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求められることに食い尽くされていく。映画『ヘルタースケルター』考察

求められることに食い尽くされていく。映画『ヘルタースケルター』考察

今回は蜷川実花監督の映画『ヘルタースケルター』の話。
あまり評価の高くない作品らしいが、私はこういう悪趣味的な世界観が好きなので、サブスクで繰り返し観ている。

原作を読んでいないので、以下は全て映画版の話と思って読んでいただきたい。
ネタバレありの感想です。

この物語は二層構造になっていると思う。

表面にある第一のテーマは、「求められたいという心理」である。

この映画の画面はとにかく赤い。

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『火口のふたり』を映画・小説両方から考察――富士山は火山である。

『火口のふたり』を映画・小説両方から考察――富士山は火山である。

(うっすらネタバレがあります。ご了承ください)

去年か一昨年、Amazonプライムで『火口のふたり』を観た。性描写が話題になった作品である。

率直に言うと、ちょっと気持ち悪くなるほど生々しい映画だった。
いわゆるポルノ作品のような「魅せる」ための性描写でなく、隣家の情事を覗き見てしまったような、気まずいほどの生々しさだ。

物語としては、帰郷した男・賢治(柄本佑)が、結婚式を控えた直子(瀧内公

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「過ぎ去った日々への限りない愛情」がさくらももこの真髄である

「過ぎ去った日々への限りない愛情」がさくらももこの真髄である

映画『ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』を観た。

花輪君の知人であるイタリアの少年が、なぜかまる子の家にホームステイすることになり、まる子や3年4組の仲間たちと友情を築きながら、かつて日本で暮らしていた祖父の足跡を探す・・・・という、いわば『探偵ナイトスクープ』の感動回のようなストーリー。

劇中歌がZONEの『secret base』に激似だったり、ゲスト声優が馴染んでいないように感じた

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大長編ドラえもん『夢幻三剣士』は夢オチ映画なのか

大長編ドラえもん『夢幻三剣士』は夢オチ映画なのか

ラストシーンが不気味すぎると噂の『ドラえもん のび太と夢幻三剣士』について、夢世界の観察を趣味とする私が考察してみる。
ネタバレあり。

ストーリーの混乱
『のび太と夢幻三剣士』は、夢の世界を舞台とした長編作品。

「気ままに夢見る機」というひみつ道具を使い、見たい夢を自由に楽しむのび太。ドラえもんに頼み込んで買ってもらった、高額な“夢のカセット”が、タイトルにある『夢幻三剣士』である。
夢の世界

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【ミッドナイトスワン感想】手垢のついていない映画、でした

【ミッドナイトスワン感想】手垢のついていない映画、でした

2020年に書いた、映画『ミッドナイトスワン』(監督・内田英治)の感想です。

○あらすじ
新宿のニューハーフショークラブで働くトランスジェンダーの凪沙(草彅剛)。
凪沙の故郷・広島で、酒乱の母に虐待されながら暮らす少女・一果(服部樹咲)。
遠い親戚である一果を、凪沙は一時的に預かることになる。
無表情で無感情、学校では問題行動を起こす一果を疎んじる凪沙。
そんなある日、一果は、偶然通りがかったバ

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怪作『愉楽への手ほどき』を真面目に考察する

怪作『愉楽への手ほどき』を真面目に考察する

Amazonプライムで観た映画が無茶すぎたので、思わず記事を書いてしまいました。

その名も『愉楽への手ほどき』(監督:ジャン=クロード・ブリソー)。2018年のフランス映画です。

センシュアルなタイトルやビジュアルに期待が膨らみますが、結論から言えば、熟女が小娘にスケベを手解きする話ではないです。
おフランス製のおしゃれ官能映画を期待した私は、見事肩透かしを食らいました。

いうなれば、「(エ

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