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つむじまがりの女の子 day58

5/10 (Fri.)
#66日ライラン day58

子どもの頃に好きで読んでいた本を、また何度も読み返している。

ヘッダー(本の表紙絵)とタイトルで、何の話か分かる方もいらっしゃるだろうと思う。

◯女の子
◯お庭
◯閉じられた(開けられようとしている)扉

もう少しヒントを出すと、
◯イギリス
◯女性作家
◯(作者の他の代表作は)小公女セーラ


という訳で(?)

もう何度目か分からないけれど、バーネットの「秘密の花園」を読み返している。


私が慣れ親しんできたのは、福音館書店から出ている、猪熊 葉子 訳、堀内 誠一 画  の版。

なかなか進まないのだが、子どもの頃から読み親しんできた猪熊さんの翻訳のことば一言一言を懐かしく思い返しながら、行ったことのない、イギリス ヨークシャーの荒野ムーアの景色を想像しながら、読んでいる。

イギリス植民地時代のインドに暮らしていたメリーは、両親を病気で失い、突然、イギリスに住む伯父の屋敷に引き取られることになる。
お金や物に不自由のない暮らしをしていたメリーだが,政府の仕事をしていた父や美しい母からは、親子の細やかな愛情をかけられることもなく、わがままで気むずかしい「つむじ曲がりのメリーさん」に育っていた。


前にも書いたが、本当に優れた児童文学作品は大人が読んでも面白いし、大人になったからこそ、物語に込められたテーマや背景にいろいろ気づけることもあると思っている。


「秘密の花園」もそうだ。

まず、この主人公の性格。
主人公のメリーは、インドにいた時には召使や乳母が何でも彼女の世話をするのが当たり前として過ごしていた、人の気持ちなど考えない、いばりくさった女の子。

大体いつも不機嫌だし、周りの人は自分の言うことを聞いて当たり前。自分がしんどい時には、周りも皆同じくらいしんどければいい、と思って憚らない子だった。

「メリーはよくほかの人たちをいやな人だと思いました。しかし、自分もそのひとりだということは考えませんでした」。

子ども向けの本の主人公で。
なのに、ひねくれ者で,嫌われ者。
突然両親を亡くして、気の毒な境遇になるけど、そのせいでいじめられたり虐げられたりする訳ではない。彼女が周りとうまくいかないのは、他ならない彼女がいやな子だからだ。


赤毛のアンみたいに、持ち前の明るさと空想力で読者の共感を得たりしない。
ハリーポッターみたいに、勇気と誇りで道を拓いていったりもしない。
そもそもメリーは、その年齢まで実親と一緒にいたのだが(美しいお母さんを遠くから眺め、憧れてはいたものの)、優しい愛情をかけられた経験もない。


メリーは、人に優しくすること、人への情愛の気持ちの抱きかたを知らない。

でも彼女は変わっていく。


イギリスの古い古い屋敷に仕えている、方言丸出しの、飾らない気立ての良い女中 マーサと出会い、
これまた飾らぬ気質で無愛想、性格はメリーとそっくりな庭師 ベンと出会い、
コマドリと出会い、マーサの弟ディッコンと出会い、いとこのコリンと出会うことで、どんどん本来の、素直で、好奇心旺盛で、生き生きとした女の子に変わっていく。

外の風を浴び、春になり緑の芽をつけていく草花に囲まれ、生きる力を取り戻していく。

「あたしもさびしいわ。」メリーはいいました。
気むずかしかったり、おこりっぽかったりするのは、ひとつにはさびしいせいだということが、これまでメリーにはわかっていませんでした。コマドリが自分を見つめたり、自分もコマドリを見ているうちに、メリーにはそれがわかりかけてきたようでした。

「秘密の花園」猪熊葉子 訳 4章 マーサ より

「あんなきれいなもの見たことないわ!きたのよ!あたし、この前の朝もきたのかな、って思ったんだけどね。まだほんとにきたんじゃなかったのよ。きたのよ、ほんとにきたの、春がきたのよ!」(中略)

メリーはさっと窓にかけより、ぱっと窓を押しあけました。すがすがしく、暖かな空気が、かぐわしい香りが、小鳥の歌が、流れこみました。

「秘密の花園」猪熊葉子  訳 19章 春がきた! より 



物語後半の方の文を引用したが、私は実は、今まだ、17章を読んでいる。
メリーが、いとこのコリンと大げんかして啖呵たんかをきるところ。
普通の優等生の主人公なら思いつきもしないような言い方で、病弱で長いことベッドにいるコリンに、づけづけと遠慮なく文句を言うところ。


当人たちはとっても真剣で、
なのに想像するとなぜかおかしくて、
そして同時に涙が出てきそうになる。

二人とも、いろいろあって、幼い時から親からも周りからも、充分に愛情をかけられずに育ってきた。

でも、今、生きている。

他者と出会い、自分と向き合おうとしている。



私はこの本を読むたびに、

人の成長には、人との関わりが不可欠であること、
幾つになっても、いつからでも、人は変わっていけること、
そして、花や草、太陽の光、風、虫や鳥たちの自然との関わりが、どれだけ人を健やかにしていくかということに、何度でも感動せずにいられない。

58日まできましたよ!
(自分なりに)頑張ってる。でも何より、楽しいよ。


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