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デッサン力を高める!毎日続ける練習法とコツ

 どうも。鉛筆画家の中山眞治です。日増しに強くなる陽光を受けて、新緑が輝く季節になりました。元気でお過ごしですか?^^

 さて、鉛筆デッサンや鉛筆画の技術を磨きたい人へ。この記事では、初心者から経験者まで、毎日のデッサンの練習でどのようにして技術を向上させるかを解説します。
 
 基本的な鉛筆の持ち方から、観察力を高めるためのアプローチ、効果的な練習メニューまで、あなたのアートスキルを次のレベルへ引き上げる情報が満載です。是非、日々の練習に役立ててください。 

1 デッサンの練習を始める前に知っておきたい基礎知識


(1) デッサンとは?基本的な定義から始めよう 


 デッサンとは、立体(3D)のモチーフの形や構造を正確に捉え、平面(2D)のスケッチブックや紙上に表現する技術です。

 美術の基本とされ、あらゆる絵画や彫刻の土台となるため、その技術を習得することは非常に重要です。 

 デッサンの練習は、単に描く技術を向上させるだけでなく、観察力や表現力を養うための手段でもあります。

 尚、スケッチとは、主に実物のモチーフを観察して、ざっくりと輪郭を捉えた描写を指し、デッサンはその状態をもっと細密描写で深化させ、陰影なども施し、構成や構図も導入して背景全体も整えることを指します。

 そして、鉛筆画とは、デッサンの工程をさらに推し進めて、実物のモチーフや写真・ネットからのダウンロード・スクリーンショットなども交えて、画面全体を魅力的な構成や構図によって仕上げた作品を指します。

 勿論、単純に鉛筆で描いた作品を鉛筆画ということもあります。しかし、そのような場合の、「何となく描いた絵」や「モチーフだけ上手に描いた絵」では、各種展覧会や公募展では入選できません。

(2) 必要な道具を揃えよう

 
 鉛筆デッサンを始める前に、必要な道具を整えることは大切です。最低限必要なのは、鉛筆(2H・H・HB・B・2B・3B・4Bの7本で足ります)、練り消しゴム、そしてスケッチブックや紙です。

 初心者の人は、さまざまな硬さの鉛筆を試して、自分に合ったものを見つけることが推奨されます。ただし、最初は同じメーカーの製品で揃えましょう。メーカーによって、描き味や色の濃さに違いがあるからです。

 質の良い材料を使うことによって、作品の質も向上しますので、鉛筆や紙に関する詳細な情報は、次の関連記事を参照してください。

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(3) 基本的な描画技法を学ぼう 


 デッサンの基本技法には、線の描き方、陰影のつけ方、比例の取り方が含まれます。これらの技法を学ぶことで、モチーフをよりリアルに、そして正確に描くことができるようになれます。 

 特に、光と影のバランスを理解することは、作品に深みを与える上で非常に重要です。デッサンの練習を始める前にこれらの基礎知識を身につけることで、効率的なスキルアップが可能になります。 

 また、日常的に練習を続けることが上達への最短距離ですので、ぜひ毎日少しでも描く時間を設けて、継続的に技術を磨いていきましょう。 

2 デッサンの基本:鉛筆の適切な持ち方とストローク



  デッサンで重要なのは、適切な鉛筆の持ち方を身につけることです。これが基本中の基本であり、正確な線を描くための出発点となります。 

(1) 鉛筆の持ち方の基本


 鉛筆の持ち方は、一般的な書き物の場合とは異なります。デッサンで、制作当初のモチーフ全体の輪郭を描く際には、鉛筆を人指し指・中指・親指でつまむようにやさしく軽く持ち、腕や肩を使って描くイメージです。

 大きな輪郭線を描くには、そのような方法によって、画面上の位置やバランスを取ることだけに集中して全体を捉えましょう。そうすることで、やがて、「この線だ」と思える線に出会えます。

 その要領で輪郭全体を描き込みます。全体を描き終えましたら、不要な線は「練り消しゴム」で整理しましょう。

 そして、全体のバランスを整えたい場合には、当初のデッサンに使用した鉛筆よりも2段階明るい鉛筆を使うべきです。その理由は、濃い鉛筆でしっかり輪郭線を描いてしまうと、不自然な絵になってしまうからです。

 そして、その際の鉛筆の握り方は、「文字を書くときの握り方」へ変更して描きます。 詳細は、前掲の鉛筆に関する関連記事を参照してください。

 持ち方一つで、線の質感が大きく変わるため、さまざまな持ち方を試して自分に合ったスタイルを見つけましょう。 

(2) 効果的なストローク(※)の技法 


 ストロークは、線の引き方によって絵の表現が大きく変わります。基本的なストローク技法としては、「線の連続性」と「速さ」がキーポイントです。 

 一連の動作としてスムーズに線を引くことで、自然な流れやリズムが生まれ、作品に生命を吹き込むことができます。

 また、線を引く速さを変えることで、線の強さや軽さを表現し、視覚的なインパクトを与えることもできます。 

 鉛筆の持ち方とストロークの基本をマスターすることで、デッサンの技術全体が向上します。これらの基本を日々の練習に取り入れて、さらに洗練された技術を身につけていきましょう。

 鉛筆から始まるデッサンの世界は、細部にまでこだわることで無限に広がる芸術の領域です。

※ ストロークとは、日本語では「筆触」とも訳しますが、画面に対して、大きく腕を振るって鉛筆や筆を動かすような運動感のある行為を指します。

3 観察力を鍛える:効果的なデッサン練習法 


 デッサンの上達には、モチーフを正確に観察する力が不可欠です。本章では、観察力を鍛え、デッサン技術を向上させるための効果的な練習法を紹介します。 

(1) モチーフを細部まで捉える 


 観察力を鍛えるためには、モチーフの細部にも注目し、それをスケッチブックや紙上に正確に描写することが重要です。

 たとえば、花一輪を描く場合でも、単に形を捉えるだけでなく、花びらの重なり具合及び質感や色の濃淡、光の当たり方と影の付き方まで詳細に観察します。 

 この深い観察によって、よりリアリスティック(写実的)で表現力豊かなデッサンが可能になります。 

(2) 変化を観察する練習 


 動的な対象物を選び、その変化を描くことも観察力の向上に効果的です。例えば、風で揺れる木の葉を観察し、その動きを捉えてみましょう。 

 また、異なる時間帯に同じ風景を描くことで、光の変化や影の動きを理解するのに役立ちます。これらの練習は、瞬間的な観察と瞬時の判断力を養うのに最適です。
 

(3) 定期的なスケッチブックのレビュー (批評)


 完成したデッサンは、後で見返して自己評価することも大切です。一つ一つの作品に対して、何が上手く描けているか、どの部分が不自然かを評価し、次の練習に生かします。 

 この継続的なフィードバックプロセスを通じて、徐々に観察力とデッサン技術が磨かれていきます。

 これらの方法を実践することで、観察から描写までのプロセスがスムーズになり、より高度なデッサンスキルが身につくでしょう。 

 観察力はデッサンのみならず、あらゆるアート作品において重要な要素です。日々の練習を通じて、このスキルを確実に向上させることが重要です。 

4 毎日のデッサンルーティンの作り方と継続のコツ 


第1回個展出品作品 野菜 1996 F10 鉛筆画 中山眞治


 デッサンの習熟には、毎日の練習が欠かせません。効果的なデッサンルーティンを作り、それを継続するためのコツをご紹介します。

(1) デッサンルーティンのモチベーションを保つ方法


 この方法は極めて簡単です。あなたの住まいの自治体(市区町)で毎年行われている「展覧会」での入選をまず具体的な目標にしましょう。 

 この場合には、出品規定を取り寄せて、最小の大きさを確認しましょう。おそらくF10くらいであれば出品できると思いますが、自治体によって異なるからです。

 最初は出品規定の一番小さい作品からの出発であっても、やがて出品規定の一番大きなサイズへと進化していくことができます。

 尚、蛇足ながら、入選以上の入賞を狙うとなれば、この出品規定の「一番大きなサイズ」で、充分に構想を練り、構図も導入して、貴方の制作する画面を使い切った、魅力的な作品に仕上げられれば夢ではなくなります。

 尚、その際には、出品規定最大の出品数であることが必要です(2~3作品と思われます)。

 このように、あなたの住まいの自治体が開催している市や区の展覧会への出品を目標に据えることは、あなたの具体的な目標となる一方で、あなたの上達への道のりの重要なモチベーションの維持につながります。

(2) ルーティンの設定と習慣化


 まずは、日々の生活で楽しめる、デッサンの時間を設定することが重要です。具体的には、毎日同じ時間帯に練習を行うことで、デッサンが一日のルーティンの一部となります。 

 忙しい日でも、少なくとも10分間はデッサンをするように心がけると、習慣化しやすくなります。
 

(3) 短時間で集中する練習法 


 毎日続けるためには、練習時間を長く取る必要はありません。短時間でも、特定の技術や対象に集中して練習することは効果的です。

 たとえば、日替わりで異なる対象物を描くことで、観察力や表現力が向上し、飽きずに続けられます。 

 あるいは、平日は毎晩少ない時間で描き進めながら、休日にはたっぷりと時間を費やして続きを制作していくような描き方でも良いのです。

 因みに、筆者は最初のF10作品を描くのに、合計で60時間もかかりましたが、それが慣れていくにしたがって、同じF10を描くのに最短で12時間で仕上げたこともあります。

 あなたも慣れていくに従って、どんどん制作時間を短縮できるはずです。そして上達のコツは、静物(花を含む)・風景・動物・人物を順番に取り組んでいくようにすると、何でも描けるよになって行けます。

 その際のモチーフは、実際に見て描くことの他にも、図書館から借りてきた写真集・撮りためた画像・ネットからのダウンロード・スクリーンショットなどの合成でも良いのです。

(4) フィードバックの活用 


 自身の作品に対して定期的にフィードバックを行い、どのように改善できるかを考えることも大切です。

 これには、他人に作品を見てもらうことも含まれます。客観的な評価は、自分では気づかない点を改善する手助けとなります。 

(5) 目標設定と達成の喜び 


 デッサンの練習において目標を設定し、小さな目標を達成するごとに自己成就感を感じることが継続のモチベーションにもつながります。 

 例えば、一ヶ月で特定のテクニックをマスターする、あるいは特定の作品を完成させるなど、達成可能な目標を設定しましょう。 

 これらのコツを活用して毎日のデッサンルーティンを確立することで、技術的な進歩はもちろん、デッサンを楽しむ心も育てることができます。日々の小さな積み重ねが、大きな成果へと繋がるのです。 

 ただし、忙しいさなかに「無理やり作った時間」や「気がかりなことがありながら制作を手掛けているような時間」では集中できません。

 そこで、デッサンに入る前には、充分に落ち着ける状態の中で、デッサンに取り組めるようにしましょう。短時間ではあっても、本当に集中できる時間での成果は大きいものです。

5 インスピレーションを刺激する!創造性を育むデッサンのアイデア 


第1回個展出品作品 静物Ⅱ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 デッサンは単なる技術の練習以上のものです。創造性を刺激し、新たなアイデアを生み出すための素晴らしい手段でもあります。

 ここでは、デッサンを通じて創造性を育むためのユニークなアイデアを提案します。 

(1) 自然からインスピレーションを得る 


 自然は創造性の源です。公園や庭、または自宅の窓から見える景色をデッサンの対象にしましょう。 

 季節の変わり目の風景や、異なる天候下での光と影の変化に注目することで、新しい視点や表現が生まれます。自然の無限の形や色は、デッサンスキルだけでなく、創造的な思考をも豊かにしてくれます。 

(2) 抽象的なテーマで挑戦 


 具体的な物を描くだけでなく、感情や音楽、詩からインスピレーション(ひらめき)を得た抽象的なデッサンにも挑戦してみてください。 

 たとえば、喜びや悲しみを明暗や形で表現することで、内面的な感覚を可視化し、深い創造的表現が可能になります。これらの試みは、デッサンに新たな次元をもたらします。 

 あるいは、人の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を刺激する作品というのも刺激的なテーマになります。

 具体的には、作品を見ていながらにして、音までもが聞こえそうな作品、感触さえ感じられそうな作品、味覚さえ刺激されるおいしそうな食材の作品、かぐわしい香りさえ漂って来そうな生花の作品などです。

 参考例は下の作品を参照してください。この作品は、水滴がしたたり落ちた瞬間の作品ですが、「ピチョン」と音さえ聞こえて来そうでしょ。このような五感を刺激する作品は、あまりないので検討の価値があります。

 つまり、あなたが「描く以上は各種展覧会や公募展にも出品したい」と考えるならば、このような「ひとひねり」が必要であり、「構図の導入」や「充分に構想を練る」ことも極めて重要です。

 「構図の導入」や「充分に構想を練る」部分に興味のある人は、この記事の最終部に掲載してありますので参照してください。

水滴Ⅸ 2020 F4 鉛筆画 中山眞治


(3) 異文化のアートスタイルを取り入れる 


 世界各国のアートスタイルを学び、それを自身のデッサンに取り入れてみるのも一つの方法です。 

 例えば、日本の浮世絵やアフリカの部族アート、インドの伝統的な模様など、異文化の美学を研究することで、視野が広がり、新しいアイデアが生まれることもあります。

 これは、創造性を刺激するだけではなく、文化的理解も深める良い機会にもなります。 

(4) テクノロジーを活用したデッサン 


 最新のテクノロジーをデッサンに取り入れることで、創造的な可能性を広げることもできます。 

 デジタルタブレットを使用してみる、またはVR空間でのデッサンなど、新しいツールを使うことで、伝統的なデッサンの枠を超えた表現も可能になります。

 これにより、未来のアート形式に触れながら、独自のスタイルを開発することができます。 

 これらのアイデアを通じて、デッサンをただの技術練習ではなく、創造性を刺激し、表現の幅を広げるためのツールとして活用してください。毎日の練習が、より豊かなアーティスティック(写実的)な旅へと繋がります。 

6 まとめ 


第1回個展出品作品 人物Ⅳ 1997 F10 鉛筆画 中山眞治

 鉛筆デッサンや鉛筆画は、アートスキルを向上させるための基本的な練習にもなり、創造性を刺激する手段でもあります。

 ここでは、鉛筆デッサンを日々の習慣に取り入れ、技術を向上させるための効果的な方法をまとめました。 

  • デッサンの基本: 適切な鉛筆の持ち方とストロークをマスターすることで、線の質感を向上させることができます。

  • 観察力の向上: 対象物の細部に注目し、それをデッサンで表現することで、観察力を鍛えることが可能です。変化を捉える練習をすることも重要です。

  • 毎日の練習ルーティン: 習慣として鉛筆デッサンを取り入れ、短時間でも毎日続けることが上達の鍵です。目標を設定し、達成の喜びを感じることが継続のモチベーションにつながります。

  • 創造性を育むアイデア: 自然の観察、抽象的なテーマへの挑戦、異文化のアートスタイルの探求などを通じて、インスピレーションを得ることができます。また、テクノロジーを活用した新しい表現方法も試みると良いでしょう。 

  • これらの点を意識することで、デッサンをただの技術練習ではなく、創造的な表現の場として楽しむことができます。日々の練習が、個々のアートへの理解を深め、より豊かな表現に繋がることでしょう。 

  • デッサンのスキル向上は、継続的な努力と時間を要しますが、その過程自体がアーティストとしての成長には不可欠です。

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