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「今さら知りたい男女7人」第33回 工藤波子はなぜ登場したのか?(秋7~10話)

「今さら知りたい男女7人」第33回は秋物語で麻生祐未さんが演じた工藤波子を取り上げます。

33-1 秋7話 貞九郎と波子がはじめて会うシーン

工藤波子は秋7話「清州橋」でひかるの新しい同僚として登場、偶然貞九郎と知り合ってから急速に接近し、8話、9話と貞九郎の彼女ポジションであったにも関わらず、10話で親がすすめる見合い話の方にすると貞九郎に告げたところでフェードアウトし、最終回では出演がないというなんとも不思議なキャラクターです(※最終回で貞九郎とよりを戻したというセリフは入りますが)。

秋物語をはじめて見たとき私は(扱いが)変なキャラクターだなと思っていましたし、なんで登場してきたのか? と不思議に感じていました。

しかし、秋物語の話の構造や各キャラクターの配置を考えるとなるほど波子は出るべくして出てきたキャラクターではないか? と思うようになりました。今回はそんな記事となります。

ちなみに、波子の立ち位置やキャラクターについて、脚本の鎌田さんをはじめスタッフがどういう役割を考えていたか? というコメントは見たことはありませんので、この記事も私の妄想というか私はこう考えました的な内容ですので、その点あしからずご了承ください

ーー
さて、秋物語は良介と桃子の再登場が決まった時点で、誰が考えてもこうなるであろう物語の骨組みが出来上がります。それは・・・

1 良介と桃子は物語冒頭で再会するが、一緒になれない事情がある
2 物語のエンディングでは2人は元の鞘に収まる

です。
秋物語が夏物語を受けた続編であり、良介と桃子が主人公であり、恋愛ドラマである以上、これはもう誰がどう考えてもこうならざるをえないと思います。
しかし、これにより

3 良介と桃子がすぐに元通りになれないのは、お互いに、あるいは片方に別のパートナーがいる状態である(桃子に健がいるので元に戻れない)
4 しかしエンディングでは元の鞘に収まるので、物語冒頭のカップリングは破局せざるをえない

となります。
つまり、美樹と健の失恋は当初から決定的とならざるをえません。

ちなに、夏物語では7人が出会うというところからスタートし、途中良介・千明のカップリングがありながらも、千明は失恋し、良介・桃子のカップリングが成立するわけですが、みなさんもご存じのように千明と貞九郎が物語の最後でカップルとなることで全員がハッピーエンドを迎えています。恋愛ドラマの王道の終わり方をしたというわけです。

■夏物語のエンディング
〇良介  - 桃子
〇野上  - 香里
〇貞九郎 - 千明
〇美和子 お見合い成功

テレビドラマ、小説、マンガを含め、恋愛ものは一般的に視聴者はハッピーエンドを好み、バッドエンディングが好まれないのはよく知られていると思います。

したがって美樹が失恋のどん底のまま物語を終える ということは制作的にやりにくいわけで、夏物語と同様ならば健とカップリングするという可能性が出てくるわけです。
ということで、夏物語のようなエンディングを考えるのであれば

■秋物語のアナザーエンディング
〇良介  - 桃子
〇高木  - ひかる
〇貞九郎 - 一枝
〇健   - 美樹

しかし、こうはならなかった
これはおそらく「あぶれた者同士がカップリングする」という夏物語と同じ構図を制作サイドが嫌ったのではないか? と思います。

では、どうすれば失恋状態の美樹のエンディングにある種のハッピーエンド感前向き感を持たせることができるのでしょうか?

そのポジションに配置されたのが一枝だったのではないでしょうか?

33-2 秋11話より 秋物語終盤は何かと一緒にいる美樹と一枝

美樹を救うのが男でなければ女友達というわけです。
つまり、一緒にがんばっていこうと肩を抱き合えるキャラが必要だった・・・ そのためには美樹と同様な辛い状況に陥る女性キャラがいる必要があった・・・ そうです、美樹のために一枝というキャラが生まれたと考えられます。

なるほど一枝は男性にモテる一方、男を振り回すだけ振り回したり、自分の友達が想う人にちょっかい出したりと冒頭から視聴者の支持を得られにくいキャラとして登場し、物語後半では自分の立ち振る舞いが遠因で仕事場からも放りだされ、カップリングも成立しないなど散々な目にあいます。
一枝がこういったキャラになったのは、失意の美樹と釣り合うだけのどん底の女性キャラが必要だった。これにより物語の最後、美樹と一枝が互いを励ましあうように「またいい男を探そう」、「一緒にがんばろう」で終わらせることができるようになるわけです。

33-3 秋11話「美樹・・・また、男探そ」「うん」 こちらが美樹と一枝のラストシーン

さて、これで美樹と一枝はエンディングを迎えられるわけですが、秋物語に出てくる女性陣の内2人もシングル状態で物語を終えることになることで、ひとつ問題が残ります。そうです、貞九郎の相手がいなくなってしまいます。もし、貞九郎がカップリングできないまま終わった場合、秋物語では

■秋物語アナザーエンディングその2
〇良介 ー 桃子
〇高木 - ひかる
〇美樹
〇一枝
〇貞九郎
〇健

とこのように2組のカップル、4人のシングルとなってしまい、これはこれで恋愛ドラマとしてはどうなの? と制作側は思ったのではないでしょうか?

もしこのように考えたとするならば、貞九郎のカップリングの相手としてもう1人女性を出す必要がある・・・そして、それが工藤波子とであった・・・ このように考えると波子というキャラクターの登場はある種なくてはならないというものになります。

つまり、波子というキャラクターは夏物語を受けた続編の秋物語に良介と桃子の登場が決まった時点で、出るべくして出てきたキャラクターであったのではないか? と思います。

33-4 秋10話 波子のラストシーン

以上、波子はなぜ登場したか? という考察(?)でした。まあ、制作サイドの狙いはぜんぜん別かもしれませんが・・汗

こちらの連載は週一回 金曜の夜か、土曜の朝に更新しています。よかったらまた見に来てください。では、では。


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