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『ブギウギ』あっという間の半年間。良かった点と、モヤモヤな点

連続テレビ小説『ブギウギ』が大団円を迎えた。
戦時中~『東京ブギウギ』発表までの時期が長く感じられて辛かったが、戦後からどんどん華やかさを取り戻していくステージが楽しみで、何だかんだで全話完走。
個人的にはかなり満足した。素晴らしかった。

しかし、細かく思い返してみると、このドラマは「意識が配られている部分と、無神経な部分の差が大きい」という特徴があったような気がする。
それぞれの要素を書き出してみる。

良かった点

・伏線回収の妙

長い物語ならではの「あの時のアレがここに繋がるのか!」という驚きもあったり、伏線回収が上手いなぁと思うことが多かった。

終盤の、スズ子を脅かす新人歌手・水城アユミの母が、歌劇団の憧れの先輩・大和礼子だったという設定も、ややこしい諸問題をクリアする妙案だと思った。

また、最終回の一話前に、人形が歌い踊るオープニング映像を回収するようなセリフがあったのも感動。
一部で「人形が怖い」「不気味」とされていたが、あの映像は「作曲家にとっての最高の人形」として楽しく歌い踊るスズ子を表現していたのだ。
そしてテーマ曲『ハッピー☆ブギ』の歌詞にも、「ブギはララバイ(子守唄)」など、物語の様々な局面にピッタリくる言葉が散りばめられていたので、細やかに世界が作り込まれているなぁ、と感心した。

・週ごとのクライマックスがわかりやすい

途中から定番化した、「問題発生→解決→金曜日の放送でステージ披露」という流れ。
時にパワープレイ感もあったが、それでもワクワクしたし、暗雲が立ち込めても「きっと今週中には乗り越えてくれるだろう」と安心して視聴できた。

何より、悲しみや不安を歌で乗り越え、パフォーマンスに昇華するスズ子を、自然と応援していた。

・一貫して「義理と人情」

仕事でも私生活でも、養母の教えである「義理と人情」を貫いていたのがよかった。
スズ子が、自身の育った家庭と同じように、「血のつながりに関わらない賑やかな家庭」を再現していく様子にはジーンとさせられた。
繰り返し描かれた、終戦直後に貧困にあえぐ一般庶民と、スター歌手・スズ子の対比。その異なった立場を繋いだのも、コテコテの義理と人情だったのだと思う。

・色の使い方

ステージのセットでは、赤やオレンジといった色が印象的に使われていた。
スズ子のステージ衣装も、若い頃はフレッシュな赤色系、円熟期には黒や金と、それぞれの立ち場に見合った色彩が用いられていた。
スター歌手となって以降のスズ子の私服や自宅のインテリアも、カラフルで可愛かったので毎回注目していた。

モヤモヤした点

・マネージャーの描き方

ネットニュースでも盛んに目にしたことだが、マネージャーの小夜やタケシというキャラクターに、あまり可愛げがないように感じられた。しかも「そのことが後々効いてくるのかな?」と辛抱していても、特にスッキリすることがなかったのは残念だった。
好々爺だった山下マネージャー、下宿のおばさん夫妻や家政婦の大野さんなど、人格者や愛すべきキャラがたくさん出ていたし、憎めないキャラが描けない脚本家ではないはずなのに、なぜ若いマネージャー2人だけ、あんないいところのないキャラになってしまったのだろう。
お金を持ち逃げした楽団マネージャー・五木ですら、多少はいい奴であることが示唆されていたのに。
小夜役の冨田さんはすでに実績ある俳優だから良いとして、タケシ役の人なんて初めて見る視聴者も多いだろうから、変に生意気なイメージが付いてしまったら気の毒だ。

・配慮に欠ける台詞

スズ子が妊娠中、大きなお腹で舞台出演した時の「腹ボテ」連呼。女性視聴者が多そうな朝ドラでは、ぎょっとさせられる単語だった。
一応、登場人物のセリフでも「そんな下品な・・・・」というようなツッコミがあったが、完全なフォローにはなっていないように感じた。
「腹ボテ」という言葉が後から効いてくるわけでもなかったし、なぜこの言葉が出てきたのかがわからなかった。

・現代の感覚に寄りすぎ?

スズ子が産後、文字通りの「ワンオペ」で育児に奮闘する様子。悩みのリアルさに共感できたが、現代の感覚に寄り過ぎて、物語のスケールが小さく感じた。
昭和の芸能界を舞台とした作品に期待する「ダイナミックさ」みたいなものが薄れていたかもしれない。
(その点を補うのが、田舎に子どもを預けてまですべてを歌に賭けるりつ子だったのかも?と脳内補完した。)

その他細かい点だと、ゴンベエさんがどこからか調達してきた桃の謎が明かされなかったこととか、松永がスズ子の告白を断る際に語った「アメリカに居る想い人」は実在だったのか?とか、戦後のアメリカ公演の際に松永や小夜への言及ってあったっけ?など、未解決のモヤモヤは多々ある。

と、色々文句をつけてしまったが、終わってみれば大満足。
腹八分のちょうどよさと、「もっともっと見たかった」という若干の物足りなさとがある。(スピンオフに期待)

それでもやっぱり、ショーの場面の華やかさと説得力で、「終わり良ければ全てよし」な気分になってしまう。
カラッとした、良い朝ドラだった。

前夜には「明日のブギウギはどんな展開になるかな〜、どんなパフォーマンスになるのかな〜」とワクワクさせてもらい、朝には放送時刻に合わせて家事を済ませるなど、私にとっては生活にガッツリ食い込むほどの楽しみだった。
来週から何を楽しみに朝を迎えれば良いのだろう・・・・。これが世に聞く「ロス」だろうか。だとすれば『ブギウギ』は、私が初めて「ロス」を感じた朝ドラかもしれない。

こんなにハマらせてくれてありがとう。楽しかったです!

↑東京駅のNHKショップ前のポスター。見かけて思わず写真を撮りました。


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