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草津町冤罪事件公判傍聴記・2023年5月26日(被告人:飯塚玲児こと飯嶋辰昭)

2023年5月26日

前橋地裁1刑合議

1号法廷

事件番号:令和4年(わ)第335号

罪名:名誉毀損

被告人:飯塚玲児こと飯嶋辰昭

裁判長:橋本健

書記官:河野亜美



<事件概要・法廷の風景>

この事件は、元草津町議の新井祥子被告人が、黒岩草津町長に強姦されたと虚偽の記者会見や抗議を行い、強制わいせつの刑事告訴まで行った、名誉毀損、虚偽告訴事件である。飯塚玲児こと飯嶋辰昭被告人は、新井被告人の言い分に沿った電子書籍を執筆、販売し、共に記者会見を開き、黒岩町議への名誉毀損を担ったとされる。

問題が二人の犯行に留まらなかったのは、所謂「リベラル」「フェミニスト」とよばれる人々が、新井祥子被告人を悲劇のヒロインのように扱い、その言い分を一方的に全国、いや、全世界に発信したことである。そして、事件は黒岩町長一人の名誉毀損ではなく、草津町民、草津町全体が名誉棄損されたに等しい状態となった。

例えば、上野千鶴子は、黒岩町長を加害者、新井被告人を被害者として断罪し、新井被告人へのリコール運動自体を批判した。また、全国フェミニスト議員連盟は、リコール運動について、「性被害を告発したこと自体を否定する」人権侵害であると、抗議文を送った。問題は、新井被告人の主張が虚偽であるか否かの筈であるが。

性犯罪についての刑事法検討会委員という要職に在り、先日の性犯罪関連の刑法改正を主導した山本潤は、SNSで「レイプの町草津」というタグを広め、新井被告人へのリコールに反対した。草津町のフラワーデモにも立った。

ライターの北原みのりは、AERAにて、「町長にたとえ加害の事実がなかったとしても、この議会そのものが十分に性暴力でミソジニーだった」と訳の分からない批判を行った。

フラワーデモは、「セカンドレイプの町草津」と書かれたカードを持ち、新井被告人と共に草津町の街頭に立った。

虚偽告発が「勇気ある告発」として讃えられ、正当な反論が「セカンドレイプ」として批判されるという、倒錯した状況にあった。

このような騒動の中、新井祥子被告人と飯嶋辰昭被告人は在宅起訴されたのであった。

この結末はどうなるか、擁護者たちはどのように幕引きを図るつもりか、注目された。


弁護人は、白髪で、痩せてよぼよぼした印象の老人が一人だけであった。グレーの背広を着ており、青いマスクをつけている。机上に書類を広げており、開廷前、書記官に書類を渡していた。

飯嶋辰昭被告人は、在宅起訴ゆえ、身柄を拘束されていらず、刑務官もついていなかった。白髪交じりの髪を丸坊主にした、ものすごく太った、がっしりした体格の中年男性である。浅黒い肌である。顔の殆どは白いマスクで隠れている。白い長袖のワイシャツ、黄色っぽいネクタイ、グレーの長ズボンという格好。机の上に置いた書類を見ている。

書記官は、髪を後ろで束ねた、3~40代の女性である。

検察官は、髪を後ろで束ねた中年女性と、髪を短く刈った眼鏡をかけた中年男性。青いファイルを机の上に積んでいる。

弁護人「検事さん、弁8~13は同意していると」

女性検察官「今日の段階では・・・」

というやり取りがあった。

傍聴人は8人ほど来ており、記者らしい人は3人ほどいた。草津町民が傍聴に殺到するかもしれないと考えていたので、人数の少なさに、かなり拍子抜けした。また、結末を見守りたい、としていた北原みのりも、法廷にはいないようだった。

裁判長は、眼鏡をかけた白髪の初老の男性。裁判官は、青年と、髪の長い3~40代の女性である。

13時30分より、飯塚玲児被告人の第三回公判は開廷した。今回は、被告人質問が行われる。被告人は、かすれた小さな声で、長々と質問に答えた。きわめて聞き取りにくく、メモを取りにくかった。


裁判長『開廷します。今日は被告人質問。主質問まで』

弁護人『はい』

裁判長『真ん中へ』

被告人は証言台の椅子に座る。座る時、裁判長へ向けて、少し頭を下げていた。

裁判長『貴方への質問』

被告人『はい』

裁判長『弁護人の質問のみ』

被告人『はい』

裁判長『マイクに近づけて』

被告人『はい』

裁判長『動かしていい』

被告人『はい』

裁判長『質問、よく聞いて』

被告人『はい』

裁判長『それから、質問をよく聞いて、質問が終わってから答えて』

被告人『はい』

裁判長『いいですね』

被告人『はい』


<弁護人の被告人質問>

弁護人『貴方の検察官調書によると、経歴職業については、大卒後、株式会社読売出版社で編集者勤務を経た後、フリーライターになって現在に至る』

被告人『はい、間違いありません』

裁判長『できるだけ大きい声で、語尾をはっきり答えてください』

被告人『はい』

このように注意されたが、その後もあまり声は大きくならなかった。

弁護人『草津とのかかわりは』

被告人『えー、ま、温泉ライターとして草津温泉に足を運ぶ中で、えー、時間湯の存在を知り、さらに入浴の指導するI湯長と、平成26年ごろに出会いました。このIさんの・・・』

裁判長『いつか、だけ。聞かれたことだけに端的に答えて』

被告人『はい』

弁護人『I湯長に会ってどういう事になりますか』

被告人『えー、I湯長の、えー、実質的に片足が切断したという大事故からですね、現在の二足歩行が可能になるまで治ったという、まあ、奇跡的なことに感動しまして、Iさんの半生記を書きたいと思いまして、取材を続けていました』

弁護人『取材のため草津に通う』

被告人『基本的にはそうなんですが、平成28年からは、草津にアパートを借りまして、えー、時間湯と湯治を行いながら、取材を継続していました』

弁護人『時間湯とは』

被告人『はい、えー、時間湯は、あー、約130年間続く、草津独自の入湯です。高温の源泉を冷まし、三分に限って入浴するというもので、そのために湯長の存在が欠かせません』

弁護人『湯長とは、どういう存在になりますか』

被告人『えーと、今申し上げた通り、時間湯の入湯にとっては、なくてはならない存在です』

弁護人『役割は』

被告人『えー、時間湯では、入浴前の、(聞き取れず)それに、温度管理、また、掛け湯の指導、更に入湯、三分間たって出湯、お湯から出るというところまで、全て湯長さんの号令に従って、全員が一斉に行います。其の湯長さんの・・・』

被告人はさらに続けようとしているようだったが

裁判長『それでけっこうです』

と話が脱線しないように打ち切った。

弁護人『湯長が見守ると効果は』

被告人『えー、ま、湯長さんが見守りすることで、共同浴場であるとか、宿泊施設で度々起こっていた入浴事故というのが、時間湯に限っては過去十年、一回もありません』

弁護人『本件電子書籍の出版時、時間湯について問題存在していたか』

被告人『えー、平成元年6月の時点で、黒岩町長が、伝統ある時間湯の湯長制度を廃止すると、議会に諮りました。意見があれば、という話ではあったんですが、湯長廃止は町長の専権行為であるとしまして、実質的に一方的なものでした』

弁護人『周囲の反応は』

被告人『えーと、温泉業界の宿舎の方々、さらに、教授の方々から、様々な反論が、存続のお願いの声ありましたが、黒岩町長はそれを一切無視しました』

弁護人『いつ湯長制度を廃止』

被告人『最初に議会に諮った時は、令和2年3月末をもって廃止するということでした』

弁護人『9か月間あるが、翌年3月末まで、議論は尽くされたか』

被告人『えー、議論は尽くされておりませんでした。えー』

裁判長『尽くされていないと』

被告人『はい』

弁護人『湯長制度、いつ廃止された』

被告人『6月議会で、今年の3月末といった、議会からわずか2か月ほど、令和3年1月末日をもって、湯長制度の廃止を断行しました』

弁護人『電子書籍「草津温泉漆黒の闇」について、刊行の経緯を』

被告人『はい、えーと、まず電子書籍での刊行に先立ちまして、私自身が配信しておりますメールマガジンの中で、時間湯問題について、議会の運営の在り方など、問題点を発表しておりました。其中で、出版プロデューサーのHさんから、電子書籍で出しませんかという話がありまして、時間湯問題が世の中に広まればという思いで、Hさんと共に電子書籍を発行して行くことになりました』

弁護人『草津温泉漆黒の闇五巻に、当時草津町議だった新井祥子さんの告白を載せる。信頼できるとした根拠は』

被告人『えー、根拠は、四つあります。えー、一つは、令和元年9月9日に新井さんのインタビューを私が行ったのですが、そのインタビュー時に告白の出方が非常に自然であったことが一つ。また、もう一つが、告白内容が非常に迫真的でありまして、嘘だと思えなかったことが一つ。もう一つが、新井さんの告白が私の調べた事実の裏付けもあるということ。そして最後の一つですが、どのように考えても、いくら考えても、新井さんが嘘の告白をするメリットが何もないことです』

弁護人『新井さんとの面識は』

被告人『えー、私は新井さんについては、元時間湯の湯治客であると情報をある程度はもっておりましたが、一度もあったことはなく、一番最初に話をしたのは、インタビューが最初です。そして、令和元年9月9日のインタビュー時が二回目に話をしたということになります』

弁護人『どういう経緯で告白が』

被告人『えーとまず、私が手に入れていた文章ですが、新井さんが書いた文章で、調書という感じで、二人っきりになった時に私の思いが伝わった時は本当に嬉しかったですと言うようなことが書いてある文書を、新井さんに見せまして、ここに書いてあることは真実として認めるということでいいですかと訊くと、暫く黙っていましたが、やがて静かに頷きました』

弁護人『貴方が指摘した新井さんが作成した文書、取り調べ済みの弁1ですね』

被告人『はい、はい、そうです』

弁護人『いつ書いた』

被告人『はい、えーと、新井さんが頷いてくれた時に、これはいつ書いたものですか聞きましたところ、先月と、令和元年8月に書いたと云いました』


弁護人『その後、やりとりは』

被告人『えー、とですね、えーと、その弁1を、まあ、見せながら、ですね、えーと、二人きりになった時に私の思いが通じたと書いてあるんですが、これは町長と肉体関係を持ったと推察されるがこれでよろしかったでしょうか、と訊ねますと、暫く言いよどんでいるような様子ではありましたけども、えー、まあ、吹っ切れたというか、そんな感じで顔を上げまして、涙を浮かべて、頷きました』

弁護人『様子は』

被告人『えー、その様な形で認めて以降は、取り乱すことは全くなく、淡々と私の質問に答えてくれました。えー、嘘を考えながら答えていた様子は一切ありません。(聞き取れず)答えに窮することもなく、(聞き取れず)首尾一貫していて、信用に足るものだと感じました』

弁護人『9月9日の取材のみで書くか』

被告人『えーと、インタビュー次第と、後ですね、新井さんに様々な質問をしました。それらの質問に、答え渋るわけでもなく、首尾一貫しておりまして、信ずるに足る内容だと、記事の材料に、根拠にしております』

弁護人『新井さんから文章のレポート受け取る』

被告人『はい』

弁護人『いつ』

被告人『えっと、インタビューの後にですね、インタビューで聞いた話を、より詳しく書いたもの、提供お願いしたところ、令和元年7月17日に、新井さんから、レターパックで文書のレポートが送られてきました』

弁護人『17日に受け取った』

被告人『其日は、私が蜂窩織炎で入院をしておりまして、文書のレターパックを受け取ったのは翌日の18日ということになります』

弁護人『レポートは』

被告人『えーと、町長との肉体関係に関するものは、三通ありました。まず一つは、全文新井さんの直筆で書かれて、署名、さらに印鑑も押印してある。黒岩町長と、平成27年1月8日に、肉体関係持ったことを認めているという内容』

弁護人『弁2』

被告人『はい、そうです』

弁護人『その一通』

被告人『はい』

弁護人『その他はどういうものがありますか』

被告人『二つ目は、えー、事件当日の事を非常に詳細につづった経緯の説明書です。えー、で、もう一つは・・・』

弁護人『ちょっと待って、それ、弁3』

被告人『そうですね、はい』

弁護人『5枚にわたる』

被告人『はい』

弁護人『最後に、新井祥子とサイン』

被告人『はい、そうです』

裁判長『質問終わってから答えて』

被告人『はい』

裁判長『言葉被らないようにして』

被告人『はい』

弁護人『もう一通は』

被告人『はい、えー、もう一通は、黒岩信忠町長は、で始まる文章でありまして、それについては、まあ、町長の性格などが書かれておりまして、更に署名などがありました』

弁護人『弁4ですね』

被告人『はい、そうです』

弁護人『感じたのは』

被告人『まず弁2号証については、全文直筆で、署名押印もしてあるものでありまして、えーと、非常に信頼できるものだと感じました。弁3号証については、事件当日の内容が極めて詳細に書かれておりまして、これは実際に体験した者でなければ書けないと考えました。弁4号証については、新井さんが、私が告白したことによって徹底的にやられると思います、としたうえで、其れでもこうしないといけない、と書かれておりまして、非常に強い覚悟を感じました』

弁護人『利用、制限など』

被告人『特につけられたという認識は全くありません。まず、新井さんから、資料届きましたでしょうかとメールがありまして、それに対して私が、読んだうえで、新井さんの告白を皆さんに読んでもらう考えでいますと言いました。それに対して新井さんは、この告白を決断するには大変な勇気いりました。飯塚さんにも勇気持って当たっていただけたら嬉しいです、そして、えー、(聞き取れず)』

弁護人『受け取ったの、その、弁5』

被告人『はい』

弁護人『新井さんの引用するというの、弁6』

被告人『はい』

弁護人『新井さんから、告白には勇気がいったけど、勇気を持って取り組んでくれたらありがたい。飯塚さんに任せる、というメール。これが弁7でいい』

被告人『はい』

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