原点回帰の1年に②「居酒屋で亡き親友と語り合う」
昨日の投稿の続き。
カウンセリングクラスで参加者の方にしてもらったカウンセリングによって僕の気持ちは大きく変化しました。
短い時間のセッションでしたが、カウンセラーとの関係性が良かったし、アプローチがその時の自分にあっていたことが大きかったと思います。
ちなみに昨日の投稿で紹介したアプローチはかなり本質的でおすすめです。
①自分の中にあるネガティヴな感情や思考にアクセス
②それが求めているものをイメージ上で十分に満たす
③満たされたあとに、それが求めるものに気づき、それも満たす
④究極に望んでいるものにたどり着くまで③を繰り返す
NLPのコアトランスフォーメーションなども中心部分はこれですね。しっかりとイメージワークができると劇的な変化が生まれます。何ヶ月とかかけて行われるセッションを一度にやってしまうようなものなので。。。
で、その日はセッション後、参加者と検討会をしたり、同じワークをそれぞれがやってみたりしながら、終わって行きました。
懇親会になり、そこでも僕が受けたセッションに関してコメントをもらったり、質問を受けたりしていました。その中で僕が
「彼にポジションチェンジしてみたかった」
と漏らしたことを逃さず今度は別のカウンセラーが「だいじゅさん。もしよかったら今、座ってみませんか?」と声をかけてくれました。
※居酒屋などでセッションをすることには否定的な意見があることも承知していますが、今回はクライアント(僕)がお願いしたということでご理解ください
ポジションチェンジというのは、ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズが生み出した技法です。自分の椅子と相手のため椅子(空椅子)を置いて、あたかもそこに相手がいるかのように話しかけたり、相手の代わりに相手の椅子に座って喋ったりするものです。
誰かが亡くなった場合、残されたものにはいくつかのことが起こります。ここでは①人間関係の消失②未完了感による効力感低下の2つを考えてみましょう。
①人間関係の消失。例えばお父さんが亡くなることは、お父さんを失うことだけではなく、お父さんとの「人間関係」がなくなることです。それはお父さんの子で自分もいなくなってしまうことにもなりかねません。
人はそれぞれの相手に違う顔を見せて生きています。だから例えば、お父さんといるときにだけ見せている顔があるのです。お父さんがいなくなると、その自分も出てくる場所を失います。だからその意味では自分の一部分を失うような体験でもあるのです。
このときにもポジションチェンジは効果的で、しっかりと相手をイメージして言葉を伝え、そして相手の椅子に座って相手の言葉を感じて、声にしてみる。その声にリアリティを感じることができれば、肉体的には亡くなったとはいえ、心理的にはつながりを再び感じることができるわけです。
②未完了感による効力感の低下。人が亡くなったとき、残された人は「もっとこうしてあげれば良かった」「どうして頼ってくれなかったのか」などと未完了感を感じることもあります。そしてそのことによって自己効力感「わたしはできる」が低下したり、他者への信頼感「人は信頼できる」が低下したりします。
ミリオンセラー『嫌われる勇気』でも言われているようにアドラー心理学では「わたしはできる」「人々は仲間である」と思えることが重要と考えています。
大切な人を失った際に、これらの効力感や信頼感が低下してしまい、生きていくことに勇気を持てなくなったりすることも起こり得るのです。
ちなみにこのケースでもポジションチェンジは役に立ちます。自分が本当に伝えたかったことやその奥にある想いを伝え、相手の椅子に座って相手の心の奥底にあった気持ちに触れることで、お互いに理解が進み、未完了感が解消されることがあるのです。
解説はここまでにして、居酒屋での提案に話を戻します。
そんなわけで、深夜の居酒屋の10人テーブルで、第2回目のカウンセリングセッションが始まったのです。
カウンセラー(1回目とは違う人です)は自分の座っていた椅子から立ち上がって、僕の横に座りました。そして目の前の空いた椅子を指差しながら
「だいじゅさん。この椅子みて。もし今、彼がここに座っていたら。。。一番言いたいことは何ですか?」
ときいてきたのです。ゆっくりと落ち着いた、でもとても力強い声でした。
色々な言葉が僕の頭の中を駆けめぐりました。
「どうして?」「悲しいよ」「相談して欲しかった」「声かけなくてごめん。友達なのに」「ようやく解放されたのかな?」「よくやったね」「おつかれさま」
どれもその通りなんだけど、何か違う。。。どれくらいの沈黙だったろう。あ、そうか。。。
「ありがとう」「本当に出会えてよかったよ」
言うと同時に涙が出てきた。ありがとうが言いたかったんだ。この人生で会えて良かった。尊敬できる友達。お互いに認め合っていた。
カウンセラーも静かに泣いていた。そして「そっか。。。。。。あとは?」
僕「もっと仲良くしたかった。いろんな体験を一緒にしたかった。もっとたくさん話したかった」「俺のこと、良いと言ってくれてありがとう。すごく自信になっていた。心から言ってくれているのがわかったから」
カウンセラーはただ横にいてくれる。僕の背中に優しく手を置きながら、僕が話し続けるのを励ましてくれている。
僕「もっとお前の力にもなりたかった」
そして、もう一つの言葉が出てきた。少し気恥ずかしかったけどそのまま言った。
僕「お前のこと。好きだったから」
あー。。好きだったんだな。だったらもっとたくさん時間を取れば良かったよ。本当にそうすれば良かった。でも言えた。できたら生きているときに言いたかったけど。
生きているときに言ったらどんな反応してたかな。ちょっと照れながら、でも「僕も好きですよ」とか言ってくれたんじゃないかな。そうしたらもっと違う関係になってたね。もっと遠慮せずに色んなこと一緒にやってたんじゃないかな。。。
じっと横にいてくれたカウンセラーが僕に問いかける「。。。。あとはどうですか?」
なんだろう。あと、彼に伝えたいこと。そうか
僕「がんばるから。みんながやりたいことやれるように。。。諦めないから」
カウンセラー「だいじゅさん。どうだろう。。。言えた?本当に言いたかったこと。。。」
言えたかな。言えたような気もするけど。。。なんだろう。。。
彼がしてくれたことはたくさん残っているし、彼がしたかったことは続いている。。。そうか
僕「本当によくやったな。ゆっくりしてて。俺もできる限りやるから、見守っていて欲しい。。。本当にありがとう」
言えた。。。自分の中で、そんな感覚があった。
このタイミングで「ここまで話してみてどうですか?」とカウンセラーが聞いてくれた。
僕は少し冷静になって、ここまでを振り返りながら答えた。
僕「まず感謝したかったことに気づいてびっくりしました。悲しいとか、なんで?とか言いたいのかと思っていたので。あとは、やっぱりあいつもベストを尽くしていたんだなと思えたし、ここからは自分がやる番だ。と思えました。。。。彼への想いを言葉にできて良かったです」
カウンセラー「それは良かったですね。。。じゃあ、彼の椅子にも座ってみましょう」
うわぁ。。。そうだよな。座るよな。もう自分の中では完結したし、なんか少し怖い気もしてるし、座らずに終わってもいいな、とか思っていたけど。。。そりゃあ座るよな。。。。
カウンセラーは静かに待っている。意を決して立ち上がり、目の前の彼の椅子に座ってみた。そして背筋を伸ばして、そっと深呼吸をした。伸びた背筋の中に彼の心が入ってきて、いつもの彼の笑顔に向かって顔の筋肉が動いていく。
カウンセラー「ようこそ。だいじゅさんの声をきいてくれますか。本当にありがとう。。。ですって」
その瞬間、さまざまな感情とともに過去の色んな出来事がフラッシュバックした。
それに気づいたのかカウンセラーは「ゆっくりでいいですよ。。。ゆっくり。。。そしていま言えることだけでも」
彼(僕)「はい。。。そんなふうに思ってくれてたんだ。嬉しい。実は何度も相談しようと思ってたんだ」
僕の中から『彼の言葉』が出てくる。なんどやっても不思議なんだけど、しっかりとした手順を踏めたら、心の奥から言葉がどんどんと湧いてくる。心も動くし、言葉も出てくる。それをちょっと冷静にきいている別の自分もいる感じ。
彼が言ってくれた「何度も相談しようと思った」には、救われた。実際に相談してもらいたかった。だけどしなかったにせよ、したいと思っていてくれた。そのことにリアリティを感じ、僕たちの繋がりを再び感じることができた気がする。
彼(僕)「でも自分で何とかできるし、しなきゃと思っていて」
そうか。きっとそうだよな。。。と思う。カウンセラーは僕の視界に入っていないけど、じっと集中している雰囲気が伝わってくる。
彼(僕)「。。。。だって色々と教えてもらっていたから」
はぁ。悲しいな。相談して欲しかったよ。。。でも気持ちもわかる。ここで
カウンセラー「どういうことですか?」
彼(僕)「彼とは友達だけど、同時に先生みたいな存在で、だから最後の砦みたいに思っていたし、自分でやれることはやらないとって。。。」
そうだね。そうしてたね。でももっと距離を縮めたかったよね。お互い。。。
カウンセラー「だいじゅさんに、なんて言ってあげたいですか?」
彼(僕)「ありがとうって言われて、救われた。。。。本当に苦しかったから」
カウンセラー「。。。。言えましたか?」
彼(僕)「。。。。。。。。。。」
なんだろう。。。他に。。。。僕の中から彼の言葉が出てくるのを待つ。。。長い沈黙。。。。カウンセラーはやさしくそこにいる。。。
彼(僕)「おんなじことがやりたかった。最初に会った時からそう思ってたよ」
ここで僕の感情が爆発した。そうか!!そうだよな!!うわーーーー。
涙が溢れ出て止まらない。カウンセラーもボロボロ泣いている。
俺。やれることやるから。。。見守っててな。。。。心の中で呟くと
「うん」という彼の声が聴こえた気がした
しばらくの沈黙の後、カウンセラーの声が聴こえた「言いたいこと言えましたか?」
はい。と答えると
カウンセラー「では。元の椅子に戻ってください。。。そこで改めて彼の言葉をきいてみてください。。。。。。どんな気持ちですか?」
僕「穏やかです。。。お互い頑張ったな。もっとコミュニケーションとれたら良かったけど」
カウンセラー「けど?」
僕「お互いに気持ちは繋がっているのを感じられたし、今から自分にできることがあるのがわかってよかったです」
カウンセラー「できることって?」
僕「彼と同じ想いをもって生きること。彼の周りの人とつながり続けること」
カウンセラー「。。。。他にもありますか?」
僕「。。。。自分のことを大切にすること。。。。」
そうか。。。その上でまたやろう。少し整理は必要だけど。。。原点回帰だな。。。個人セッションの募集をはじめよう。何年振りかな。。でも教えるだけでなく、コーチングやカウンセリングの現場に戻って、一対一での支援もしていこう。
仮にこれまでそれをしていたとして、彼が僕に相談してくれたかどうかはわからないけど、それでも、誰かが自分の人生を生きるために、もっと自分の時間を使おう。それがコーチ、カウンセラーである自分の原点だから。。。
この後も、もう少しだけ続いたのですが、2回目のセッションも居酒屋ということもあり、短時間のものでした。しかしこれまた僕の人生の中でも大切な時間となりました。
カウンセラーのもつ、静けさの中にある強いエネルギー、プロセスをシンプルに切り開く力。そして大きな愛に、僕と彼は包まれている感じでした。
23年はコーチング、カウンセリングを教えてくれた恩師の死去に始まり、人生についてや対人支援について思うことの多い一年でした。僕や僕の家族にも様々な問題が起こり、個人的にも苦しい一年でした。
ただ、そのおかげで、決して失われないものに気づくこともでき、コーチ・カウンセラーとしての原点に戻って再出発することができます。
24年はプロコーチ養成スクールやカウンセリングクラスだけでなく、一般向けのコーチング・カウンセリング提供も再開。出版などこれまで先延ばししてきたことにも腰を据えて取り組みたいと思っています。
今年もどうぞよろしくお願いします。
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