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スピッツの宇都宮公演に行きたかったある人の話

2020年4月にスピッツが宇都宮で久々にライブをすると発表した当初は
まだコロナのコの字もなくて
私はただひたすらに楽しみにしていた。

 
2019年12月に東京公演に行ったものの、仕事や他のイベントの関係で泣く泣くアンコールを諦めて帰宅し
宇都宮公演こそ最後まで楽しむと決意していた。

チケットをまだとれていなかったくせに
私は何故か自分が宇都宮公演に行けると信じてやまなかった。

 
東京公演に行った後、急展開があり
11年続けていた仕事を急遽退職することになり
2020年4月1日に無職になった。

 
仕事云々ではなく
前々から4月1日にスピッツファンクラブ入会を決めていたわけだが
まさか無職の日と入会日が同時に来ると思わなかった。

 
転職先では仕事開始してすぐに休みはとれないだろうと
転職時期を4月以降に決めたわけだが
コロナ禍により
宇都宮公演は延期に延期を重ね
私は身動きがとれなくなった。

結局、宇都宮公演はなくなり、別場所でツアーを回ることになったわけだが
2023年のツアーで再び宇都宮公演があることが発表された。

 
私は転職して仕事も落ち着いたし
転職先の場所や勤務時間の関係で会場に行きやすくなったしで順風満帆だった。

例え今年バセドウ病になったり、骨折してもだ。

 
しかし、残念ながら5回チケットに申し込んでも宇都宮公演はとれなかった。
一般に至っては一般で1分で完売だ。

どうやら関東は今までにないレベルの激戦で
私のようにファンクラブに入っていて5回申し込んでもチケットがとれない人で溢れていた。

 
友達が神奈川公演のチケットを2枚とってくれたので行けるには行けるが
地元栃木のライブには行けないという寂しさは常にあった。

 
ツアー開催が発表された時

大宮(埼玉)
宇都宮(栃木)
横浜
日本武道館

を狙っていたし
本気で全部行きたかったが
まさか一箇所も自力ではチケットがとれないとは思わなかった。

 
私はギリギリまで誰かがチケットを余らせるかもしれないと期待を捨てなかったが
さすがにライブ当日の午前中に誰からも連絡がなく、ようやく諦めつつあった。

ライブの次の日は朝早くから仕事が入ってしまったのもあり
気持ちは行けないライブに真っ直ぐには向けなかった。

 
ツアー二日目の大宮公演の際
友達が会場に向かった。
チケットはとれなかったが、せめて会場に行きたいという気持ちからで
会場にはそんなファンが溢れていたらしい。

逐一届く、現地の様子や気持ちの波に私は泣けた。

 
宇都宮公演当日。

私はスピッツのライブTシャツとタオルで仕事をした。

 
その日の午前中は久々にハードな肉体労働で、午前中からグッタリした。
車で会場である宇都宮文化会館を横切った時
私は思わず「あ!」と叫んでしまった。

施設長も利用者もいるのに。

ツアトラが停まっていた。
ツアトラが停まっていたのだ。

 
ときめいてる 初めて?
いや、初めてではないが、ときめいてる。

昼休みに即スピッチの友達にLINEしたのは言うまでもない。

 
仕事終わり、私は今日宇都宮文化会館でスピッツのライブがあること、チケットがとれなかったこと、転売されたチケットは40000~100000円なこと、チケット詐欺が横行していることを伝えた。

私がスピッツファンクラブ会員なことは職場に伝えていた。

 
私はあわあわしながら定時で職場を後にし
慌てて文化会館へ行った。

 
文化会館には午前中と同じ場所にツアトラが停まっていたし
ツアーグッズを身につけた人やスピッツグッズを身につけた人で溢れていた。

自撮りをしたところで、施設長から電話が鳴る。
どうやら、鍵を忘れていたらしい。動揺し過ぎだ。

 
一旦職場に戻り、再び文化会館に行き
周りにいた方に写真を撮ってもらった。

傍から見たら、今からライブを楽しむ人にしか見えないだろう。

 
入口では開場列が動き出していた。
近くには、手書きで「チケット譲ってください」と書いて持っている人の姿が何人も見えた。

 
宇都宮公演はツアー四日目にあたる。
大宮公演と一緒だ。

きっと私のようにチケットがとれなかった人も
ここにはたくさん来ているのだろう。

 
せっかくスピッツが宇都宮にいるのに、すぐ近くにいるのに
私にできるのはこれくらいで
これ以上中には進めない。

 
色々込み上げて切なくなったが
友達に逐一LINEができるから私は恵まれていた。
一人ではとてもじゃないが抱えきれない。

 
横浜公演は行ける。

元気でさえいれば
仕事を頑張ってお金が稼げて
有給はとれるし、グッズを買える。

あとは徳を積むしかない。

そう感じながら家に帰った。

 
家に帰ると
ツアーグッズが郵送で届いていた。

セトリを見て
他の公演日にやらなかった私の好きな曲を歌ったと知った。
ガックリきた。

 
明日は気持ちを切り替えて仕事を頑張ろう。
朝も早いから早く寝よう。

 
 
 
 
………これで話は終わりかと思ったが
この後、まだ続きがある。

 
 
 
次の日
私は某イベントで販売のイベント出店だった。

一年間で一番、もしくはそれに近いくらい売り上げがあるイベントで力が入っていた。

 
販売の服装はスピッツTシャツにした。昨日の今日だから、もしかしたらスピッツファンが来場するかもしれないと思ったからだ。

 
実際、去年同じイベントでポルノグラフィティのライブTシャツの方がお客さんで来ていた。
ライブがない日に推しのライブTシャツの方が来場するのはなかなかにない(私はポルノグラフィティのファンクラブにも入会している)。

 
販売開始してから数時間後
本当にスピッツのツアーTシャツの方がいて
私は思わず話しかけた。

私は私でスピッツTシャツを見せた。

 
その方は気さくな方だった。
なんと、九州から来ているらしい。

 
更に言えば私と同じでチケットがとれないけど文化会館に昨日行ったという共通点もあった。

思いがけず、しばらくスピッツトークで盛り上がる。

 
その方はうちの施設の製品を買ってくれた。
ありがたかった。

栃木の一施設のものが九州に渡るのだ。まさかのスピッツ繋がりで。

 
ライブには行けなかったけど、でも
スピッツは私とファンを繋げてくれた。

 
「いつか九州にも遊びに来てくださいね。」とその人は言った。

いつか
天神駅の改札口で君のよれた笑顔が見たい。








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