ダースレイダー

ラッパー

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#ダースレイダー の音楽話 #48 幻のリンゴと三つのオレンジ

Apple & The Three Oranges “Free & Easy" 全くの無名のファンクバンドの70年代初頭の活動を集めた盤。 エドワード・アップル・ネルソンというドラマーがリーダーで、特に乾いた響きのスネアが聴かせる。 カカン! 今でも踊れるベースラインがグイングイン。 猥雑で雑多な、LAの街頭の雰囲気のような三つのオレンジのコーラスとホーンが行き交う中をギターカッティングがサクサクと進む。 で、それで十分で、流してれば70年代の埃が舞う路からちょっと入ったと

    • #ダースの音楽話 #46 2pac殺害の容疑者の心中を想像しながら再生する。

      2pac 『All Eyez On Me』 2pac殺害の容疑者が逮捕された。 27年も経っている。 僕はこの容疑者が実行犯だったなら、この期間ずっと自分が世界一有名なラッパーを殺したという事実を抱えて生きていたことに注目してしまう。 それはどんな人生なのか? メテオとこの話になり、コンビニ入って曲がかかってたら?とか前から2pacのTシャツを着た人が歩いてきたら?といちいち状況を想像した。 このアルバムが出た時にBMRでレビューを読んだ。確か佐々木士郎さん(RHYMEST

      • #ダースの音楽話 #45 畜生、やってらんないぜ!から始まる歌。

        Tom Waits 『Closing Time』(1973) エンジニアの奥田さんが見舞いで持ってきてくれたMP3プレイヤーにはこのアルバムが入っていた。 トム・ウェイツは怪物化が完成した九◯年代が特に狂ってて好きだ(彼の狂気と怪物ぶりが分かりやすくビジュアライズされてるのはコッポラ監督の『ドラキュラ』で本当に好きな映画)。 その怪物のなかに美しい詩人と適当な酔っ払いがいる事はこのデビュー盤でも確認出来る。 のちにスクリーミング・ジェイ・ホーキンズ(怪物!)が "Icecr

        • #ダースの音楽話 #44 脳が幻視を見せるなら、僕はリオ・デ・ジャネイロ

          Cartola/Cartola (1976) 今日は雨が少し降った。 そして止んだ。 自転車のサドルにはまだ雨粒があるが、構わずに乗る。 玄関から自転車で漕ぎ出す。 空は曇っているが、しかし。 AirPodsからは違った風景が脳に伝達されている。 1976年の、晴れた空の、喧騒の街の、開いた窓の。 そこはブラジルで。リオ・デ・ジャネイロで。 不敵な笑みを浮かべたサングラスの男が外を眺めている。 ギターはリズムを刻みながらも光の粒のような音を撒き散らしていき、ホーンはふんわり

        #ダースレイダー の音楽話 #48 幻のリンゴと三つのオレンジ

          #ダースの音楽話 #43 探し物が見つからない時に力を貸してくれるアルバム。

          U2『The Joshua Tree』(1987) 人生でもっとも聴いたU2アルバムは"Actung Baby"なのだが、どうにもそのエッジ(ってギタリストの名前でもあるんだけど)が効きすぎてるサウンドを入院中は敬遠したくなった。 それでもボノには励ましてもらいたい。 手を伸ばして、その炎に触れたい。 だって、いまだに探し物が見つからないんだから。 なにかの実感が欲しい。 僕はやらなきゃいけなかった。 君がいようがいまいが。 それでも、やっぱり居てほしい。 出口はきっとある

          #ダースの音楽話 #43 探し物が見つからない時に力を貸してくれるアルバム。

          #ダースの音楽話 #42 このアルバムさえ聴けば、ベッドを抜け出して夜を泳げるんだ。

          R.E.M. 『Automatic for The People』(1992) 聴くだけで泣いてしまうようなアルバムがある。 もう何度目か分からない。 もう分かっているはずなのに、それでも何故か感極まってしまうのだ。 1曲目の"Drive"でティックトックと聴こえてくるだけで胸が熱くなる。 その後のベイビーと声を落として歌うところでトドメだ。息をしないように身を固め、その後大きく吐き出して、誰だって、そう、誰だって傷つくんだ。 だから諦めないで。 おい、信じられるかい? あ

          #ダースの音楽話 #42 このアルバムさえ聴けば、ベッドを抜け出して夜を泳げるんだ。

          #ダースの音楽話 #41 〜ランバ・ラルのように人生を教えてくれるおじさんの歌

          Robert Plant 『Fate of Nations』(1993) ツェッペリンをリアル・タイムでは体験出来なかった僕は、MTVで流れたロバート・プラントの"29 Palms"のビデオに先に出会っている。 渋い! なんだ、このかっこいいおじさんは! 乾いたギターの上でじんわりと広がっていく声。 僕はランバ・ラルが大好きなのだが、あの「人生を教えてくれるおじさん」感。 後々、歴史的背景込みで振り返ればオルタナに寄った、時代感溢れる作りだがそれが僕にはぴったりだった。

          #ダースの音楽話 #41 〜ランバ・ラルのように人生を教えてくれるおじさんの歌

          #ダースの音楽話 #40 少しづつ良くなる自分はペッパー軍曹と64歳を目指す

          The Beatles 『Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band』(1967) 見舞いに来てくれる友達からのちょっとした助け。真っ直ぐ立っていられない僕を、歩けない僕を支えてくれた。 そして、自分で自分に歌うのだ。 It's getting better everyday~ってね。 リハビリをこなしながら後ろで彼らのコーラスが聴こえてくる。 Better better better~。 少しづつ、自分の身体に、心に空いた穴を修理していく。

          #ダースの音楽話 #40 少しづつ良くなる自分はペッパー軍曹と64歳を目指す

          #ダースレイダー の音楽話 #39 怪物の中にいる詩人と酔っ払い

          Tom Waits 『Closing Time』(1973) エンジニアの奥田さんが見舞いで持ってきてくれたMP3プレイヤーにはこのアルバムが入っていた。 トム・ウェイツは怪物化が完成した九◯年代が特に狂ってて好きだ。(彼の狂気と怪物ぶりが分かりやすくビジュアライズされてるのはコッポラ監督の『ドラキュラ』で本当に好きな映画)その怪物のなかに美しい詩人と適当な酔っ払いがいる事はこのデビュー盤でも確認出来る。 のちにスクリーミング・ジェイ・ホーキンズ(怪物!)が "Icecre

          #ダースレイダー の音楽話 #39 怪物の中にいる詩人と酔っ払い

          #ダースの音楽話 #38 奇妙な人々とすごした奇妙な日々、それが病人

          The Doors 『Strange Days』(1967) 僕の入院初期を象徴するかのようなアルバムだ。 病院に搬送され、意識が戻り目を覚ましてから数日はとにかく奇妙だったのだ。 奇妙な人がやってきては奇妙なことを言う。 奇妙な器具を身体につけられ、奇妙な機械の中に身体ごと突っ込まれるのだ。 ぐるりと回った世界の中でぐにゃりと歪んだ日常が始まり、僕は耐え切れずに吐き続けていた。 でも夜になると・・・・・夜が訪れて僕を月夜のドライブに連れて行ってくれる。 一回じゃない、俺を

          #ダースの音楽話 #38 奇妙な人々とすごした奇妙な日々、それが病人

          #ダースレイダーの音楽話 #37 カーティス、危険で甘美なシカゴのソウル

          Curtis Mayfield 『The Best of Curtis Mayfield-Wild And Free』(1994) 苦しそうにすら聴こえる。 彼が絞り出してくるソウルは粘っこく、脳裏にこびりついて離れてくれない。 大丈夫、もし地獄があるならば、俺たちはみんな行くことになるから。 そう聴いて安心出来るというのか? そういや、フレディーも死んだらしいぜ。 これは売人からの確かな情報だ。 カーティスの音楽はこんなシカゴの風景から立ち上がってくる。 僕の「地元」

          #ダースレイダーの音楽話 #37 カーティス、危険で甘美なシカゴのソウル

          #ダースレイダーの音楽話 #36 ニール・ヤングの至極の10年間

          Neil Young 『Decade』(1977) 77年までのニール・ヤングのベスト盤はとにかくいい曲しか入っていない。 どこをどう切っても素晴らしく、僕の学生時代をずっと支えてくれていた。 入院した僕は折れた矢のようなものだ。 病床で改めて聴いた"Ohio"の力強く、それでいて繊細、というこの人にしか成しえないバランスの表現が、力が弱って、意識が散漫になっている僕の節々まで力を送り込んでくれる。 脳梗塞で三半規管をやられて吐き続けた、激しい船酔いのような三週間はハリケー

          #ダースレイダーの音楽話 #36 ニール・ヤングの至極の10年間

          #ダースレイダーの音楽話 #35 キャロル・キングは足元が揺らいだ時も寄り添ってくれた

          Carole King 『Tapestry』(1971) ロックのディスクガイドでは必ず紹介される定番だが、まさに足元が揺らいで世界がぐるりと回転する体験をした僕のサントラみたいな存在になってしまった。 耳というより胸に直接響いてくる歌声を支えるリズム。 必要な音だけ鳴っている感覚。 脳梗塞で倒れた僕はその前までに居た場所から遥か遠くへ連れていかれた。 もう既に遅すぎるのか? 手遅れなのか? いや、絶対にまた家に帰るんだ。 だって君には友達がいるじゃないか? それでも不

          #ダースレイダーの音楽話 #35 キャロル・キングは足元が揺らいだ時も寄り添ってくれた

          #ダースレイダーの音楽話 #34 何もないことが多すぎてディランの地下室に降りていく

          Bob Dylan and The Band 『The Basement Tapes』(1975) 二枚組で曲がたくさん入ってるからお得なんじゃないか?と浅はかな中学生は思ったのだろう。 だがやはり中学生にはロックとして聴くのにはどうもハードルが高かったのだ。 バイク事故の後、ウッドストックに籠って曲作りをしていたディランとザ・バンドのバイブレーションが僕と一致したのは入院中、つまりなにもないことが多すぎる時期だった。 僕は病室で暇過ぎてディラン達が籠る地下室に降りて行った

          #ダースレイダーの音楽話 #34 何もないことが多すぎてディランの地下室に降りていく

          #ダースレイダーの音楽話 #33 ストーンズでリハビリ頑張ったよ!

          The Rolling Stones 『Tattoo You』(1981) 僕にとってのリハビリ・アルバム。 入院して三週間経つと眩暈と吐き気が去っていった。 寝たきりで極限までそぎ落とされた筋肉を取り戻すために病棟の廊下をひたすら歩くのが日課になる。最初は歩くことさえ覚束ない。 僕はiPodで"Start Me Up"をかけ、イントロのギターと共に一歩を踏み出すのである。 Yep! Start me up! もう俺は止まらないぜ! そのまま曲が終わるまで歩き続ける。 入

          #ダースレイダーの音楽話 #33 ストーンズでリハビリ頑張ったよ!

          #ダースレイダーの音楽話 #32 また変わらぬ一日でも僕らはポールのベースの上に立つ

          Paul McCartney 『All The Best!』(1987) 実を言うと一番好きな曲は"Maybe I'm Amazed"でこの曲は聴くだけでいつでも涙が出てくる。 このベストにはそれは入ってないのだが、その代わりに"Another Day"が入っている。 何気ない日常を歌っているだけだがポールの凄まじいセンスで心がぐっと掴まれる。 たまに凄く寂しくなる、それでも……"Once Upon a Long Ago"への流れも完璧で歌いだしからサビに行く気持ちよさに夢

          #ダースレイダーの音楽話 #32 また変わらぬ一日でも僕らはポールのベースの上に立つ