「永遠の単独者(キルケゴール)」小副川幸孝

キルケゴールは、彼の著作活動の最初から、常に二種類の書物を同時に出版するように計画していた。すべては、もちろん自費出版であるが、一方は、彼の実名で「信仰的・道徳的著作」を出し、もう一方で、様々な仮名を用いて「この世的、非信仰的著作」を出すというものである。 彼はこれらをそれぞれ「右手(聖なる手)の著作」と「左手(俗なる手)の著作」と呼んでいる。そして、「右手著作」と呼ばれる「信仰的・道徳的著作」の方は、今と同様、当時も、ほとんど読まれることはなかった。
最初に右手の著作として出されたのが『二つの道徳的講話』で、左手の著作として出されたのが『あれか-これか』なのである。
彼のすべての著作活動は、この実名著作と仮名著作の二重性の中で行われている。右手は徹底して宗教的であり、左手はこの世的である。1847年までの前期の著作活動は、左手のこの世的作品を次第に高尚にしていくことによって、最終的には右手の作品と結合させる目的で書かれている。それは彼の人間理解と密接に関係している。 

わ〜い!😄