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大吉堂読書録・2024年1月

『虹いろ図書館のへびおとこ』(櫻井とりお)
再読。イヌガミさんに会いたい!!と思い、ガガガと一気読み。
イヌガミさんの子どもとの距離感や仕事に対する姿勢などが好きです。憧れでもあるかも。
色々思うところがあり、その気持ちを再確認するために会いに行きました。この作品が好きなのです。

『屍竜戦記』(片理誠)
竜に抗うため竜の屍体を操る術を見出した人間。
宗教対立、国同士の政治的駆け引き、圧倒的な竜の猛威、何のために戦うのか。救いのない鬱々とした終焉かと思われた、最後の最後に訪れる解放。その全てが美しく魅入られる。
途中のミステリ的趣向にもニヤリとさせられる。

『C&Y地球最強姉妹キャンディ 夏休みは戦争へ行こう!』(山本弘)
最強の頭脳と運動能力を持った姉妹の痛快空想科学冒険活劇! 
メカとアクションてんこ盛り、快活で爽快な物語だけどそれだけじゃない。「戦争」を児童書体裁ならではに、真正面から堂々と書き切る手腕も素敵。
今からでも是非アニメ化してほしい作品。

『妖怪少年の日々 アラマタ自伝』(荒俣宏)
アラマタさんの自伝ですよ。そんなの面白いに決まってるじゃないですか!
幼少期からの思い出を語りつつ、縦横無尽に話が広がり横道に逸れまくる。
あらゆるものに関心を寄せ、あらゆる知識を貪り得る。正に博覧強記。こうなりたいと憧れるのです。

『なぜ怪談は百年ごとに流行るのか』(東雅夫)
200年前の江戸文化文政期、100年前の明治大正期、そして現在(執筆時の平成期)での怪談ブームについて作品を挙げながら語られる。そのため怪談ブックガイドともなり、読みたい本が無限に増える。
特に近代文学に於ける怪談が興味深かった。

『図書館の殺人』(青崎有吾)
パズルゲームの極地であり青春小説でもある。ミステリ部分では人物は推理のためのピースとなり、物語部分では人物の心の動きを描く。その両サイドにメインキャラクターのふたりを配しているから、どちらの要素も屋台骨となる。
探偵役の天馬が気づかなかったある人物の行動理由を、横で柚乃がスルリと口にする。立つ位置が違うから見えるものがある。
そのふたりが今後どう接近して交差するのか。接近することで何が起こるのか。それを見たいので、続きが出てほしい。

『女子読みのススメ』(貴戸理恵)
女性作家による女性が主人公の小説を読み解き、今を生きる少女たちの生きづらさや葛藤を浮き彫りにする。
教室、恋愛、家族、大人をキーワードに導き出されるものは、どうしようもない現実。しかしその先には希望もあることも示唆する。その力が小説にはある。

『〔少女庭国〕』(矢部嵩)
脱出できるのは一人だけ。デスゲームであり、シチュエーションノベルであり、文明勃興記であり、青春小説であり、実験小説であり…百合でもあるのか。
無限に増殖する少女。殺すか殺されるか死ぬか生きるか。不条理を超えた先にある感慨。ともかくとんでもない作品。

『大正箱娘 怪人カシオペイヤ』(紅玉いづき)
開けぬ箱も閉じれぬ箱もないと言う少女。秘密を暴く怪人。実に外連味に溢れて楽しい。
そこに社会からはみ出た者たち、つまはじきにされた者たちの想いを絡ませる。
怪人と物語世界の謎がちらりと見えたところでおしまい。ああ、続き出てください!

『SF魂』(小松左京)
大SF作家・小松左京の半生を描く自伝。
作品創作時のエピソードだけでなく、放送作家、ルポライター、万博プロデューサーの顔も描かれる。
あらゆる物事に関心を持ち関わっていく、作家の枠に収まり切らない活躍は、そのままSFの持つ無限の可能性に繋がるのだろう。

『怪盗クイーンはサーカスがお好き』(はやみねかおる)
変装の名人怪盗クイーンに不可能はない。
いいですよねえ、大胆で派手好きでお茶目で確固たる美意識を持った怪盗。狙った宝石を横取りしたサーカス団との対決。
荒唐無稽に見えて、しっかりと筋の通ったストーリー展開にほれぼれします。

『まっしょうめん!』(あさだりん)
ひょんなことから興味も関心もない剣道を始める成美。そこにあるのは楽しさよりも戸惑い。理解できずやめようとも思った。でもまだ入口に立っただけ。続けることは自分で決めた。その展開が心地よい。
物事に真正面から向き合うことを剣道になぞらえて描く。

『きつねの窓』(安房直子)
少しふしぎな物語10編収録。幻想譚というべき美しくも切ない物語たち。美しく楽しいものに心躍らせるが、それは不意に失くなってしまう。しかしそこに残るのは哀しみだけでなく、ほんのりと温かいなにか。
物語の面白さを伝えてくれます。

『SF奇書天外』(北原尚彦)
戦後1940年代から90年代までの、奇妙奇天烈摩訶不思議なSF(とその周辺)作品がダダダダー!と紹介されるので、一気に読むとクラクラしてしまいます。
時にツッコミが容赦ないなあと思いつつ、気になる本が増えていくのです。古本屋に行く楽しみも増します。

『超短編!大どんでん返し』(小学館文庫編集部・編)
2000字に仕掛けられたどんでん返し。ミステリの解決シーンのいいとこ取りだったり、短いからこそ仕掛けられるネタだったり、ラストで一変する世界が見られたり。
なにせ作家陣が豪華なので、様々な仕掛けが楽しめます。

『学校司書のいる図書館に、いま、期待すること』(読みたい心に火をつける!実行委員会)
出版トークイベントの内容をまとめて、学校図書館の意義や魅力を伝える。
みんなが本の話をしたら、みんな本を読むようになる。面白い本を独り占めせず人に伝えて、人と本を繋ぐ。それらの提言が素敵で面白い。

『こぐちさんと僕のビブリアファイト部活動日誌2』(峰守ひろかず
実在の本が出てくる物語は楽しい。しかも児童書とライトノベルという何とも僕好みで尚更嬉しい。
変わりたい自分と変わることへの恐れ。隠れオタクや引っ込み思案な登場人物が、「好き」を表現することに共感し心熱くする。

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