マーケティング施策のリサーチデザイン

社内インターン生用。

基本的にマーケティング施策って、小さな改善の繰り返しなので、DOをいかに増やしつつ、いかに成功確率を上げていくかが大事のわけであります。

一方で、どうしてもこの改善速度は個人の力量によって、大きく左右されてしまうことが多いです。

そこでこのnoteでは、マーケティング施策を行う上で、改善をどういうふうに進めたらいいかについて解説していきます。

マーケティング施策のPDCAの回し方は、以下の流れで進めます。基本的には、社会学や心理学のリサーチとやり方は一緒です。

1. Background Research: 背景の確認
2. Objectives and Hypothesis: 目標と仮説
3. Methods: 施策の詳細と検証方法
4. Result: 結果
5. Implication:示唆、この結果から言えること

Background Research: 背景の確認

アカデミアの場合、社会・研究に役立つ、新規性の高い知見を得るうえで、過去の文献を調べて、「何がすでに言えているか」「何がまだ不明なのか」を明確にするプロセスを表します。

マーケティング施策の場合だと、ビジネスでインパクトを出すために、「何が効果のある施策なのか」「何が効果のない施策なのか」の仮説を立てるために、施策を打つ前の情報を調べることになります。

このフェーズでの注意点を書く。

1. 車輪の再発明がないよう、先行研究を怠らない

ネットで調べればわかるようなこと、過去のデータを見れば分かることを検証するのは時間の無駄です。

まずは、先人の研究や施策、データを振り返ることが重要です。

実験の新規性もそうだけど、誰かがやったことを再度仮説検証することを、車輪の再発明といいます。

車輪の再発明は、もうわかってることを再度調査することなので、同じ結果が得られるだけです。なのでここに時間を使わないようにしましょう。

過去の先行研究をしっかりと調べることで、無駄な施策を打たなくて済みます。巨人の肩に乗ることを意識しましょう。


2. 極力二次情報ではなく、一次情報を取得する

ネットに書いてあるマーケティングの情報は、正直ほとんど

・ケースバイケースの結果なので、応用可能性が低い
・情報が古く、現状のプラットフォーム適性に合わない
・書き手が実務やっていない、素人なので、参考にならない

ことがほとんどです。

なので、事実として鵜呑みにしないようにしましょう。では、どういう情報を集めれば良いのか。信頼性の基準としては、

・他社のやった施策の結果
・自社のやった施策の結果

をそのまま見てみるのが良いです。

ちなみにイケてるマーケターは、この一次情報取得能力が超高い傾向にあります。とにかく横のネットワークを持っています。なので、代理店や他社のマーケの知り合いをなるべく多く作って、最新の生の情報を得られるようにすることが非常に重要です。

もし難しければ、特に実務で最先端の人をフォローしたり、実際に試行錯誤した結果などをまとめている有料noteを買うなどして、とにかくエビデンスを集めることがすごく大事になります。

余計なDoを減らして、本当に検証すべきことに時間を割くこと、それがリサーチで重要になります。

情報をしっかりと事実と解釈で分けて理解する

「~するとSEOで上位表示されるらしい」みたいな言説があった時に、まずファクトをちゃんと見ることが重要です。書き手はただ周りが言っていることをそのまま信じ込んで書いているだけかもしれないです。

基本的に他人の解釈をトレースすることは意味がないのでやらない。解釈をもとに、「本当にそうなんだろうか」と事実にフォーカスしてリサーチしましょう。具体的には、Ahrefsなどを駆使しつつ、競合の順位などを見ていきましょう。実際、専門家が口で言っていることと、成果につながっていることが乖離していることは非常に多いです。

解釈を鵜呑みにしないこと。解釈をもとに、定量、定性的に、しっかりと事実をトレースしていくことが非常に重要になります。

Objectives and Hypothesis: 目標と仮説

Background Researchから得られた情報から、成果に結びつくような仮説を考えます。この際に重要なことを記載します。

1.ビジネスへのインパクトが高い仮説を立てる

一番失敗するのが「検証できたとしてもビジネスインパクトがほぼない」このパターン。

例えば、SEOで記事をリライトする場合「記事の文字をひらがなにすると、読みやすさが上がる」みたいな仮説を立てたとしましょう。

この仮説を立てたとしても、検証する際に困るでしょう。

なぜなら、「読みやすくなった結果、ビジネスにどう影響するのか」という観点が抜けているため、結論として「読みやすくなったね」としか言いようがないからです。

なので、仮説の段階でまったくよいImplicationが出てこない設計になってしまいます。そもそもこの仮説検証自体がほぼ意味がない状態です。

やるなら、「離脱率改善を通してCVRをこれくらい改善するために、可読性を上げる」の方がよいでしょう。ビジネスインパクトにつながる数値を設定しましょう。

また、そもそも可読性を上げたとして、それが売上につながるのか?という視点も抜けています。例えばPV数が1000の記事で可読性を上げることでCVRが0.01%上がっても、ほぼ誤差としか言えないでしょう。

2. 定量的に検証可能な仮説を立てる

同じ例で、「記事の文字をひらがなにすると、読みやすさが上がる」みたいな仮説だと、定量的に検証できません。

「読みやすさ」って何?それはどうしたら読みやすくなったと言えるの?という質問に答えられないのです。

正しくは、「可読性を上げることで、離脱率がN%へり、さらに内部リンククリック率がN%以上上がる可能性があるのではないか」みたいな感じにすると検証できます。

何を目的にしているのかは、数字で話せるようになりましょう。

Methods: 施策の詳細と検証方法

次に具体的な施策内容と、検証デザインを考える。その時の注意点を記載する

1. 誰がどう見ても再現できるような、厳密な施策プロセスを記述する

後から見て、具体的に何をしたのか分かるように書きましょう。

使う言葉が曖昧だったり、プロセスが非常に不明確な場合、次につながらないです。

たとえば、SEOで順位を上げる際に、「タイトルを変える」があるとする。でもそれって、どう変えたか(HOW)、なぜか得たか(WHY)が全く分からないですよね。

2. 仮説にしっかりと紐づいた施策を打つ

Background Researchの結果と、施策が乖離しているパターン。上記の例もそうだけど、なんでそのタイトルを上げることがビジネスインパクトがあるのかが不明なので、のちほど分析する際に、「これ検証して結局どうすんだっけ」ってなります。

Result: 結果

効果測定のフェーズ。ここに関してもコツがあるので、まとめる。

1. 定量的に記述する

「順位が上がった」とかではなく、「N日前から+N位上がった」などと記載する。あと、それは測定の誤差ではないのかも明確にする。例えば、毎日+-3位の変動があるようなもので、たまたま+の時に上がったみたいな報告をしないこと。

2. データの出典を記載する

誰がどう見ても同じ解釈にできるように、データの出典も記載する。Google Analyticsなのか、Search Consoleなのか、GRCなのかなど。

事実をしっかりとチームで共有しないと、改善の方針が決められない。まずは事実の認識がしっかりとできる基盤を作ることが重要。

3. データの制約条件(Limitation)を記載する(もしあれば)

データを解釈する際に、妨げになるような制約条件を記載する。

たとえば、「X日にサーバーエラーがあり、順位が下がってしまいました」など、解釈がずれる可能性があるものに関しては、しっかりと記載する。

Implication:示唆

一番大事な個所。すべてのリサーチデザインは、ここで重要な示唆を得るためにやる必要がある。というか、すべてのリサーチデザインは、このImplicationから逆算して作成するべき。(この仮説を検証した結果、どういうメリットが得られるかから仮説を立てること)

1. この施策から得られた知見を記載する
2. うまくいった場合は横展開を考える
3. うまくいった場合は、やらないようにする

前提として意識すること

・曖昧な表記は使わない。誰がどう見ても同じことが再現できるように記述する。
・結論から記載する。肉付けは具体例として書く。
・学習がない施策は、やってないのと同じなので、失敗も含めてきっちり検証すること

リサーチデザインのチェックリスト

Background Research

[]その参照している情報は、解釈ではなく事実ベースで記載されていますか?ファクトはありますか?
[] その情報を書いている著者は、実務をちゃんとやっている人の知見ですか?
[] その情報は古くないですか?

Objectives and Hypothesis

[] その仮説を検証した結果、ビジネスへの貢献度はありますか?
[] その仮説は、すでに検証されている施策ではありませんか?

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