、北朝鮮や中国に物申せる唯一の首相だった」と生前の安倍晋三を絶賛する一方で、野党や市民団体の街宣車はアベノミクスや森友学園関連の公文書改竄などを非難して安倍首相国葬を強行することを非難した。
いかにも、かつての民主党の失政を過大に印象操作して民主党がやってきた福祉経済政策を「悪夢の民主党政権」と非難し、国会審議中には野党議員の質問や意見を揶揄したりヤジを飛ばすなど露骨に敵対視し、政権に返り咲く前には安倍派の片山さつき議員に生活保護者バッシングをさせて福祉の援助を受ける人にマイナスイメージを染み込ませ生活保護費など社会保障費削減する一方で、北朝鮮や中国からの脅威に備えるため安全保障体制を堅持するという名目で防衛費は高止まり自主憲法設立に邁進し、法人税を下げ消費税増税し続けるという、国民の中に政治思想的な経済的な分断を作り広げて対立させる状況を権力の堅実に利用してきた安倍晋三そのものの風景だった。
生活保護バッシングに乗じた社会保障費健全化を公約に政権に返り咲いた安倍晋三は、政権批判や疑惑の追及を抑えるために主要なマスコミの社長と会食を繰り返す一方で、安倍政権の追求を続ける望月東京新聞記者には記者会見での質問権を制限したり選挙前にはマスコミに「選挙報道は公平中立に」と通達を出してマスコミは官邸に忖度して候補者の政策などを検証する番組などを作らなくなってしまい、安倍政権の疑惑報道も東京新聞など限られたマスコミだけに抑え込みメディアコントロールを強固にして、若者たちの支持を得る為にTikTokや Twitterなどで「強いリーダーシップ」や「気さくな親しみやすさ」のイメージを繰り返し植え付け、自民党ネットサポーターを使って官邸や安倍政権に対する批判する人たちに誹謗中傷するように誘導するという世論操作して、内閣人事局により国民の奉仕より安倍政権に貢献した官僚が出世する人事体制を強化した。
さらに、防衛計画や原発政策などの厄介な案件は、国会審議をあまりせずに閣議決定で決めるという立法府の骨抜きで、官邸の力を強め安倍一強体制が出来た。
なぜ安倍政権になってからの自民党が選挙に強いのか、自民党に献金している企業の業種と自民党の政策の関係とその弊害、反共で結びついた安倍政権下の自民党議員と統一教会の根深い関係、さらには安倍晋三の中にあるリベラルな父親の安倍晋太郎に対する反発や学歴コンプレックスと尊敬する岸信介が成せなかった自主憲法設立の野望、安倍亡き後も日本会議や統一教会に所属する自民党議員が目指す自主憲法案の恐ろしい中身が、安倍晋三など安倍家を密着取材しているジャーナリスト野上忠興や統一教会を追求するジャーナリスト鈴木エイトや憲法学者の小林節など気鋭のジャーナリストや学者により分析紐解かれ、安倍晋三がもたらしたマスコミの萎縮や国民の分断や格差の拡大や政治の腐敗や官僚や国会議員の倫理観を堕落させ国民の中に棲みつく「自己責任」「不寛容」という妖怪の正体にまで肉迫した硬派な政治ドキュメンタリー映画。
U-NEXTなどで、レンタル配信中。

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