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実践事例 RESOLVEでコーチング

R コーチがリソースフルな状態でいること(Resourceful state)
E クライアントとラポールを築く(Establish)
S 目標を特定する(Specify)
O オープンマインドになってもらう(Open up)
L プロセスをリードする(Lead)
V 変化を確認する(Verify)
E エコロジーへの影響を確認して終了する(Ecological exit)

RESOLVEモデル

RESOLVEモデルがどんなもので、どんな効果が期待できるかは前回の記事でお話ししました

今回は、RESOLVEモデルを活用したセッションの一連の流れをお見せしながら、都度解説を入れていきます。活用のためにぜひ理解を深めてください

クライアントはアラフォー女性。仕事をしながら二人の子どもを育てています。周りからはよいお母さんと思われているようですが、長男へのイライラが止まらなくてなんとかしたいという相談でした

今回のケース

今回はセッションが始まる前から描写してみましょう

 オンラインセッションでしたが、コーチは10分前には机の前にいます。事前にトイレにいって、鏡で自分の表情をチェック。部屋の空気も入れ替えています。セッションで必要になるかもしれないもの(おもちゃの椅子、カード類、各種ワークシートなど)は手元に用意されています。 
クライアントが入ってきたら、笑顔で迎え「◯◯さん、こんにちは!今日は暑かったですね」などと声をかけ、すこし世間話を始めました。
クライアントが落ち着く様子を見て、コーチの安心感も増していきます

セッション前

コーチングに慣れてきても、可能な限り余裕をもってセッションに臨めるとよいですね。

環境の影響は大きいですから、空気を入れ替える。ライティングを調整する。アロマを焚く。いろんな工夫ができますね。

僕はある程度身体を動かした方が調子がいいので、ずっと室内に閉じ籠り切りにならないようにしています。食べた直後はパフォーマンスが下がりがちなので、直前の食事は軽くすますようにもしています。

これらは全て「R コーチがリソースフルな状態でいること(Resourceful state)」の役に立っていますね。

そして、クライアントを良い状態で迎えること、相手を気遣い相手の話を聴くことは「E クライアントとラポールを築く(Establish)」につながってきます


CO 今日は何が話せたらいいですか
CL どこから話したらいいのか。。。。
CO 話しやすいところからでいいですよ
CL 。。。。。5歳の息子へのイライラが止まらなくって。。。。。どうすればいいか悩んでいます
CO なるほど。。。イライラが止まらない。。ってどういうことでしょう?
CL 手を出すとかはないけど、最近些細な出来事でも声を荒げてしまうので
CO荒げてしまうので。。。
CLなんとかしたい

テーマ

このケースでは省かれていますが、守秘義務についてなどコーチングの事前説明をするのも良いです。いつも話していることを話すことで、コーチもペースを掴みやすくなりますし、的確に説明できればクライアントの信頼感も増してきます。

CO「話しやすいところからでいいですよ」

とありますが、「ゆっくりでいいですよ」「ご自身のペースでどうぞ」など相手のやりやすい形にしてもらう(相手のペースを尊重する)関わりは、ラポールにとって大切です。

コーチは、穏やかな雰囲気を保ちながら、相手のスピードやペースに合わせて関わっています

つぎの
CO 「なるほど。。。イライラが止まらない。。ってどういうことでしょう?」

の部分も否定的なニュアンスが出ないように、おだやかなトーンできいています

COなんとかしたいっていうのは?(具体化)
CLどうしてあんなにイライラするのか。。。
COイライラでなくどうなりたいですか?
CL穏やかに話がきけるとか
COとか
CL冷静に伝えられる
COそうなったら何が起きそうですか(予測)
CL。。。。息子もちゃんと話してくれそう
CO◯◯さんが望んでいるのはどんなことですか
CL息子とコミュニケーションがとれているというか。。。。お互い分かり合えてる
CO何を分かり合えてる?(具体化)
CL。。。お互いが望んでいること。
COおかあさんも息子さんも、お互いが何を望んでるかわかるようなコミュニケーションが取れている。その余裕もある(言い換え)
CLそうです
COではこのセッションではそこに向かうヒントが得られたら良いですか
CLはい。お願いします

ゴール

「S 目標を特定する(Specify)」に取り組んでいます。そのためにクライアントの「なんとかしたい」を具体化するところから始めていますね。

そしてクライアントの話を展開させていくことで「イライラしなくなる」のように否定形かつ抽象的なゴールではなく、肯定形で具体的なゴールをつくろうとしています

CO 変な質問ですが、あなたはどうやって自分をイライラさせるのですか
CL え?
CO 何を考えたり、何に意識を向けるとイライラするのでしょうか
CL 。。。。。息子が言うことを聞かなかったときのことを思い出したり、このままいくとこの後の予定が遅れるとか考えたり。。。あとはそもそも自分も仕事のことを引きずったまま家にいるので。。。
CO なるほど!ではその部分に何か変化が訪れたら、あなたはイライラではなく、穏やかにいられる可能性が高まる。。。
CL そうですね
CO わかりました。ではそのことに効果がありそうなことに取り組んでいきましょう

オープンマインド

つぎは「O オープンマインドになってもらう(Open up)」です。

CO 「変な質問ですが、あなたはどうやって自分をイライラさせるのですか」

ちょっと変な質問をするときは、このように「変な質問ですが」と前置きしたり「変な質問してもいい?」ときけばよいのです。

そして「あなたはどうやって自分をイライラさせるの?」と質問しました。

普通の人は、周りの影響でイライラさせられてると考えがちですが、主体論的な考えでは「自分でイライラしている」のです。

この考え方のよいところは、自分でイライラしているなら、イライラさせ方のメカニズムがわかれば、それを変えることでイライラを止めることができるということです。

自分でしているならやめられますね。

このような考え方にクライアントを誘い込んで、変われる可能性に意識をむけてもらっています

ここから「L プロセスをリードする(Lead)」に入っていきます。コーチは今回はフォーカシングからソリューションフォーカスという流れで行こうと考えています。

まずはフォーカシングでクライアントのイライラする感じの奥に何があるかを明らかにし、

その後で、制約のない未来を描き、そのためのリソースと新しい行動を発見します(ソリューションフォーカス

実際の展開を見てみましょう

CO では思い出して欲しいのですが、例えばどんなときにイライラするのでしょう?
CL 食事のときにいつまでもふざけてるとか
CO ちょっと思い出してみて。。。そうすると身体にどんな反応が起こる?
CL なんか胸のしたあたりでイラっとする感じ
CO そこにどんなものがある感じだろう。。。繊細に感じてみると。。。
CL なんか、胸の底あたりで。。。。ガスレンジみたいにボッと軽く発火するみたいな
CO そこに意識を向け続けて。。。何を言いたそうだろうね。。。。
CL うーん。。。。。いい加減にしろ!。かな。。。。
CO いい加減にしろ。。。。何のことだろうね。。。意識を向け続けて。。。。
CL 疲れてる。。。いや、こっちもいろいろ我慢してるんだから。。。かな
CO なんだろう。。。我慢って。。。。
CL 仕事のイメージが出てくる。仕方ないといいながら我慢してる
CO うん。。。なんだろうね。。。
CL あー。自分も気分転換したい。。。外に出たい。一人になりたい
CO お子さんのことと言うよりも。。。
CL うーん。ちゃんとさせたいというより、まず一人になりたいのか。。。
CO そうしたら少し落ち着けるのに。。。
CL 。。。。。。(涙)
CO 今、◯◯さんの中で何が起こってますか?
CL 優しく生きたい。。。それができないのがつらい。。。

フォーカシング

フォーカシングを知らない方からするとまったく奇妙なやりとりに見えるかもしれません。そのような場合はこの記事など参考にしてください

クライアントは心の声を聴く中で、まずは自分が一人の時間を求めていることに気づきます。そしてその奥にあったのは「優しくいきたい」それができないのが悲しい。。。という声でした

短時間のセッションだったこともあって、コーチはここから一気に未来にいきました

CO 優しく生きたい。。。ではおだやかに。。。。深呼吸しながら、イメージしてみてください
CL 。。。。。はい。。。
CO タイムマシーンに乗って「優しく幸せに生きている」近未来にいきます。。。。
CL 。。。。。
CO あなたもお子さんも幸せに生きている、近未来。。。
CL はい。。。
CO その世界でゆっくり目を開きます。。。するとあなたは。。。そこで何を目撃するでしょう?
CL うーん。
CO 。。。あなた自身のことでも。。。周りの人のことでも。。。。。例えば。。。
CL 朝早く起きた息子が妹と楽しそうに遊んでる。。。
CO いいですね。。。
CL 夫も楽しそうに朝食の準備をしていて。。。もともと料理が好きな人なので
CO うん。。そして。。。(網羅)
CL わたしも加わって楽しく食事をして
CO どんな話をしたりするのかな。。。(具体化)
CL 週末に私の実家の方に遊びに出かけることとかを話してるかな
CO そうすると?(予測)
CL こどもたちも楽しそうにやりたいこと話してるし、夫も機嫌良くきいてる
CO いいですね。。。
CL はい。。。別に普通のことかも知れないけど、こういう日々を過ごしたい

ソリューションフォーカス1

コーチは「優しくいきたい」を捕まえて、深呼吸でリラックスしてもらいながら、タイムマシンに乗ったイメージの力を借りて「優しく幸せに生きている家族の未来」を少しずつ具体化しています

基本的にはソリューションフォーカスアプローチなのですが、ミラクルクエスチョンではなく、黒沢先生の「タイムマシン質問」にしています

ソリューションフォーカスについては、こちらの記事で実例解説しています


CO これが10点だとしたら、これまで最高何点を体験したことがありますか?
CL うーん。9点かな。。。9点はあるな。。。
CO そのときを思い出して。。。何によってその状態になったんだろう
CL あー。あのときは、そのちょっと前に、大変だろうと義母が手伝いに来てくれて
CO ほう
CL 義母が面白い人なので、癒されたし、ちょっと楽させてもらって
CO あなたがやったことでよかったことは何でしょう?
CL ちょっと愚痴言って、きいてもらって、あ、だから夫にも言えたんだ
CO 言えたから?
CL 夫もやれることはやってくれて。子どもたちも夫が好きだから喜んで。。。

ソリューションフォーカス2

「例外の条件さがし」をしています。

例外=うまくいっていたとき
条件=うまくいかせている要因

です。

10点の未来に近かった時を思い出し、

「何によってその状態になったか」(外的要因)
「あなたがやったことでよかったこと」(内的要因)

を探そうとしています。その結果クライアントは、何をしたらよいかについての気づきを得ています

CO それはよいですね!このことをヒントにして、何かできそうなことを教えてください。
CL はい。夫に「あの時以来のピンチだ」といいます。夫も最近忙しくしていて気づいてないと思うので。。。。
CO 言ったらどうなりそうですか?
CL 食事作ってもらって家族で美味しく食べます。。。。あー、それはいいかも。。。まず食事を作ってもらおう

アクション

変化をつくるためには、夫にピンチを伝えて、食事を作るようにお願いする。その先には、家族で優しく幸せに生きる未来が見えるというのです。

短時間ですばらしいルートを見つけてくれました。

COここまでのプロセスですでにどんな前向きな変化が起こりましたか?
CL。。。あ、イライラがかなり減っています。。。イライラというか、不安とか焦りのような
COいいですね。何がよかったのでしょう
CL。。。。優しく生きたいと口にできたのと。。。夫の協力があれば大丈夫だと思えたので
CO 息子さんと分かりあうコミュニケーションはどうなりそうですか?
CL。。。。。。今みたいにいい状態のときに、息子の話をもっときけばいいんですね。。。。そっか
CO ここまで話してみてどうですか
CLすっきりしてます。とてもいい感じです

変化を確認

「V 変化を確認する(Verify)」の部分ですね。すでに起こった前向きな変化を具体化しました。

その上で、当初のゴール「息子と分かりあうコミュニケーション」はどうなったかを確認しています。

その結果、そちらにも指針が立っていたことがわかりました。

ということで最後に「E エコロジーへの影響を確認して終了する(Ecological exit)」をして終わりになります

CO では最後にイメージしてみましょう。帰ってご主人に、あの時以来のピンチだから助けて欲しい。食事をお願いできる?ときいてみる。。。何が起きそうですか
CL わかったと言って、快く作ってくれます
CO それはいいですね!そのことと関連して何か問題が起こる可能性はありますか?
CL 。。。。。。ないかな。。。。あるとすれば食費が多くなりそうだけど(笑)
CO(笑)
CL それは大丈夫です!!
CO 息子さんとはいつ何を話しますか?
CL 今日の夜、保育園の話とか週末なにしたいかをきいてみます
CO どうなりそうですか
CL 楽しく話せそうです
CO 懸念点は?
CL 盛り上がりすぎるとお風呂が遅くなるかな(笑)
CO どうしますか?(笑)
CL 今日やりすぎずに、毎日少しずつきくようにします(笑)

エコロジカルチェック

以上です。フォーカシングとソリューションフォーカスの部分だけでも良いのですが、他の部分がどう相互作用を起こして、セッション全体にまとまりを作っているか。それがクライアントのこれからにどう影響していそうか。検討してみてください

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