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【報告】腐界に生きている小さな世界をのぞき見~儚く可愛い変形菌ワールドを探検します(4/6~7)

週末変形菌の勉強会を行いました。かなりマニアックな世界だと思われるでしょうが、変形菌はとても身近なものだと気づかされ、驚かされます。庭、鉢植え、公園、普段歩いている道路沿いなど、そんなところに存在する変形菌(粘菌)の世界をのぞき見しました。報告はいつも変形菌勉強会のサポートしてくれる立石さんからです。※実際の報告はかなり詳細に記録してありましたが、その中からいくつかピックアップして、Noteに公開します

知りたい!学びたい!大人たち。参加者16人が好雪性変形菌の観察会に集まる

大山のルリホコリを見てみたい!初めての人も、すでに変形菌の沼にはまった人も、高橋先生を講師とする一泊2日 の好雪性変形菌観察会に参加してくれました。

講師の高橋先生

まずはスライドで、初歩の部分「変形菌の生態」の話から、かなり専門的な「分類・同定」の話。そして、子供のころにやったであろう「プレパラート作り」の作業の話まで。

初めての人は戸惑ったでしょうが、参加者の皆さんは変形菌に興味を持つ方。高橋先生が言うには、みなさん『変形菌な人たち』ですから、知的好奇心がメキメキと芽生え、顕微鏡を前に真剣なまなざしになりました。

初参加の5名の方も一緒に、準備した変形菌の標本でプレパラートを作り、実際に顕微鏡で構造を確認していきました。

同定(自然科学で分類上の所属を決定すること)のポイントは、まず見ることです。肉眼で、単子嚢体型?屈曲子嚢体型?着合している?などを確認し、次にルーペで大きさ、色、形を確認。それから実体顕微鏡で子嚢の斑紋など 確認し、そして、プレパラートを作り、生物顕微鏡で胞子、細毛体、柄の内部構造などを確認する。実体顕微鏡と生物顕微鏡を準備したので、研究室さながらの光景が宿の食堂に広がりました。

今回の観察会は、ただ変形菌をみて「かわいい」で終わるのではなく、そのものを『同定』し「何なのか??」と深く追求することでした。同定するといっても、今回は、生物の分類のヒエラルキーで 「目」までが出来るようになることです。

ヒエラルキーとは分類階級のこと、界を一番上として、次に門・綱・目・科・属・種とわけて、一番細かい分類は「種」になります。

そして夜になる‥大人の観察会「好雪性変形菌のお話」

ちょっとお酒をのみながら、今回の目的「好雪性変形菌」の話になりました。変形菌のライフサイクルや好雪性変形菌の発生の分布。そして変形菌とも密接に関係しているであろうこの大山のブナの原生林が半世紀後には温暖化の影響で消滅するのではないか‥という話にまで広がりました。つまり雪が降らなくなると好雪性変形菌の発生はきっと無くなり、大山では今後、好雪性変形菌は絶滅するかもしれません。

この観察会を何年も続けていくこ とで、大山の変形菌の推移を追い、地球温暖化の指標となり、皆が「このままではダメだ!」と気づいてもらうことのできるモデルになればいい。それが、観察会の本来の目的です。

好雪性変形菌「ルリホコリ」

夜学はおいしいお酒とともに談話会へ、夜が更けるまで続きました。きっと夜の間、ルリホコリの変形体は這い周り、雪解けの地で立ち上がり、美しい構造色を持った子実体へと変化をしていたことと思います。

好雪性変形菌とは、3か月近く根雪のあるエリアに発生する雪が好きな変形菌のことです。

2日目 奇跡の晴れ!

雨の天気予報から晴れに変わりました。宿から残雪のある場所を求め移動。鳥、植物、キノコなど自然に詳しい参加者のみなさんに、目的地へ行く道中もいろいろな話を聞け、とても豪華な観察会になりました、1時間ほどの遊歩道歩き目的地へ。なぜこの地に沢山の好雪性ルリホコリがいるのか?みなさんにまずは考えてもらう。

あ、いる!

前日に勉強した条件のそろう場所をみると「あったあった!」とあちこちからみなさんの歓声が上がりました。ルリホコリの仲間と、ハイカタホコリ、なんとヤマケホコリの未熟体も見つかりました。

今回観察会で一部採取することは許可を得て行いました。

最終段階‥採取した変形菌の同定作業

野外活動から戻り、実体、生物顕微鏡5台ずつの本格的な同定を、前日覚えた方法でプレパラートを作り、分厚い図鑑を見ながら確認をしていく。

研究室さながらの宿の様子
まずは実態顕微鏡でのぞく
次に、生物顕微鏡で細かい胞子を確認し専門書と照らし合わせる

まずは好雪性?軸がある?胞子嚢に斑紋がある?ない?胞子は明るい?棘?網目?細毛体は明るい? 暗い?先は淡い色?などの工程を経て、今回の好雪性ルリホコリはザウタールリホコリと同定しました。

最後に‥大山の大切な自然を守りたい

大山だけではなく地球の生態系を守りたい。
人中心ではなく、全てが平等に暮らしやすい地球に。
変形菌を通して見る地球をこれからも見ていければ幸いです。
今回はご参加ありがとうございました。
今後も観察を続け、
自然界が教えてくれる地球の変化を感じ取ることが大切だと思っています。

今回、立石さんには、高橋先生とともに観察会を行う上での下見や準備を行っていただきました。ありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。

次は6月15(土)~16日(日)を予定しています。
夏の変形菌は多種です。
目、種によって住む場所も違い、内部構造も違います。
見てみませんか? 
そして今回見つけた好雪性の基物(食べ物)はなんだったのか、夏に確認に行きませんか?参加お待ちしています。

寿庵のHPはこちらをクリック!

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