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環境保全について

ほとんどどこへも行かない私が、往復(下道で)10時間かけて広島へ行ったのには訳があります。北アルプスの雲ノ平山荘のオーナー伊藤二郎さんのお話会に参加するためでした。

Noteに伊藤さんの話を全て要約し記載することはできないのですが、あくまでも私の思ったことを自分の言葉で書きたいと思います。伊藤さんが意図していない解釈を私がして、ちょっと捻じ曲げてるかもしれませんので、あくまでも寿庵オーナーの話(考え)になります。

雲ノ平へ初めて行ったのは1992年。最後行ったのは、2010年ごろ、今の雲ノ平山荘が立て替えたその年に行きました。その間、5~6回は訪ねて行った個人的にも好きなエリアです。

2000年ごろに、岐阜県側の登山道に木道がついたのを記憶しています。私はその木道工事に来る建設会社の方や、別の小屋から助っ人に来た山小屋アルバイトの皆さんのまかない作りのサポートをしていました。

手作業で行われる土木作業。大型機械が入らない中で木道工事をするので、ふもとの建設会社から仕事に来られるみなさんはとてもだ大変だとおっしゃっていたのを記憶しています。私がいた鏡平山荘は池塘の上にありました。その池塘のエリアに木道を作ったのですが、次の年、雪解け後の木道や池にかけた橋はすべて沈み、でこぼこになっていました。つまり一年経たない内にひどい状態になったのです。山の上での作業は普通の工事現場のようにはいかない‥ということだったと思います。

今回、伊藤さんは早急な工事はかえって自然破壊につながるとおっしゃってました。自然を考え、自然を大事に、自然にならって登山道を整備しないといけないと強調。実際に、小屋周辺で裸地化した登山道付近にコモを敷く作業に汗を流されていた伊藤さんに遭遇したことがありますが、あれから15年、その成果を今回スライドで見せてもらえました。

徐々に草木が生え、コモの痕跡は消え、自然に調和した自然そのものが広がる登山道の様子が映し出されていました。その対比として、建設会社が入札して期間内に工事をしたエリアは、崩壊し、ひどい姿になっていました。

決して建設会社が駄目というわけではなく、山の登山道や環境整備や保全に特化した作業員や工法、技術がないから‥と。特殊な整備方法が必要な山での作業には、それなりに植物の研究や、土壌のこと、もっと自然をことを知らないと出来ないのかもしれません。

話を聞きながら大山の山頂台地の緑化「一木一石運動」を思い返しました。登山者に踏み荒らされ、70年代には大山の山頂は茶色く裸地化。80年代に入り、これではいけないと大山を愛する地元が立ち上がり、官民一体となった「大山の頂上を保護する会」が結成、保全運動がスタートしました。そして、石や苗木(大山から崩落した石と指定植物に限る)を持って山頂へあがり、侵食溝を埋めたり、無くなった緑を徐々に取り戻し、今の緑ある山頂へ長い年月をかけて戻していきました。大山は正直、環境保全の草分けだと思います。

ただ、みなさんご存じのように新しく改修した登山道は階段上に丸太が組み上げられ、水はけをよくするためにコンクリートが流し込んであります。きっと、伊藤さん的にはダメな登山道の部類に入るでしょう。

私は、確かにこの登山道が好きではないかもしれません。でも、数百人が列をなして登る学校登山、修学旅行。老若男女問わず来る大山は安全第一でなくてはなりません。そして、季節途切れることなく人が通行するため、早く工事を終えないといけない事情もあるでしょう。当初、近自然工法も模索してたようですが、最終的には土留めというやり方で1~7合付近は整備されています。※決して階段状にして登山者に登りやすくしているわけではなく、土砂の流出をせき止めるために階段状になっています。

大山が国立公園に指定されてから90年近く経とうとしていますが、もともとは外貨を得るために、国立公園に選んでもったという経緯があります。地元の有志がいかに大山の自然と歴史は素晴らしいか‥と東京でプレゼンをした‥と言う話を聞いたことがあります。つまり根底には観光地として、人を呼び込むのが目的でもあります。もし、国立公園が自然を守るためだけを目的に制定されたのであれば、裸地化する前に食い止めれたはずです。

また、今、観光地はオーバーツーリズムに困っています。観光客を分散せるために、国立公園へ誘導する国の政策、国立公園満喫プロジェクトがあります。国の考えは、国立公園内で観光客に楽しんでもらい、自然に触れあい、そこからサスティナブルやSDGsを考えるきっかけに‥という狙いもあるようですが、それには、きちんと受け入れ態勢も整えないといけないと思います。結局オーバーツーリズムで、人があちこちに入り込み、自然を破壊する‥なんてことになれば本末転倒です。観光業に関わっている私としても、観光客は大事ですが、でも、その前に、すべきことも山積みだと思っています。

伊藤さんの話に戻りますが、国立公園に指定されても自然を守る体制が整っていない‥と。環境省の立場が弱く、また縦割り社会の弊害でいろいろなことがうまくいかないようです。アメリカの国立公園のように強制力もなく資金力もマンパワーもないようです。人材、技術、資金、ノウハウ‥。とにかくいろいろなものが欠乏しているようです。

日本はアメリカのナショナルパークを参考に、日本にも国立公園を制定したと聞いてますが、アメリカでは国立公園には私有地ではなく、完全に国が管理しているのに対し、日本は国立公園とは言え私有地が混在しています。また国有林といえども国立公園内に人の営みがあり、完全に公園内の自然を保護することが容易ではないのがわかります。実は寿庵は国立公園内にあるのですが、土地は私の名義です。もちろん、起業時に環境省へも書類を提出し、法律にのっとった規制の中で商売をしています。

環境整備という名目でいろいろな補助金もあるのですが、環境保全や自然に興味もないような企業が入札し、自然をめちゃくちゃにしている‥。大山でも満喫プロジェクトの話題が出た時、金に群がる業者が来るよ‥と少し皮肉めいた話をしたお客さんもいました。伊藤さんは、置かれている今の山の環境を危惧し、自分たちで自然と対話した保全方法を研究、地道な活動をされています。見える景色をそのままに残すことを大前提に作業を進め、できるだけ人工物を使わずに、数十年ののち、工作物がわからなくなることをイメージし、登山道整備を手作業で行っておられます。もちろん、山小屋の運営と並行して、ボランティアでの作業になるようです。すでに15年、成果が見えてきているので、このやり方をもっと広げ、自然を守って行きたいといわれました。

私も感じる、保全に対するいろいろな悶々とした思いがあったのですが、そのなんだかうまく表現できないもどかしい気持ちを、はっきりと具現化して言葉にしてくれた気がします。

私は話を聞いて、伊藤さんは結論として、自然が好きであることを一番言いたかったと思いました。自然が好きでないと自然との対話もできません。そして、保全活動するのには、自然を愛する気持ちが必要。

もちろん、この気持ちだけで保全活動はできません。そこに色々な協力、人材、制度や法律、資金に能力にノウハウいろんなことが絡んでいきます。この部分が少しでも改善するために、情報を発信。同じこころざしで保全活動をする同志たちと共に、いろいろな取り組みをされています。今回、その活動に賛同したパタゴニアにて、このトークイベントが開催されました。

パタゴニアの経営理念は、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というもので、経営哲学は環境保全のようです。

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でも、自分は何ができるのか??この話を聞いて、すごいなぁ~って終わるのではなく、何をできるのかを考えたいと思いました。

伊藤さんは、登山道の整備に税金を使うことに対して「一部の人の趣味である登山道にお金を出せない」という声があるといっておられたのですが、確かに、アウトドアという側面だけがクローズアップされると、そういう意見も出てくるかもしれません。

でも、登山道が荒れ、土砂が流出、希少な植物が消える。いずれは、ふもとの人間の営みにも影響を及ぼすことになります。山と海がつながっている‥という話を皆さんもご存じだと思いますが、山の環境崩壊は、登山をしないから関係ない!と切り捨てる人間たちの営みにも影響が出てきます。水、農業、漁業、それこそ、森が破壊されたら、CO2の問題にもなると思います。

だからこそ、自然を知って、それを学ぶ必要もある‥と伊藤さんは考えておられました。雲ノ平山荘ではいろいろな分野の人(芸術家、学者、冒険家など)が滞在し、様々な視点で情報を発信しています。それは、多くの人に自然や、山のことを知ってもらいたいからこその活動のようでした。

寿庵でもいろんなイベントや活動をしていますが、それは大山を好きになってほしいからです。まずは山が好きになり、山が大事であるとわかることが小さな一歩だと思いました。それっくらいしかできませんが、山はとても大事なものだと皆が実感すれば、保全活動も活発になるでしょうし、各地で啓発されていくでしょう。そして、最後は国も動く大きなムーブメントになるはずです。

だからこそ、自分の活動を信じ、それがいずれ保全と結びつくと信じて、突き進みたいって思いました。これが、本当のサスティナブルで、SDGsだと思います。と、まぁちょっと大げさですけど、話を聞いてそんな気持ちになりました。

いやはや、広島へ行ったのに、お好み焼きも食べず。地道を走ったので、10時間も往復でかかってしまった‥。滞在時間は3時間。でも、すごく充実の広島滞在でした。

相変わらず、文面がなんだかまとまりませんけど、最後まで読んでくださってありがとうございます。

雲ノ平山荘のことはこちらをチェックしてください。

登山道整備のことはこちら

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