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いじめの兆候 ペットボトル冤罪2

1年以上前からあった兆候を見過ごしていた。
やってもいないことで、顧問から長時間責められた娘は明らかに様子がおかしくなっていた。
疲れて休むと布団に入ったものの、夜中に何度もトイレに起きてきた。
心配して声をかけると腹痛だという。

私は娘の様子を心配しつつ、朝方まで仕事をしながら頭の中で状況を整理していた。

最近、私の母が急死した。
数時間かかる道のりを何度も往復した。娘をひとり自宅に置いていくわけにはいかないので、度々同行し葬儀や手続きをし、やっと四十九日を迎えたところだった。
そんな最中、娘が言いにくそうに言った。
「部活の同級生に『またサボるの?』『今日もサボり?』などと揶揄われる。おばあちゃんが亡くなったのだから仕方ないと言っても笑っていてやめてくれないんだよね」

その子は1年以上前の入部当時から娘のことを「手足が短い」だの「バカ、頭悪い」などと揶揄っていたことを知っていた。開催されてもいないイベントがあるとガセネタを流し友人を騙すこともあった。「親が公務員だから」と事あるごとに周囲に話し、それが彼女の常套句だった。マウントをとっているつもりなのだろうか。
他の同学年の部員も部活の時間変更や場所変更などを娘にだけ伝えなかったり、顧問の目の前でバカと呼んだり、罵声を浴びせることもあったし、彼女らは「遠征がダルい」という理由でエントリーしないので娘が3年生に混じって大会に出ることになったりした。
娘が愚痴るたびに私は「言ってもわからない人もいるから上手にスルーするか、我慢できないなら忙しいからとか理由をつけて穏便に退部してもいいよ」と伝えていた。

「バカ」などというのは小学生レベルの幼稚な悪口だからそんなレベルの悪口を言う子に真正面からキレても仕方ないのだとスルーしてきた娘だったが、祖母の死をサボり扱いされたことは流石に辛かったと思う。

幼稚な悪口がエスカレートして死を冒涜して笑うようになった頃、その子から
「Y、もうすぐ顧問の先生に呼ばれて怒られるよ」とニヤニヤしながら言われた。

その日の夜から嫌な予感がしていた。
しかし私の仕事と四十九日で週末からまた部活を休まなければならない。「またサボりと言われるけど仕方ないよね。そういう人だから」と娘は困ったような悲しいような表情をしていた。

そして四十九日を終え登校したその日の放課後、顧問から2時間ガン詰めさせることになったのだ。
こんなことになるならどうにかして防げなかったのか、バカと言われた時点で退部すべきだった。
でもまさか顧問がそんなことをするなんて想定外すぎる。

その時はそう思っていたが、このあと娘が明かしてくれた部活の内情に私は信じられないという感想しかなかった。

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