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横浜中国人姉妹殺害事件公判傍聴記・2022年3月1日(被告人・岩嵜竜也)

2022年3月1日
東京高裁第10刑事部
805号法廷
事件番号・令和3年(う)第1647号
罪名・住居侵入、殺人、死体遺棄
被告人・岩嵜竜也
裁判長・細田啓介
裁判官・駒田秀和
裁判官・岡田龍太郎
書記官・高田繭子

この事件は、被告人の岩嵜竜也が、2017年7月6~7日に、交際関係のもつれから中国人姉妹二人を絞殺したとされている事件である。
岩嵜は無罪を主張していたが、一審では死刑が求刑された。しかし、2018年7月20日の横浜地裁の判決は、異例の懲役23年であった。検察は控訴し、2019年4月19日、破棄差し戻し判決が下された。岩嵜は上告したが、2020年1月29日、上告棄却。有罪を前提に、横浜地裁で第二次一審が開かれることとなった。
第二次一審では、岩嵜は人定質問と最終意見陳述以外、黙秘した。無罪を主張している以上、有罪を前提とする質問には答えられなかったのだろう。検察は、求刑を死刑から無期懲役へと下げ、2021年9月3日、求刑通り無期懲役の判決が下された。
このように、複雑な経過をたどった事件であり、第一次一審判決の有期懲役、第二次一審判決の求刑下げと、異例な要素が見られた事件でもあった。

傍聴人は、最終的に19人となり、ほぼ満席となった。しかし、コロナ対応の席なので、法廷には空席が目立ち、息苦しさは感じない。
傍聴席と法廷の間に、暴力団関係の事件のように、硝子板が立てられていた。
弁護人は、髪の短い中年男性である。これまでに見た顔ではない。一審から差し戻し後の第二次一審まで、高木小太郎弁護士が一貫して担当していたが、差し戻し控訴審からは外れたようだ。
遺族代理人と思われる、痩せた中年男性が、最前列の傍聴席に座る。
被告人である岩嵜竜也は、これまでと違い、髪を丸坊主にしていた。眼鏡をかけ、ノーネクタイのスーツ姿である。白いワイシャツを着ており、黒いスーツの前はあけられていた。色は白い。座ってからは目を閉じ、深く息をついている。
検察官は、眼鏡をかけた、髪の後退した、中年男性。
裁判長は、眼鏡をかけた、後頭部の薄くなった初老の男性。あの言葉遣いは丁寧な、細田裁判長である。裁判官は、眼鏡をかけた中年男性と、痩せた眼鏡の中年男性。
岩嵜竜也の、第二次控訴審公判は、14時に開廷した。

裁判長『岩嵜さん、立ってください』
被告人は、証言台の前に立つ。
裁判長『名前は何といいますか』
被告人『岩嵜竜也です』
心なしか、これまでのような声の張りがなかった。
裁判長『生年月日は』
被告人『昭和53年4月10日です』
裁判長『本籍は』
被告人『神奈川県川崎市宮前区(略)です』
裁判長『住居は』
被告人『神奈川県横浜市(略)です』
裁判長『第一審判決では、職業無職となっていますが、それでいいですか?』
被告人『はい』
裁判長『じゃ、席に戻ってください』
被告人は、被告席へと戻る。
弁護人は、控訴趣意書のとおり主張。検察官は、控訴には理由なく、速やかに棄却されるべきと答弁。
弁護人は、事実取り調べ請求として、弁1号証の請求を行う。検察官は、不同意、不必要と述べる。裁判長は、不必要として、採用しない。他には、弁護人の書証関係はない。
裁判長『原審の証拠関係を精査し、判決します』
被告人は、裁判長の方を見ていたが、少し下を向いた。
判決期日は、4月19日14時に指定される。
裁判長『聞こえましたか』
被告人『はい』
裁判長『4月19日14時、判決。控訴審の判決ですので、出頭義務はありませんが、権利はあります。決められます。本日は、これまで』
14時3分に、岩嵜竜也の第二次控訴審初公判は終了し、結審した。一審での死刑求刑に対して懲役23年の判決、控訴審での破棄差し戻し、第二次一審での無期求刑、と異例の経過をたどってきた事件にしては、あまりにあっけなかった。
閉廷後、被告人は、弁護人と少し話をする。その後、傍聴席の方に近寄り、かすかに頭を下げて、退廷した。

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