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25. 「こっそり」助けるべき時代

言わない…
いや、言えない…
言ったら危ない???

久しぶりに自分の元惑星へ帰った3年前だったかなぁ…

季節が変わる9月中旬頃だったと思う。
あの日も今日の様に
青空で絵の様な雲が
悠々…

帰ると
いつも母さんに
孝子(?)になるのは
長男としての負担も
あったかもだ。

歳のせいで
母さんが定期的に通っている病院まで
車で連れる事にして
先に病院前に母さんを下ろし、

ちょっと離れた公営駐車場に車を止めて
軽い気分で母さんの病院に向かっていた。
病院が見えて入ろうとした時、

目の前に
倒れて泣いている少女の姿が見えた。
多分、小学校3年生ぐらいに見える女の子は
路上の凸凹ブロックに転んじゃったみたい。

土だらけの膝は皮がむけられて
赤い血が流れていた。
痛そう!
ランドセルは隣に投げられて
テキストが脱出していた。

通る人は多くはなかったけど、
誰も助けようともしなく
少女は悲しく泣いていた。

SOS!

こういう場合は
大人としてすぐ助けるのが
常識であるが…
一瞬、頭の中で浮かびだしたのは
もし誤解されて……と

はぁ…

一瞬の悩みはあったけど、
胸が頭に勝ち、
すぐあの子を助けた。

「大丈夫?」
少女はやっと泣き止んで
ほっとした。

病院に行くほどの傷ではなかった。

ちょうど病院前だったので
隣に薬局があった。

薬師の方がちょうど女性だった。
少女を助けるのは事実だけど、
厳密にいうと僕は、
親も、家族でもない知らないおっさんだったので
少女の膝に傷を直接治療するのは…
と思って
消毒用の過酸化水素と外傷に効く塗り薬、
バンドを買って
女性の薬師に事情を説明し
治療を頼んだ。

病院でもないただの薬局の薬師が治療までする義務も責任もないし、
逆に頼むのがイレギュラー的なもの。

彼女としては仕事外的な事だったので
断ってもしょうがない事なのに、
当たり前の様に応じて
少女の膝の傷を優しく治療してくれた。

少女は少しずつ落ち着いた。
携帯電話もなかったみたいんで、
悪いけど、薬師の方に少女の親に連絡を頼んで
そして、僕はそのまま
消えた。

大した金額ではなかったけど、
自分と関係ないことで
少女の代わりに薬代も払って
時間もかかったけど

これ以上関わったら
予想もしなかった
展開(悪い方でーー;)になるかも
しれないし

もっともっと
何か対価をもらうため
やったことじゃなかったので
悩む事もなかった。

病院で治療が終わって待っている
母さんの事もあったので
さっさと病院に向かった。

自分があの子より幼い頃経験した
交通事故で
偶然周りを歩いて
大怪我した僕を助けて
病院まで連れていた
名前も知らぬ、
女性の方の事を思い出した。

彼女も何か対価をもらうためではなく
人間としての
善意そのものだった。
多分、彼女はこう言ったっかも…
君も大人になったら
誰かを助ける人になれば
それでいい…

善意は別の善意を生む。

だから、あの子も今日の思い出を
心に持って
大人になって
また誰かに対価ない善意を
与えれば
それでいい。

ただ、
決して悪いことをしたわけでもないのに
堂々と助けられない
時代になったかと思って
苦笑いするしかない
今の世の中

<終>

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