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天国からの就職祝い

「あんたが一番頼りになるんや、元気でな」

亡き祖父が生前最期に私にかけてくれた言葉だ。その言葉の2時間後には倒れてしまい帰らぬ人となった。

その頃のおじいちゃんは、認知症の影響もあって孫である私を実の息子と勘違いすることもよくあった。でも、最期の言葉の時は、昔の力強いおじいちゃんの瞳だった。

当時、私は15歳、中学3年生だった。本当になにもできない、か弱い中学生だった。それから13年が経過し、紆余曲折ありながら私は高校教員となった。そして、この度、新たな勤務地となる学校が決まった。まだまだ未熟すぎるが、自分なりに歩んでこれたのかなと思う。

祖父が旅立って13年。命日も近いので、家族でお仏壇に拝んだ。生前おじいちゃんがよく唱えていたというお経を代表で私が唱えた。お経を唱えてくれたからと、祖母が心付けを渡してくれた。
新しい勤務先に挨拶に伺った帰り、私はいただいたお金で人生初の一人焼肉をした。ささやかなお祝い。天国のおじいちゃんからの就職祝いだと思って大事に食べた。一人とは思えない感覚があった。一人焼肉といいつつおじいちゃんも隣にいてくれていたような、そんな気がするのだ。

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