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ホネ活

さて、今日は私のホネ活を少し語る。全国に分布する標本づくりを趣味として製作、発表などの活躍をしているホネ屋さんに比べれば、大した場数は無いのだが、私にとっては心置きなく夢中になれる作業であり、また自然の造形の美しさに感動し、時々仲間と分かち合うことは、私の心の拠り所なのだ。 

先日も札幌市のチ・カ・ホで開催されたサイエンスフェスタにブース出展し、ホネってすごいよね!!…と道行く人々にホネ(のレプリカ)をかぶらせ口角泡飛ばし熱弁をふるってきた。


カラスの頭骨(レプリカ)をかぶる団員(ル・トロワで開催されたホネ茶論にて)

私は「えぞホネ団Sapporo」という有志の団体で、標本を通して生き物の身体の機能や構造、その生態系や現行の分類、進化の道筋、または人間世界との関係性や軋轢にまで想いを馳せてもらおう、と動物園やサイエンスイベントでワークショップなどを仲間と開催したりしている。
知識や研究はさておき、我々が得意なのは「コミュニケーション」だ。博物館や専門家が担う教育活動とは違って、「正しい言葉」を必ずしも言わなくてもいい我々は、服装や目線、態度や表情など相手が発するコミュニケーションの記号に合わせて言葉を選んで発することが出来る。
いや、むしろ相手の興味を少しでも惹くことが出来たなら、その瞬間、勢いに任せて自分の大好きなモノ(標本)への愛を弾丸トークで語り、ぶちまけるのだ。
そんな大人を見てあんぐりしてる子どもや保護者もいるかも知れない。でも、中には個人の情熱を語ることを愛おしんでくれて、共感しようと努めてくれる子もいれば、「え?話しちゃいます?」とばかり、我らを上回る弾丸トークで人体構造や個人的クマ理論を語ってくれる。昆虫の可愛らしさや魚類の環境適応能力、生態の不思議…語りだすと止まらない。中には自らの洞窟探検や動物の写真を撮るために命を削る体験をしたことなども語ってくれる人もいれば、幼少期に見た大自然の風景や今は亡き両親の苦労話にまで話が遡る方々もいる。
 そう、我々は「ホネ」を通してホネを語っているだけではなく「好き」「楽しい」「面白い」という自発的な感情を喚起しているのだ。大人になるにつれ、いつの間にか抑制し、社会に適応するため物分かり良く忘れて来ていた衝動的な好奇心の発露を。

2023/12/16-17開催のサイエンスフェスタinチ・カ・ホにて(札幌)
団員の宝物

「怖いもの見たさ」と言う言葉がある。ホネはその部類に入るだろう。恐怖でどうしても耐えられない、もしくは自分の衝動性が抑えられなくて現代社会にそぐわない行為をしてしまう、と言うならともかく、「怖いもの」を「怖くないもの」にしていくために「見つめる力」が大切なんじゃないかと思う。

深呼吸をしてよくよくホネを見つめてみると、なるほど、モノとしてみれば怖くはないし美しさすら感じる。数をこなしていくとその多様性にも目を奪われるし、個々の機能や合理的な構造に感嘆せずにはいられない。自分の中にあった恐怖が「骨=死」という自分の想像が作り上げた概念だったことにすぐに気づく。

生きていると色々な選択を迫られるし、その結果が正しいのかどうかわからなくて悩む人は多い。そのすべては自分の「もし違う選択肢を選んでいたら」という妄想との戦いでしかない。

私にとってホネ活は今自分が立っている場所、見るべきもの、リアルな生活を指し示してくれる現実的な営みなのだ。

今日もコトコトホネを煮る。


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