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クレーム応対研修実施で大切にしていること2

私は、1年を通じて、研修、現場改善指導を担当させていただいています。そして、毎年この時期は、清掃、設備、警備、店頭接客などに携わる年齢の高い方を対象にした研修が集中する時期でもあります。
私と同じ60代はまだ若い方で、70代半ばや80代の方もいらっしゃいます。皆さん、「元気なうちは、どんなことでもいいから、仕事携わっていたい!」とおっしゃる方が多いです。
私も、今は年齢が近づいてきましたが、ご高齢の方の研修は、独立した当初から担当していました。

先輩講師のアシスタントから卒業し、一人で担当したのが、清掃スタッフさんのマナー研修、警備員さんのクレーム応対研修でした。
皆さん、仕事のキャリアだけでなく人生の大先輩。

「そんなこと、全部知ってる!」
「もうマナー研修なんて何回も受け取るからうんざりじゃ」
という言葉があちこちから聞こえてくるし、
「こんな研修受けても意味がない!」
「わしらがクレームが言いたいわ!」と研修に対してクレームを言われたこともたくさんありました。

特にクレーム対応研修は、ほぼ全員が、受講する方が思い切りマイナスイメージを持ち、後ろ向きな気持ちで受講しに来られます。
駆け出しのころは、とても不安でした。
しかし、今は、そういう方たちをワクワクしながら迎えています。

それは、この研修を実施する目的は「受講してくださる方の不安や課題を解決して業務に安心して取り組めるようにすること」と思っているからです。
この目的につなげるためには、研修内容を自分事にしていただく必要があります。

一般的なクレーム対応の知識や対応のポイントの説明は、出来るだけ短くコンパクトにまとめて再確認程度にしました。
説明が終わった後、感想を聞いてみると、やはり
「そんなの、わかっとるよ」
「それが出来れば、苦労はせんよ!」という声があちこちから聞こえてきました。その反応を

「そうですよね!私もいつもこれが出来ていれば、あんなに始末書をたくさん書かなくて済んだんですよ!」と受け止めつつ
「わかっちゃいるけど、出来ないってなぜだと思いますか?」と尋ねてみました。すると、誰からも何も反応はありませんでした。

「では今日は、クレームやトラブルに皆さん一人一人がどのように対応されているか、チェックリストで確認してみませんか?」と言って、対人関係の度合いを把握するチェックリストを行いました。そして、一人一人の結果を見せていただきながら、現状の確認や簡単なアドバイスを行いました。

「なんか、すごく当たっとるわ!」
「まさに、そのまんまです!」
「そうか、そういうことか」
チェックリストを行ったことで、「知識ならわかってる」から「自分はどんな対応をしている」に切り替わっていきました。
それをきっかけに、日ごろの応対の底上げになるポイントをワークを交えて行っていくと、皆さん前のめりになってお話を聞き、メモを取り、質問をしてくださるようになりました。

そして、研修が終わりに近づくころになって、皆さんの方から発生したクレームについて、今後どのような対応が望ましいのかを意見交換を行う場を作ってくださいました。話し合いの中では、「これが最適の対応策」というものを見つけるのではなく、具体的な事象に対して、どのようなことを大切に対応すればよいか、ご自身の苦手な状況を克服するには、日ごろどのようなことに気をつけたらいいか?など、質問や意見がたくさん出た有意義な時間になりました。

「今日、この部屋に入るまで、気が重かったんですよ。お辞儀の練習させられたり、みんなで一斉に何かを言わされたり、あれをするな、これをするな…っていつもそんな研修ばかり受けさせられてたから、また今日もそうなんだろうな~って思ってました。でも、今日はホントに来て良かったです!スカッとしました。モヤモヤしていたものが消えて、みんなで意見交換も出来て、ガス抜きになったし…。こんな研修なら何回も受けたい!明日から、頑張ります!」

研修が終わったときにそう話してくださったのは、クレームがこじれて今回の研修に繋がった当事者のHさんでした。
他の皆さんも、似たような言葉を私にかけてくださり、笑顔で会場を後にされました。

報告書の中には「こんなお客様だったら、私はもっとブチ切れるだろうな」と思うようなケースもありました。
発生するクレームやトラブルは、何かよくないことがきっかけになって起こります。でも、たとえよくないきっかけがお客様から発生したものであっても、相手をさらに不安にさせるような対応をすべきではありません。

これから駐車場を利用されるお客様がさらに増えていきます。ちょっとしたクレームやトラブルは必ず発生すると思います。
ゼロにするのではなく、発生したことにきちんと対応して不安を安心に変えること。
それに向けて、みなさんと一緒に取り組む機会を与えていただきました。この研修が終わったら、現場に立ち合うお仕事が待っています。微力ながら、お仕事に携わっておられる方々をしっかりフォローしながら現場改善に携わっていきたいと考えています。


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