【JBpress町田さん記事感想⑤】アイスショーの意義

JBpressオートグラフに掲載された、町田樹さんの記事の中から、気になった話題をピックアップして書いてみたいと思います。
第五弾は、「アイスショーの意義」です。


フィギュアスケートは、スポーツであり、アートであり、エンターテイメントである

「2015年くらいまでのアイスショーというのは、もちろんエンタメ的要素もあったかもしれないですが、実際は競技会との差別化が全然図られていなかったと思います。そもそもプロスケーターやアイスショー業界というのはスケート業界の中だけをみていたのではないか。しかし、それではダメだと当時の私は思っていたわけです。

 まずは競技会との差別化を図る。そして真のライバルはスケート業界ではなく、アート&エンターテインメント業界全般なのだと。例えばミュージカル界やバレエ界などと張り合えるような質の作品と実演を提供していかないと本当にアイスショーはダメになっていくと思っていたし、私はアイスショーをそういう世界にしたいと思いました。アイスショーも勝負の世界だと言って、全方向に対して勝負を仕掛けていったわけですね」

アイスショーの真のライバルは?数々の「勝負プログラム」を体現して魅せた町田樹が考える、ショーの意義と可能性|スポーツ科学研究者、元フィギュアスケーター・町田樹インタビュー(3)町田樹/松原孝臣

私は町田さんが提唱する、「フィギュアスケートはスポーツであり、アートであり、エンターテイメントでもある」という言葉がとても好きで、その魅力に取りつかれているといっても過言ではありません。このような広がりを持つ競技は、他に類を見ないと思います。
だからこそ、競技という側面を持つ一方で、このようにアートやエンターテイメントの領域にまで広げられることに難しさを感じながらも、まだまだ様々な可能性を秘めていると感じ、今後の発展に期待しかありません。
競技会との差別化をはかり、競技会とアイスショーの共存を模索し、補完関係を強固にしていけば、業界全体としてまだまだ上昇する余地はあるのではと考えているのです。

(参考)競技会との差別化については、前の記事で詳しくまとめています

出演者にとってのメリット=活動資金、技術・表現力向上

「まずは活動資金を自分の力で稼げるというのが大きいと思いますね。私も選手の頃はアイスショーのギャランティーがなければおそらく競技活動を継続できていませんでした。自分の能力でちゃんとお金を稼いで、そのお金でもってフィギュアスケート活動ができるという意味では非常に大事な場だと思います。ただそれがかなうのはごく一部の上位スケーターだけだという現実はあります。

 もう1つは、アイスショーは非常にインスピレーションを得られます。競技会でしのぎを削るような、生きるか死ぬかの勝負で戦っていく舞台も刺激的かもしれないですが、それとは異なる刺激を得ることができます。優れたプロや他分野のアーティストと一緒に舞台に立つ機会もありますからね。私もかつてそうした人たちをみて、自身のスケート技術はもちろんのこと、芸術性や表現も学ばせていただきましたので、スケーター育成の上で非常に大きな意味を持っているのではないかと思います。」

アイスショーの真のライバルは?数々の「勝負プログラム」を体現して魅せた町田樹が考える、ショーの意義と可能性|スポーツ科学研究者、元フィギュアスケーター・町田樹インタビュー(3)町田樹/松原孝臣

フィギュアスケートは、観る側はもちろんですが、やる側にとっても、かなりお金のかかる競技だと言われています。
しかし、そういった状況でも、試合やショーのチケット(やパンフレット、グッズなど)を購入することで、現役選手たちの活動資金につながるとなれば、協力したいというモチベーションになるのではないでしょうか。
また、アイスショーに出演することで、他の出演者(≒競技上ではライバル)と親しくなれたり、一緒に練習することで刺激を受けることもあるでしょう。また競技ではなじみのない音楽や振付にチャレンジすることもあるかもしれません。そういった機会が、スケーター自身の技術や表現、また興味の幅を広げるのによいチャンスになるのかなとも感じています。

観客にとってのメリット=生でフィギュアスケートの魅力を体感できる

「そもそもトップフィギュアスケートプロダクトを見る機会はなかなかありません。例えば世界選手権やオリンピックやグランプリシリーズなど、上位の国際イベントは世界巡業制ですから、日本にまれにしか来ないわけです。これがリーグスポーツの場合、定期的にゲームが開催されるので、より見る機会があるわけですけれども、フィギュアスケートのような個人スポーツはそうではありません。そのような中で、フィギュア業界ではトップパフォーマンスを見ることができる機会がアイスショーだと思います。現状ではショーは供給過多なので今の状況には当てはまらないと思うのですが、元来は、毎年恒常的に国内外のトップスケーターのパフォーマンスを提供するためのショーという意味合いが大きかったのではないでしょうか」

アイスショーの真のライバルは?数々の「勝負プログラム」を体現して魅せた町田樹が考える、ショーの意義と可能性|スポーツ科学研究者、元フィギュアスケーター・町田樹インタビュー(3)町田樹/松原孝臣

どのスポーツでもそうですが、その競技会に足を運んで生で観戦することは、その競技のコアなファンでない限りはあまり多くないことかと思います。
しかし、アイスショーという、競技会とは別の形で現役選手の演技を生で見る機会があるというのは、他の競技にはない魅力の一つなのかもしれません。

昨今、テレビでなんとなくフィギュアスケートを見られる機会は減りました。そういった意味でも、一般の方がフィギュアスケートに触れる機会はどんどん減っています。
しかし、コロナ禍でライブ配信やコンテンツ配信が充実し、わざわざ出かけなくてもアイスショーが見られるようになりました。衛星放送や有料放送で見られる機会も増えました。
もちろん、チケットを買って現地に見に行くのが一番の収入源にはなるのですが、それ以外でも、様々な工夫をして、収益をあげられたり、興味を持つきっかけになり、未来のお客様に繋がることができるかもしれません。

最後に

フィギュアスケートに限ったことではないですが、多くのものごとが少子高齢化により縮小傾向にあります。
競技人口の減少やリンクの閉鎖、経済状況によるスポンサーの減少などでの資金難など、とりまく環境は厳しいものになっています。
競技会だけでなくアイスショーという収入や活躍する場所があるというのは、フィギュアスケートの大きなメリットと感じています。
アイスショーに足を運ぶことで、現在フィギュアスケートに取り組んでいる方々の支援にもつながれば嬉しいですし、競技としての存続にも繋がればと願っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?