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RESOLVEモデルでコーチングを見直そう

この記事のテーマはリチャード・ボルスタッド博士のRESOLVEモデルです。このモデルを活用すると、あなたが現在持っているスキルで、もっと確実に結果が出せるようになります。

RESOLVEとの出会い


僕は2005年にコーチングとアドラー心理学とNLPに同時に出会いました。それは僕がコーチングを習ったのが平本あきおさんと酒井利浩さん(故人)で、彼らはそれぞれアドラー心理学とNLPのスペシャリストだったからです。

2006年以降はNLPにはまって、他に何人もの先生から学ぶことになりますが、その中でも大きかったのがリチャード・ボルスタッド博士との出会いでした。リチャード先生から受けた影響、学んだことは山ほどあるので、いつかそれらも記事にしたいと思います。

そのリチャード先生との出会いのきっかけが、著書『RESOLVE自分を変える最新心理テクニック』を読んだことです

入門書としては難しいのですが、NLPのかなり本格的な教科書で、当時の日本語環境ではこの水準で書かれた本がほとんどなかったため夢中になって読んだのを覚えています。(現在でもこのようなクオリティの本は貴重だと思います)

そしてこの本に非常に感銘を受けた僕は、それから何年もにわたってリチャード先生から学び続けることになりました。

先生からもらったメッセージ


RESOLVEモデルの狙い

NLPではコーチングやカウンセリングで役にたつモデルをいくつも習います。どんなケースの場合に何をしたらいいかに関して、レシピ集がもらえるようなイメージです。

ところが、同じレシピを使っても、うまくいく場合といかない場合があるわけです。

コーチングで言えば、スクールで例えばGROWモデルというレシピを習うわけですが、レシピ通りにコーチングしてもうまくいく場合といかない場合がありますね。

この「レシピ通りやったけどうまくいかない問題」をRESOLVE(解決)するのがRESOLVEモデルなのです。

別の言い方をすれば、持っているレシピをうまく活かすポイントを教えてくれるのが、RESOLVEモデルです。

RESOLVEモデルとは

R コーチがリソースフルな状態でいること(Resourceful state)
E クライアントとラポールを築く(Establish)
S 目標を特定する(Specify)
O オープンマインドになってもらう(Open up)
L プロセスをリードする(Lead)
V 変化を確認する(Verify)
E エコロジーへの影響を確認して終了する(Ecological exit)

RESOLVEモデル

レシピ(コーチングで言えばGROWモデルなど)を使ってプロセスをリードするのはLの部分で、その前に4つ、後に2つ、気をつけたほうがいいことがあるというわけです

では1つずつ見ていきましょう。

※解説は僕の解釈に基づくもので、コーチが活用しやすいように説明してあります。RESOLVE本に書かれているものとは異なりますので、興味ある方はRESOLVE本にも目を通してみると良いと思います

R コーチがリソースフルな状態でいること

コーチが良い状態であること。コーチングに関連してコーチが使うことができるリソースをなんでも使える心身の状態(リソースフルステイト)でいることが大切です。

コーチングはコーチがリードするプロセスですから、コーチの心身の状態が結果に影響します。

まずお勧めなのは、自分の心身の状態をスケーリングすることです。とてもよい状態を10点としたときに、現在は「心7点 身体4点」などとスケーリングするわけです。

そして、自分がコーチとして相手に関わるときに、最低でもキープしておきたい状態は何点なのかを決めておく必要があります。

いつでも心10点身体10点でなくてもいいですが、せめて「心8点 身体6点」は下回らないでいたい、など自分で決めるわけです。

そうしたら、あとは自分の状態をスケーリングしながら、いい状態にするための工夫を続ければいいのです。

工夫はなんでも構いませんが、SPACEモデルがわかる方は活用すると良いとおもいます

もう一つ、リソースフルに関連して大切なことは、ずばりクライアントの問題に巻き込まれないことです。

クライアントの問題を解決しようと前のめりになりすぎると知らず知らずのうちに視野が狭くなることがあります

クライアントの問題に自分の問題を重ねて巻き込まれることがあります

クライアントの反応を気にしすぎて、コーチの打ち手が制約されることがあります

「この問題は難しい」とコーチであるあなたが感じているときは、あなたが問題に巻き込まれて、リソースフルではなくなっている兆候です。

「変化を起こすのはクライアントであって、コーチではない」ことを忘れないでいましょう。

問題が劇的に解決されるセッションばかりではありませんが、コーチの関わりはクライアントに必ずなんらかの影響を及ぼします。そしてクライアントが何か新しい行動を始めたら、現実になんらかの影響が及びます。

コーチがクライアントに良い状態で関わる。クライアントも少し良い状態になり、新しい行動を始める。そうしたら必ず何かは変化します。

そのことを忘れずに、良い状態をつくってコーチングに臨み、コーチング中はキープしましょう

E クライアントとラポールを築く


ラポール(「橋をかける」意味の仏語が語源)とは親近感、信頼感のことです。このラポールが安心感となりクライアントは内的世界を探求したり、それを言葉にすることが可能となります。

逆にラポールが切れると、クライアントは話さなくなったり、コーチの提案に抵抗をするようになります。

コーチングやカウンセリングをする上では生命線になるのがラポールです。だから相手があなたへの「信頼感、親近感、安心感」が増すように、コミュニケーションを変えていくのです。

姿勢、表情、動き、話すスピード、トーン。使う言葉。

これらを相手にとって心地よく感じるものに調整していきます。簡単な方法は、これらをクライアントに合わせていくことです。

そして、

クライアントに関心を持ち、クライアントを信じ、クライアントの幸せを願う姿勢が大切です

その上でリチャードは言います

(コーチの)提案に対する「抵抗」は、まだ十分なラポールが築かれていないということの現れであり、クライアントの「地図」と内的な世界への「ペース合わせ」を促進する提案がさらに必要だということの現れである

『RESOLVE』PP194-195

簡単に言えば、何かやろうとしたときに、クライアントの抵抗を感じたらラポールを取り直す(相手の世界に合わせる)ことに戻りなさい。という教えですね

S 目標を特定する

どんなセッションをするときにも、クライアントの目標に意識を向けるのは大切です。

クライアントは何らかの要望をもってコーチのもとを訪れます。その要望を明確にするのです。

ポイントは①肯定形で表現すること②具体的に特定することです

クライアントにセッションの目的やゴールをたずねた場合。否定形での表現や、漠然とした表現になることがあります

「これ以上不安な気分になりたくない」「緊張しないようになりたい」などです。これらは否定形(〜でない)かつ具体的に何のことかわかりません。

なので
これ以上不安な気分になりたくない→人と比べず安心して子育てに取り組めるようになりたい

緊張しないようになりたい→自信をもって来月のプレゼンテーションを行えるようになりたい

のように、具体的に望んでいることが明らかになるように関わります。このときには確認の質問が役に立ちます(NLPで言うとメタモデルの質問)。確認の質問の解説は↓

このようにゴールが描かれると、クライアントはゴールに向かって動こうとします。そしてコーチも何の実現のために協力すれば良いのかがわかります。ゴールに向かう協力関係ができるわけです。これをコーチングでは協働関係と言ったりします。

また、ゴールがわかっていると、ゴールまでの進捗管理ができるので、より効果的なコーチングをすることができます。

進捗管理の方法は簡単で「ゴール達成が10点だとしたら、今何点?」などと、コーチングの途中途中で確認すれば良いのです。そして点数を聞いたら「では10点に向けて、あと何をしたらいいと思う」などと質問すると、クライアントのアイディアも織り込みながらコーチングを進めることができますね

O オープンマインドになってもらう

これもとても大切です。クライアントが

「どうぜ私は変われない」「こんなことをしても効果はない」

など懐疑的にセッションを受けてたら、うまくいくものもいきません。逆に

「効果ありそう」「期待できそう」「やってみたい」「変わることができそう」

など、より開かれた気持ち=オープンマインドでセッションを受けてくれたら、クライアントはセッションのプロセスもうまく活用するし、その後の行動も積極的に取るようになります。

ということで、コーチは必要に応じて、クライアントにオープンマインドになってもらうための関わりができると良いのです。

・自己開示 あなたの思いや、経験を話す
・ケース紹介 似たようなクライアントが変わったケースを話す
・心理教育 変化のメカニズムなどを説明する

などがオープンマインドになってもらうための基本的なアイディアでしょうか。いずれにしても相手とのラポールが前提となります

あとは、短い時間でクライアントに変化を体験してもらうワークなどができるなら、最初にそれをすることでクライアントは、変化の可能性を感じてくれるわけです。

もう一つの方法は以下の質問をすることです

「あなたはどうやってその問題を作っているのですか?」

例えばクライアントが子育てをテーマにセッションを受けにきているけれど、勇気がくじかれすぎていて、よくなることが難しいと思っているとします

そのクライアントに「あなたはどうやってその問題を作っているのですか?」と質問するわけです。

クライアントはキョトンとしたり、場合によっては「私が問題を作っているわけではありません」というかもしれませんが、よく考えてもらいたいのです。その結果

「あ、そうか。私がもう無理だ、と思って暗い未来を想うことで、積極的に子どもに関われなくなるし、関わってもらえない子どもがイライラして私に向かってくる。そのことが私をますます絶望させる。。。こうやって問題を作っている(維持している、拡大している)んだ」

と気づいたとしましょう。

そうしたらコーチは「なるほど、ではそのことが変化したら、状況は変わる可能性がありますね」と確認すれば良いのです。

これはそもそもアドラー心理学的な発想です。クライアントはすべて自分で決めて行っているので、それを自分で変えることができるし、自分が変われば周囲に影響するというのがアドラー心理学の提案した考え方です。

L プロセスをリードする

ということで①よい状態で②必要な信頼関係をつくり③ゴールを特定し④オープンマインドになってもらった上で、いよいよコーチングカウンセリングの本体に入っていきます。

コーチングならGROWモデルでもいいですし、もう少し工夫したかったら僕が提唱する基本モデル10も汎用性が高くてお勧めです

NLPのワークにどのようなものがあって、それらをどう選択したらよいかについては、ロバート・ディルツ先生がニューロロジカルモデルにをベースに解説されている以下の本がお勧めです(ただしNLPに関する基本的な知識や体験がないと分からないところがあると思います)

どのようなプロセスを選択したら良いかについては色々な考え方がありますが①クライアントが望むゴールに近づくもの②クライアントが取り組みやすいもの③コーチが得意なものなどを考えみることが良いと思います。

GROW以外のモデルを知らないコーチは、いつでもGROWでも良いですし、別のモデルを学んでみることもいいですね。

以下のシリーズは同じテーマに対して7つのアプローチで関わっています。いろんなやり方があることがあることの参考になると思います


V 変化を確認する

「ここまでで起こった前向きな変化は何ですか?」とクライアントにきいてみてください。セッションの最後でも良いですが、途中できいてもよいのです。

すでに変化が起きたことを意識化すると、クライアントは未来の変化に対してもより期待するようになります。

それがセッションの途中で起これば、その後のセッションへの期待も上がりますし、セッションの最後までに何か前向きな変化に気づけば、セッション後のさらなる変化への期待も向上します。

また期待だけではなく、せっかくのすでに起こった変化を活かしたいという気持ちが芽生えやすいですね。

ということで、クライアントを変化と成長の物語へと誘うべく変化を意識化する質問をしていきましょう。

質問以外でもコーチがクライアントの変化に気づいたときに
「あれ、いま、やりたい!って初めていいましたね」
「最初と声のトーンが明らかに変わりましたね」
「最初は5年くらいかなって言ってたのに、3年になってますね」
などとフィードバックするのもありですね。

僕はポジションチェンジのワークなどで、椅子の位置や角度をい使って人間関係を表現してもらいますが、ワークが進んだあとで

「もしかしたら、最初に置いた時と、おかあさんの場所が変わっているのではありませんか?」

などと働きかけ、椅子の配置を変えてもらった後で「おかあさんがあなたをみていた場所は、本当は違ったんですね」などとすでに起こった変化を意識化したりしています

E エコロジーへの影響を確認して終了する


そして最後です。エコロジーチェックです。エコロジーとは環境のことです。

セッションで起こった変化や、決めた行動が、実際の世界(環境)にどのように影響するかをチェックするのです。

「この状態で、家に帰って、さっき決めた行動をとったら何が起きそう?」

などと質問してみるわけです。

そもそも「決めた行動が取れそうかどうか」「効果が期待できるか」などをチェックすることも大切です。「その行動は取れそうもない」「どうやったらいいかわからない」「とっても何も起こらなそう」では、クライアントは行動できないか、行動しないからです。

「行動できるし」「効果がありそう」となったときに、次のチェック項目が「なにかネガティヴな影響は存在しないか」を検討することです。

「なにか問題が起こる可能性はなさそう?」

などときいてみたらいいですね

その結果、もし
「急に行動変わりすぎて妻から不信感もたれそう」
「やりすぎて、体壊しそう」
など問題があるなら、行動の調整を検討する必要がありますね。

そして、ここで必要なら障害対策について考えることもできます

「ゴールに向けて動いていく中で、何か障害が起こるとしたらどんなものでしょう」
「その障害に巻き込まれないためには、どのように行動したら良いでしょう」

という質問をするのです。これはガブリエル・エッティンゲン博士が考案したWOOPモデルに基づく質問です。この質問を入れると成功確率が2倍以上あがるという研究があります。WOOPモデルについては以下の記事に記述があります


ということでRESOLVEモデルの解説でした。あなたのコーチングカウンセリングをより効果的なものにするためのポイント集でした。

実は、この後にも大切なことがあって、それは体験学習サイクルを回すことです。

コーチングカウンセリングで生まれた変化や決めた行動が、現実世界にどう影響したかを観察し、その結果から学習して、次の行動に続けていくこと。

そうやってクライアントが行動と学習のサイクルを回し続けることをサポートしてあげて欲しいのです

まずは、クライアントが最初の行動をとった後に

「やってみてどうだった?」(結果)
「何を学んだ?」(学習)
「次は何をする?」(行動)

の質問をしてみるところから始めたらよいと思います。体験学習サイクルと、それを回すための勇気づけについては以下の記事が参考になります


次回の記事では、RESOLVEモデルを使った実践例をお見せしたいと思います

僕たちと人生を変えるコーチングを自分のものにしたい方はこちらから↓


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