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文学フリマ京都を終えて

 今回の文学フリマ京都の会場の最寄り駅(たしか東山駅だったと思います)の階段を上り、ホームの外へ出た途端「アッ」と思いました。目に入った景色に並々ならぬ既視感を覚えたからです。その驚きの源は、いつか見た夢というような覚束ない記憶でないようで、目の前の景色を自ずと前日までいた金沢の風景と重ね合わせていたことに、直ぐ合点がいきました。私が学生生活を送っている金沢は、「小京都」と別称(蔑称?)されることがあります。金沢市民にとっては腹立たしい名称なので、使うことは控えた方が良いなどとネットでは噂されていますが、地元出身の友人から聞くところによると、「さしたる不快感は覚えないが、いい気もしない。」とのことらしいです(笑)
 先日、ニューヨークタイムズが2024年に行くべき52か所を発表し、3番目に山口市が選定されたことで話題を呼びました(「びっくりしています!」ニューヨーク・タイムズ「行くべき52カ所」に山口市選出 市長も「大変ありがたく感謝」|FNNプライムオンライン)。山口市域は室町時代から栄え、当時の都・京都に対して「西の京都」を自称したことでも知られていますが、これも京都という場所の格式の高さに由来していることは言うまでもありません。随分と回りくどい説明をしてしまいましたが、京都は歴史的に日本人の憧れの的となった場所であり、そのような場所で開催された文学フリマに参加させていただけたことを、まずもって光栄に思う次第です。

 雑誌の広報を担当する私(二ツ池)にとっては、今回が初めての文フリへの参加でした。「出品されていた方々の作はどれも素敵なものばかりで、改めて自分たちの力不足を痛感しました。」というような、おあつらえ向きな文章を書いて満足する趣味は、残念ながら私は持ち合わせておりませんので予め断わっておきます。表紙のスタイルや出展ブースのデコレーションなど、まだまだ考えるべき点も多々あることは事実ですが、編集長の尽力もあり、さほど周り比較しても遜色のないものに仕上がり、決して自分たちの雑誌ばかりが際立って悪いとは特に感じませんでした。
 加えて、今回の文フリを通じて強く感じたことは、世の中には色々な趣味をもった人間がいるという、ごく当たり前のことです。漫画やアニメのブースではコスプレ風の男女が空間を彩り、反対のブースではしおらしき淑女たちが詩を集めた雑誌を販売している。こうしたメインカルチャーとサブカルチャーの混在を私は非常に新鮮に感じ、また興味深くも感じました。普段は価値判断を迫る様な文章ばかりを書いている自分ですが、文フリの雑駁な会場には良いも悪いもなく、私も今回はそれなりに楽しませていただいたように思います。雑誌の仲間によると、東京の文フリは更に規模感が大きいということのようで、また次に参加するのが楽しみです。

 文フリを終えて夜行バスで金沢へ戻ると、やはり冷たい雨が降っていました。この時期の金沢はめったに晴れません。誇張なしで、殆ど晴れ間が見えないのです。実際に帰って来たその日に週間天気予報を調ましたが、晴れマークは一つしかなく、このnoteを書いている今現在に至っては一つもありません。前日入りした際は京都も時々パラパラと雨が降ったりもしましたが、文フリ当日はよく晴れていて、京都に住まう人々や東京近郊に住む雑誌の仲間たちとも共有することのできない陽光の有難みを一人で感じながら、会場へと向かいました。
 勝手に京都住みだと勘違いしていた大阪住みの知人がわざわざ会場まで足を運んでくれたことなども手伝い、雑誌は今までで最高の十三冊を売り上げることができました。「別に人に読まれなくたって……」、そういった強がりな一面も持ち合わせた集団ではありますが、皆きっと、少しは嬉しかったはずです。営業のようなことは嫌いですが、これからも広報担当として、多くの人の手元に雑誌を届けられるよう努力していく所存です。

 全てのブースを見終え、暇つぶしに会場の傍を行く当てもなく一人で散歩していると、京都熊野神社前の交差点で警備員に足止めされました。全国女子駅伝「皇后杯」の交通規制のためです。そこで私は、自分と同い年くらいの女子たちが目の前を颯爽と駆け抜けていく様子を見ました。走者への甲高いエールを聞きながら、私は何だか雲一つなく真上に広がった青空がもったいないような気がして、自分もつい駆けだしたくなるような、そんな衝動に襲われました。
 まとまりのない文章になってしまいましたが、書き伸ばしてもよい投稿になる気がしないので、窓越しに憂鬱な空を眺めつつ、今回はこの辺で。末文となってしまいましたが、会場で購入していただいた皆様、本当にありがとうございました。心から感謝申し上げます。感想、ご意見(勿論、批判も可です)等々、心からお待ちいたしております。


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