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最初から答えはあった話

他国駐在の先輩から相談を受けた。その先輩にはいつも色んな相談をして、大変にお世話になっているのだが、いつの間にか先輩もまた、事あるごとに僕に相談をしてくれる様になっている。大変にありがたい関係だ。

さて、今回の相談は、

一人息子のお子さんがもうすぐ大学生になるらしいのだが、一人暮らしのメリット・デメリットについて問われた。どうやら家族で一人暮らしをさせるか否かについて意見が割れているらしい。息子さんは大学生になったのならすぐに一人暮らしをしたい。奥さんは基本反対。先輩は、させてあげればいいじゃないか、と。それによってお互いの関係性も少しぎくしゃくしているようだ。

、、、困った。僕は大学時代に一人暮らしをした事がない。

余談だが、それどころか僕の通った大学は高校よりも近かった。なので、中学は徒歩もしくは隠れてチャリ、高校もチャリ、大学は、、、当然チャリだった。そのおかげか、今もチャリは好きだ。

さらに余談だが、僕は小さい頃からなぜか「定期」がめちゃくちゃ欲しかった。いつでも遠くに行ける!フリーパスかっこいい!大人っぽい!そんな浅はかな、でもなぜか強い憧れを持っていた。高校でそれは叶わず、大学でも叶わなかった。そして社会人になった時、遂に!!と思った僕の赴任地は岡山だった。一時間に一本しか来ない電車はそもそも大人の生活インフラとしてはワークしておらず、1年目から車通勤だった。かくして、私が生まれて初めて定期を持ったのは社会人10年目、東京に異動した33歳の時だった。その時の嬉しさったら、、、

話を元に戻そう。

今回は僕の体験は語れないので、丁寧に寄り添いながら、先輩、奥さん、息子さんの考えを聞いてみようと思った。

きく

僕:奥さんはどうして反対なんですかね?

先:今コロナで殆どリモートだし、やはり寂しくなるという気持ちがあるのかも。

僕:寂しい気持ちもわかりますねぇ。コロナでリモートなら様子見というのは良いかもしれませんね。

先:俺は少し大学生活に慣れて、友達ができて、土地勘もついてから最適な場所に住むのがいいと思ってる。

僕:それもよくわかりますね。急いで決めて不便なところになっちゃっても後から動きにくいですからね。

先:でも息子は今すぐしたいらしい。まぁ、最終的には本人の意思を尊重するしかないかなぁ。

僕:確かに独り立ちしたいという想いが強かったり、合格したら一人暮らしできる、という風に思ってたらすぐにしたい、という気持ちになるのもわかりますね。

意見をまとめる

ここで僕は3人の意見をまとめてみた。

僕:息子さんの意見も尊重しつつ、一人暮らしさせてあげたい気持ちはあるが、場所感もわかってからが良いという親心がある事、今はリモート授業も多いので緊急性はない事、これらを伝えて、コロナの落ち着きと、慣れの為夏休み迄待ってみては良いのではないでしょうか?
それまでに、奥さんにも「心づもりはしておこう」という話もされると良いかもですね。
一つだけお話しされる際に気をつけられると良いかな、と思ったのは、息子さんは受験を頑張った、その合格に対する報酬として一人暮らしできる事を結びつけているかもしれませんね。なので、頑張ったのに!とならない様に、労いは、しっかりしてあげた方が良いかもしれませんね。受験、大変ですしね。

すると、先輩は
「そうだね、その通りだ。話をしてみるよ」
と。

この話、全部既にあった意見をまとめただけですよ。皆理に適っています。見ている向きが違うだけでしたね、うまくいいといいですね。
僕はこう伝えて会話を終えた。

技術的問題と適応課題

わかっているけど、うまくいかない、複数の人間が絡む問題にはそんな時がよくある。寧ろそんな問題しか残っていない。逆説的にいうと、解けないからこそ問題として未だに存在しているのだ。

ロナルドハイフェッツは問題には2種類あると定義した。

一つ目は技術的問題。これは既存の方法で解決出来る問題。つまり、答えは決まっていてそれに対して対応すれば解ける問題だ。のどが渇く、水を飲む。の様な問題だ。
二つ目は適応課題。こちらは 一方的に解決ができない複雑で困難な課題/関係性の中で生じる問題。今回のような話だ。それぞれの思惑は決して間違ってはいない。けれども、それぞれの世界(ナラティブ)が違うために、こちらの正が相手の正でなかったりするので、なかなか一筋縄ではいかない。正確には一筋縄で解こうとすると、失敗する。

私の愛読書、「他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論 (NewsPicksパブリッシング)」宇田川元一著には、適応課題に取り組むには、準備、観察、解釈、介入、この4つのプロセスが必要だという事が書かれている。(ちなみに、技術的課題と適応課題の差も丁寧に書かれているのでおススメです)

今回の話をまとめる

今回、僕は介入は出来ないので、解釈までをしっかりしよう、と試みた。

準備として、先輩は何を問題と感じているのか、先輩、奥さん、息子さんの登場人物の整理を行った。

観察として、皆の意見をただ聞いた。今回はこの観察を出来るだけ丁寧に行う為に二つのことを心がけた。
一つ目は想いの深掘りを促すために一度聞いたことをコダマの様に繰り返す事。二つ目は、ヒアリングを出来るのが先輩からのみであり、登場人物同士の感情のコンフリクトがある為、感情の不陸がなるべく出ないように、テキスト(LINE)でやり取りする事

その上で、解釈をしたのだが、上述の通り、新たな解釈をする必要は殆どなく、ただ、纏めただけだった。
一点、息子さんの報酬としての考えのみ、仮定として解釈を加えた。

最初から答えはそこにあったのだ。その晩僕は思わずこんなtweetをした。


後日、この件に関してまた先輩と話をしたのだが、久しぶりに奥さんと会話してお互い納得した、と言っていた。息子さんとの話はまだみたいだが、どうやら少し良い方向に向かっているようだ。

では、また。

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