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ベビーオイル洗顔を化粧品開発者が解説したらおもしろい結論になった

「ベビーオイル洗顔ってSNSでたまに見かけるけどいったいなんなの?怪しい美容法?」

もし、このように疑問を持ったことがある方は、ぜひこの記事を最後まで読んでみてください。読み終わったころにはきっとベビーオイル洗顔を一度試してみたくなっているはずです。



こんにちは。現役の化粧品開発者みついだいすけです。普段はTwitterで化粧品選びが楽しくなるような専門知識を解説しています(フォロワー10万人のTwitterアカウント→https://twitter.com/gni_dream

今回は、最近Twitterで話題の「ベビーオイル洗顔」について、現役の化粧品開発者の視点からメリット・デメリットを解説していきます。この記事は、三部作の前編になります。

動画で解説を見たい方はこちら↓

ベビーオイル洗顔とはベビーオイル(ミネラルオイル)を肌に馴染ませて、オイルと馴染んだメイクをティッシュで吸い取る洗顔方法です。オイルを肌に感じなくなるまでティッシュで押さえてください。

この方法を初めて知ったきっかけは、ベビーオイル洗顔を発信しているmimiさんのTwitterアカウントをフォローし始めたことです。(mimiさんのアカウントとベビーオイル洗顔の考え方は以下に添付しておきます。)

mimiさんのアカウント
https://twitter.com/mimitan090909

ベビーオイル洗顔の考え方(mimiさんのブログ)
http://mimitan090909.blog.jp/archives/6162742.html

はじめはこの洗顔方法が本当に優れた方法なのか半信半疑でした。しかし、mimiさんが発信するツイートや、実際にベビーオイル洗顔で肌が改善された方の発信を見るうちに「理にかなっている」と考え方が変わり、実際に試してみるに至りました。

結論から言うと、ベビーオイル洗顔を初めて3ヶ月で小鼻の角栓による黒ずみが明らかに減り、肌全体のキメが整ってきたと感じました。なにより驚いたのは小鼻の角栓がボロボロ取れることです。これには本当に驚きました。この角栓ポロリの現象についても詳しく解説していきたいと思います。

ただし、ベビーオイル洗顔は個人差があるため、全ての方におすすめできるわけではありません。ただ、試す価値は十分あると思います。(特にバリア機能が弱い敏感肌の方にオススメ)

・界面活性剤を使用しない洗顔のメリット・デメリット

 ベビーオイルによる洗顔はオイルクレンジングと違い界面活性剤を含まないため、肌に必要な成分(皮脂、NMF、セラミドなど)を洗い流してしまうリスクを低減できるところに大きなメリットがあると思います。(今回話したい内容はこの部分ではないので詳しい解説は割愛します。)


一方、界面活性剤が配合されていないゆえに水では洗い流すことができず、化粧料を落とし切ることが難しいというデメリットもあります。しかもミネラルオイルは極性が低いオイルのため一般的なエステル油よりもメイクに馴染みにくい性質があります。
実際にやってみると落としにくいメイクも存在します。この洗顔方法のメリットを享受するためにベビーオイルで落ちるメイクだけ使うという方もいらっしゃるようです。つまり、メイクの種類によって落ちにくいものが存在するということがこの洗顔方法の唯一のデメリットであると言えます。(ベビーオイル洗顔のメイク落ち理論については後編で詳しく解説しようと思います。)

・水で洗い流すことができない洗顔方法。

ベビーオイル洗顔の最大の弱点は水で洗い流そうとしても流れ落ちないことだと思います。これは界面活性剤が配合されていないことに起因しています。この弱点をカバーするのがmimiさんが推奨しているベビーオイル洗顔の方法で、顔に残っているオイルとメイク汚れをティッシュやキッチンペーパーに吸わせることで取り除くという方法です(※ペーパーでできるだけ吸い取ることがポイントのようです)。
ベビーオイルは水を弾きますが、キッチンペーパーやティッシュなどの紙類は油を吸う性質がありますので、メイク汚れを含んだオイルを転写させることができます。これで水で洗い流せないデメリットをうまくカバーします。

 ただし、この洗顔方法ではオイルを最後まで除去することができません。mimiさんのブログの中でも「落ち切らなくてもあんまり気にしない」と言っている通り、界面活性剤による洗いすぎのリスクや肌への刺激よりも、多少のメイク汚れが残る方がましという考え方のようです。確かに一理ありますね。

 そして"オイルを水で洗い流すことができずに肌に残ってしまう"という本来弱点であるはずのこの性質こそがベビーオイル洗顔の最大のメリットをもたらしていると私は考えています。

・そもそも肌に残っても良い成分である。

そうなんです。この洗顔方法はオイルが肌に残っても良いんです。

オイルクレンジングの場合、界面活性剤を多く含むため肌にオイルが残ることには肌への刺激につながり、その刺激がもとで肌荒れの原因になってしまいます。そのためダブル洗顔で顔に残ったオイルを落とし切る必要があるわけです。

その点、ベビーオイルは肌に残っても大丈夫。界面活性剤を含まない上にミネラルオイルというのはワセリンと同じ非極性の炭化水素オイルの分類になります。他のオイルと比べて非極性の炭化水素オイルというのは肌の水分蒸散を防ぐ効果が高いことも知られています。(この性質はワセリンも同様で非極性の炭化水素油の分類の特徴とも言えます)

また、肌に油分を残すことは分泌された皮脂をミネラルオイルで薄める効果があるため新たにできる角栓を肌に残りにくくする効果があるのではないかと予想しています。

肌に油分を残す。これは界面活性剤を配合しているオイルクレンジングには真似できないことです。

・角栓ポロリについて

ベビーオイル洗顔を実践している人が「角栓が取れた」とツイートしているのをよく見かけます。私もこの洗顔方法を実践したときに体験しました。角栓が徐々に毛穴から顔を出しポロッと取れる現象のことです。これを角栓ポロリと呼んでいます。この現象こそがベビーオイル洗顔の最大のメリットと私は考えます。


なぜこのような現象が起きるのか、僕は次のように考えました。


ベビーオイルの主成分はミネラルオイルという名称の炭化水素オイルです。このオイルは化粧品に使われる数あるオイルの中で最も極性が低いオイルの一つと言えます。極性が低いというのは分子の構造が炭素と水素だけで構成され、分子中に他の置換基がないということです。化粧品でよく使われる油脂やエステル油は極性の高い置換基を含むためミネラルオイルと比べて極性が高いオイルと言えます。

極性が低いことがなぜ角栓ポロリと関係があるかといいますと、角栓を溶かしすぎない(ふやかしすぎない)という点にあると考えています。これを説明するために角栓の構成成分について考えてみます。


角栓は約70%が角質などのタンパク質で約30%が皮脂という構成になっています。70%のタンパク質は不溶性の固形成分なのでオイルによって溶かすことはできません。したがいまして角栓を溶かすには皮脂にアプローチする必要があります。

オイルクレンジングは”皮脂を溶かす能力が高いオイル”や”界面活性剤”が配合されているため角栓に馴染みやすいと言えますので、角栓にオイルが浸透していき柔らかくふやかしながら徐々に溶かしていくことができます。しかし、角栓そのものをを根こそぎ溶かす能力まではありません。なぜなら角栓の約70%は角質などのタンパク質、つまりオイルでは溶解しない固形成分だからです。

一方、ミネラルオイルは非極性であるがゆえに角栓に浸透するほど皮脂と親和性がないため角栓をふやかすことはできず、角栓の表面をごくわずかに溶かす程度の能力しかありません。これが角栓ポロリの重要なポイントと考えています。

ミネラルオイルによる洗顔は角栓をふやかすことなく角栓の表面だけを毎日少しづつ溶かしていきます。表面だけ薄く薄く溶かしていくので徐々に毛穴と角栓の間に隙間ができていきます。角栓は芯に硬さを保ったまま毛穴との隙間ができてくることでぐらぐら揺らいできます。そしてついには角栓がポロリ。これが角栓ポロリのメカニズムだと思っています。

個人差はありますが下記の図の①~⑤の現象が数週間~数ヶ月の単位で起こります。実際は角栓が動いていくと同時に毛穴も小さく縮んでいくと予想されます。また、④の状態で無理やり引き抜いてしまうと、ぽっかり穴が空いた状態になってしまうため自然にポロリするまで我慢することが大事です。

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一方、クレンジングオイルの場合、角栓に含まれる皮脂との相性が良く角栓そのものをふやかし柔らかくしてしまうためこの現象は起こりにくいと考えています。一見、角栓はふやかして溶かした方が良いとも考えられますが、先ほども述べたように角栓は不溶性のタンパク質を70%も含むため根こそぎ溶かし切ることが難しく、結果的に毛穴に柔らかくなった角栓が残る状態が続いてしまうのではないかと考えられます。

角栓を溶かすオイルクレンジングよりも溶かさないベビーオイル洗顔の方が毛穴がきれいになると実感している方が多いのは、角栓を根本からポロリと脱離させることができるからではないかと私は推測しました。ただし角栓が脱離したあとの毛穴は刺激に弱いと考えられるので、その後のケアには十分に気をつけないといけないと思います。

・ミネラルオイル以外のオイル洗顔

ミネラルオイルはアレルギー反応が起きにくく、オイルとしても劣化しにくい安全性が高いオイルですが、合わない方もいらっしゃるようなので植物オイルを使用して洗顔している方もtwitterでは多く見られます。(植物性のオイルのためアレルギーには十分お気をつけてください)

私がtwitterでフォローしているmicoさんという方はベビーオイル洗顔のミネラルオイル、ホホバオイル、スイートアーモンドオイルで試されています。

micoさん曰くスイートアーモンドオイルでは角栓ポロリせずにミネラルオイルやホホバオイルではポロリするそうで、そんな実体験をブログに書かれていました。それぞれの成分を比較すると確かにスイートアーモンドオイルは角栓ポロリしなそうだなと思いました。

スィートアーモンドオイルはオレイン酸を主成分とする油脂(トリグリセリド)ですので極性が高いオイルです。(以下、日光ケミカルズの製品情報より引用)

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皮脂は主成分が油脂なので構造が非常に近く馴染みやすいオイルと言えます。したがって皮脂をふやかす方に力が働くため角栓ポロリしにくいと予想できます。


一方、ホホバオイルは植物油では珍しく油脂ではなくエステルが主成分のオイルになります。

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極性は油脂よりは低いですがミネラルオイルよりは高いという中間の性質と言えるでしょう。


極性の低い順に並べると以下のようになります。
ミネラルオイル>>ホホバオイル>スィートアーモンドオイル

皮脂を溶かす能力としては
スィートアーモンドオイル>ホホバオイル>>ミネラルオイル
ということになります。

以上よりスイートアーモンドオイルでは角栓ポロリしにくくホホバオイルやミネラルオイルで角栓ポロリしやすくなっているのではないかと推測します。これを実体験で分析し実行しているmicoさんは本当にすごいと思いました。


まだまだ解説したいことはたくさんありますが今回はここまでにしたいと思います。

今回のnoteで書いた内容はあくまでも私の仮説ですので間違っているぞということがあればご指摘いただきたいと思います。

次回のnoteはもう少し詳しくベビーオイル洗顔について深掘っていきたいと思います。もしよろしければいいねやフォローもしていただけると記事を書く励みになります!
(つづきのベビーオイル洗顔応用編はこちらです。失敗しないためのベビーオイル洗顔の方法とメカニズムについて書きました。→https://note.com/daisuke3tsui/n/nd94c3a3d1202

最後に現役の化粧品開発者という立場上、具体的な製品はおすすめできないのでamazonで売っているオイル洗顔に使えるオイルを添付しておきます。オイルの種類によって効果が微妙に変わります。肌への相性もあるので色々と試してみてください↓
ベビーオイル→ https://amzn.to/3TlDPU0

ホホバオイル→ https://amzn.to/3S5krd5

ライスブランオイル→ https://amzn.to/3rXYzWh

スイートアーモンドオイル→

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動画でも解説しているのでよろしければこちらご覧ください↓

それでは。

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