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ウォロフ語の表記法について

ウォロフ語はもともと文字を持たない音声言語であった。フランス植民地支配から独立した1960年代に、ユネスコ主導の識字教育プロジェクトがアフリカで広く始まり、セネガルでも現地で話されている言語を「国語」として位置づけ、教育に用いる言語としていく方針を徐々に打ち出した(なお、政令で定めた程度で、教育のための言語として部分的に取り入れられている程度であるのが現状である)。
これら「国語」の表記法は、1971年から徐々に改定を繰り返している。ウォロフ語の表記法は、2004年により実用的なものに見直された。

ただし、(別稿にも書いているように)この表記法はセネガルで一般に普及していない。SNSなどで見られるウォロフ語表記は基本的にフランス語の表記法を用いて書かれたものであり、統一感が全くない。

しかし、統一された表記法を使わなくては単語を調べたり文法を学ぶことはできない。以下に記す、セネガルで制定された表記法は、あくまでウォロフ語を学習するためのツールであることに注意されたい。


アルファベット

使用されるアルファベットは以下の通りである。
a, b, c, d, e, f, g, i, j, k, l m, n, ñ, o, p, q, r, s, t, u, w, x, y, z

なお、hとvはこの表記法では用いられない。ハ行の音はウォロフ語に存在するが、hではなく、xが用いられる。また、vはウォロフ語の音として存在せず、借用語(外来語)の場合はwの音にしばしば変化する。

母音

ウォロフ語には9つの短母音(a, à, e, é, ë, i, o, ó, u)と、7つの長母音(aa, ee, ée, ii, oo,óo,uu)がある。
このうち、 短母音ではa とà の区別、e とé の区別、o とó の区別は口の開口度の違いがある。e は日本語の エに近いが、é は少し狭めた発音である。さらに、ë はエとウの中間のような音である。

長母音は、発音の特徴から短母音と分けられている。日本語カタカナ表記の伸ばし棒「ー」のような音であることもしばしばあるが、語によるため、すべてが伸びた音になるわけではない。
例:dara:「何も〜ない」(ダラ)
  daara:「村」または「クルアーン学校」(ダーラ)

子音

子音は、単子音(例: p)と重子音(例: pp)、前鼻音子音(例: mb)に分けられる。単子音は語末では破裂を解放しない (唇を閉じる)が、重子音は破裂が見られる。

また、ウォロフ語表記法では、英語やフランス語などでは用いられない表記法が存在する。以下に例を示す。

  • c:チャ、チ、チュ、チェ、チョの音を表現

  • ñ:ニャ、ニュ、ニョなどの音として表現される。

  • x:ハ、ヒ、フ、ヘ、ホの音として表現される。


(文責:池邉智基)

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