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中国駐在員さん、気がつけば問題社員のことばかり考えていませんか

このnoteは、毎週水曜に配信しているYouTube動画のテキストバージョンです。記事の末尾に動画リンクがあります。

社員の問題行動に頭を悩ませる総経理・駐在員さんの相談を受けていると「悪いヤツじゃないんだけれど」「いいところもあるんだけれど」という対象者、非常に多いです。また、いざ辞めさせるとなると、いろいろハードルやリスクもある。

どんな理由で、どう切り出すかも気が重い。私も中国に渡ってからの1年あまりはこの問題に悩み続けました。今回は、同じ悩みを持つ総経理・駐在員・日本側統括さんたちの背中を押します。


問題社員の4つのタイプ

ひと言で問題社員といっても、大まかに4つのタイプがあります。会社全体にとって問題な場合と、その部署にとって問題な場合。それから本人の適性に問題がある場合と、言動に問題がある場合です。これらを掛け合わせると4タイプ。

本人の適性に問題があるというのは、例えば管理職に向いていないケースです。社員として優秀で、周りからも慕われる人なんだけれど、管理者としての役割を果たせない。そのために組織が混乱したり、若手社員のモチベーション低下や不満を招いたり、組織の円滑な運営が滞ったりしてしまう。

このような場合、会社に置き所がないと判断したら退職を促すことも考えられるものの、その部署やポジションに適さないだけなら、他の職務に転換することで調整が可能かもしれません。

一方、言動に問題がある人物も存在します。これは、会社にも部署にも置いておくべきではない人物。適性に問題がある人は悪意なくマイナスをもたらしているにすぎませんが、言動に問題がある人は会社に積極的に害をなすタイプです。

今回は後者、問題ある社員の無力化に焦点を当てて話を進めたいと思います。

問題社員の扱い

対応策は大きく二つに分けることができます。

明確な解雇材料がある場合、それを元に解雇することが最も確実。解雇を見合わせる理由はまずありません。

しかし、皆さんが直面するほとんどのケースでは、解雇するための明確な材料がありませんよね。どう対応したらいいか迷うことも多いと思います。

このまま置いておきたくはないが解雇材料がないという場合、3つのアプローチが考えられます。

解雇材料がない場合:材料待ち

1つ目は、明確な解雇の材料が揃うまで待つことです。確実な証拠を集めてから解雇するため、解雇が招くリスクは低くなります。

ただし、問題社員をそのまま組織に留めおくことになり、組織への悪影響は続きます。さらに、決定的な証拠が得られないまま時間が経過していくと、マイナスの影響がどんどん蓄積されていくことにも注意が必要です。

解雇材料がない場合:解雇断行

2つ目は、解雇を断行することです。材料が揃う前に解雇に踏み切るわけですから、メリットとデメリットは先ほどと真逆になります。

まずは解雇リスク。本人は不当解雇を訴えて労働仲裁を申し立てるでしょう。仲裁の過程で会社にとって不利な展開になることも予想されます。

とはいえ、法廷での争いは最終的な決着がつくまで1年以上かかるのが常。本人にとってみれば、会社の負けが確定するまで職場復帰も賠償金獲得もできませんから、最後まで戦い抜くのは大変です。

会社としては、問題社員が不在の間に組織を強化する措置を講じ、影響力を低下させることができます。

解雇材料がない場合:影響排除

3つ目は上の2つの中間案。そのまま置いておくことにも解雇することにもリスクがあるのなら、会社として何らかの対応をし、本人のマイナス影響の低減や排除を試みます。役職からの解任、降格、配置転換などですね。

解雇しないわけですから、解雇リスクは抑えられます。かつ、こうした措置をとることによって組織への影響も低減できる。これがバランス的にいいんじゃないかと感じますが、現実はそううまくはいきません。

私が見てきた実態は、解雇リスクがゼロになっても、経営側と問題社員たちのグループの対立はむしろ激化する、というケースが多いです。

問題社員は無力化できるか

なぜそうなるのか、もう少し細かくみていきましょう。

会社としては、本人が反省することを期待して、降格処分にしたり異動させたりします。が、その結果、問題社員は自分の利益と面子を潰された、不当な扱いを受けたと感じて腹を立てます。

残念ながら、ここで素直に反省する人を私は見たことがありません。ここで改心するなら、もっと前の段階から反省しています。こうした措置をとった会社・経営者への恨みを深めるだけです。

また、解雇してしまえば社員ではなくなるので、会社に勝手に入ってこようとしたら警察に通報できますし、弁護士などに対応を一任することもできます。しかし、社員の身分を保持している人が会社で騒いでも、排除は難しいです。

社員に会社に来るなと言うわけにもいかない、騒ぎを起こされても警察を呼ぶわけにもいかない(暴力行為でもない限り、警察も対応してくれません)。

そして怖いことに、会社の中にいると、本人も会社の弱いところを調べあげたり、罠を仕込んだり、証拠を捏造したりできるわけです。恨みを持った社員たちが経営者を排除しようという動きに出ることもありますから、まさに獅子身中の虫を飼い続けることになります。

それから、会社がこの状態で解雇材料が揃うのを待っているのと同様に、問題社員の方が「待ち」に入るケースも多いです。駐在員の交代があり、2〜3年で帰任するとなると、彼らは待てます。待つことで得られる利益の方が大きいからです。

結局、何とかして影響力を削ごうとすると、多くの場合、かえって問題が深刻化します。

今日のひと言

問題社員を社内に置いたままで無力化することはできません

降格や異動などで影響力を削いだから何もできないだろうと思っても、反撃を甘く見ない方がいいです。想定外に大きな爆弾を埋め込まれたというケースはいくつもあります。

設備の破壊、故意の不良、事故(ボヤや破裂に至ることを仕込む)など、当局が調査に来て責任者が罰せられる状況を主導するようなことさえありました。

ここまでやれば、その証拠をつかめたらむしろ一掃できていいという考え方もあるかもしれませんが、代償は高くつきます。特に客先の不信感や損害、真面目な社員たちの会社への信頼低下は、代償とするには高すぎます。

社内に残れば、彼らは待てます。駐在員が代替わりしたら好きなようにやらせてもらおうと、手ぐすねを引いて待っています。これでは後任の人たちもなかなかしんどいです。

ということで、問題社員を何らかの方法で無力化できないか、という問いへの答えは、解雇が難しいなら、無力化はもっと難しい です。

無力化のための努力をするぐらいだったら、リスクを負っても解雇してしまった方がトータルで会社の利益になるというのが、私の結論です。

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