15年前の満員電車のストレスに関する研究

遡ること15年前 満員電車とストレスの研究が行われた

2005年 10 月。国土交通省 国土交通政策研究所客員研究官らの研究チームはユニークな研究を発表している。


 その名も「国土交通政策研究 第 55 号 交通の健康学的影響に関する研究Ⅰ 」

 我々日本人、とりわけ都会に住む人間にとって満員電車は避けて通れない訳だが、この研究から既に15年以上経つというのにやはり避けて通れない日常だ。

満員電車のストレスは果たしてどのようなものかをまとめたものがこの研究である。

他の交通手段による研究もあるのだが、今回は通勤ラッシュに関係する項目をかいつまんでまとめてみる。

平成15年度調査について
(鉄道利用時における通勤ストレス調査)

① 通勤ストレスは混雑度合いが激しいほど増加する。
② 通勤ストレスは総乗車時間が長くなるほど増加する。


具体的に見ると次のような傾向が指摘できる。

① 通勤ストレスを「強く感じている」(13%)と「少し感じている」(56%)の合計は全体の 69%を占める。
② 普段の混雑度合いとの関連では、「強く感じている」「少し感じている」は混雑度合いが激しくなるほど増加し、「あまり感じていない」「どちらともいえない」は普段の混雑度合いが 150%を超えると急激に減少する。
③ 総乗車時間との関連では、40 分を境に「あまり感じていない」「どちらともいえない」が急激に減少し、「少し感じている」が急増する。

朝の通勤における鉄道利用時のストレス等について、アンケート及び生理学的指標による調査結果から以下のようなことが推測された。
アンケート分析から得られた知見は次のとおりである。

① 普段の被験者の属性、勤務状況に関して、主観的ストレスと被験者の属性、勤務状況の各指標には有意な関連性が見られなかった。
② 通勤状況の各指標と主観的ストレスの相関分析から、主観的ストレスは混雑度合いが激しくなるほど増加する、主観的ストレスは総乗車時間が長くなるほど増加する、という有意な関連性が見られた。

生理学的指標分析から得られた知見は次のとおりである。


① 混雑度合いが大きくなると、交感神経活動(アミラーゼ活性)が高まるほか、潜在的ストレス対応力(17-KS-S/CRE)の低下などが見られた。
② 慢性疲労に関連する指標(アシルカルニチン)と総乗車時間との間に関連が見られた。
③ ある程度の非乗車通勤時間がある場合、交感神経活動(アミラーゼ活性)が落ち着いている傾向が見られ、また、自然免疫(NK 細胞活性)が高い値を示した。

今回の調査は都内に勤務している 40 歳~50 歳の特記すべき疾患のない男性を対象としたものである。

ストレス等と生理学的指標との関連については、いまだ完全に解明されていない部分ストレス等と生理学的指標との関連については、いまだ完全に解明されていない部分もあり、実用的な指標として用いるためには今後の学問的進展を待たねばならないとこもあり、実用的な指標として用いるためには今後の学問的進展を待たねばならないところもある。

また、単にストレス低下が望ましいという立場からではなく、適度なストレスは人が生活する上で不可欠という視点も重要となろう。しかしながら、少なくとも今回の調査結果から、交通機関利用時のストレス等が医学・生理学的手法により客観的に表現され得ると考えられた。

平成16年度調査について
(鉄道利用時における通勤ストレスの週内変動に関する調査

金曜日に 17-KS-S(潜在的ストレス対応力)が高まっている傾向が見られた。また、金、月曜日にアミラーゼ活性(交感神経活動)が低い傾向にあり、17-OHCS(日常ストレス度)も金曜日に低い傾向があることから、金曜日の通勤者はストレスに耐え得るほど元気(ストレスに対する抵抗力が高く、ストレスを感じにくい)と言えるかもしれない。 

休日に睡眠がとれると、日曜日の夜から月曜日の朝にかけて 17-OHCS (日常ストレス度)は低下するが、火曜日には上昇している。一方、土日に睡眠が十分にとれないと月曜日の朝の 17-OHCS(日常ストレス度)は上昇している。

 混雑通勤している人の方が、金、月曜日の 17-KS-S(潜在的ストレス対応力)が高い。混雑通勤がある種のトレーニング効果を持ち、通勤ストレスに対する抵抗力を高めている可能性が推測される。

 土日をほとんど外出せずに過ごした人は、月曜日に 17-KS-S(潜在的ストレス対応
力)が回復している。しかし、全体的な傾向としては、外出をした人の方が 17-KS-S
が高いので、休日はアクティブに過ごした方が抗ストレス性を高める可能性がある。
39 歳以下は、月曜日にアミラーゼ(交感神経活動)が低下している。 

 今後の検証が必要であるが、総通勤時間が 1 時間~1 時間 30 分の人は乗り換えをす
ることにより、アミラーゼ活性(交感神経活動)が著しく下降している。乗り換え
で歩くことが通勤ストレスの低下につながる可能性が推測される。

満員電車について研究結果を発表している組織

・国土交通省 (出典 国土交通政策研究 第55号 交通の健康学的影響に関する研究Ⅰ)

学生目線のユニークな研究

・品川女子学院


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