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入院28日目:味噌煮込みうどん

昨夜、味噌煮込みうどんを食べた。
お父さんと、「あれからまだ一ヵ月経ってないんだよね。長いね。」と言い合った。

味噌煮込みうどんは、お母さんが入院する前日の我が家の夕飯だった。

まさかあの次の日から三人で夕飯を食べられなくなるなんて思いもしなかった。

 
味噌煮込みうどんは入院前の日の夕飯であり
お母さん入院日のお父さんの夕飯でもあった。

お母さん入院日は昼ご飯を食べる暇もなく、入院手続きの後、夜遅くにお父さんが一人あたためて残りを食べていた。

 
あれから約一ヵ月が経ち、お父さんと二人で食べた。
キノコや野菜をたくさん入れたら具たくさんになった。

春だが、最高気温25度だ。
料理をしていても暑いし、食べてもまた体が熱くなった。

 
お母さんは病院ではあたたかなご飯を食べられているのだろうか。

入院前は一緒に毎月ご飯を食べていたのに
今はもう、お母さんが今日何を食べたか、聞かないと分からなくなった。

 
 
今日からまた一週間が始まる。
まだ4月なのに最高気温28度。半袖でいいくらい、暑い。
今年の夏も暑いのだろうか。私は暑さが苦手なので今から不安だ。

 
お母さんにLINEしたら、病院も今日は暑いらしい。
同室の方が退院し、お母さんと故郷が同じ方が新たに入院したと教えてくれた。

「人生色々だね。」母が言う。

リハビリでは、今日も体を吊って歩行訓練をしたらしく
左右の足を交互に動かしたらしい。
「難しい。」とのこと。右側が上手く動かないから、なかなかに大変だろう。

 
今日、美術館で買ったTシャツを仕事着で着ていった。
「外から見たら分からないけど、みんな実は困った悩みを抱えているのかな?」そんな内容が書かれたTシャツだ。

保護者が「素敵なTシャツですね。美術館、行きたいなぁ。」としみじみ言う。
その保護者は子ども(利用者)と実母と暮らしていて、子どもは夜中も発作があり、まとまった睡眠はとれていないようだ。
実母の方も認知症が進んでいて大変らしい。

 
私の一ヵ月程度の母の入院の苦労なんてその保護者の大変さに比べたら足下にも及ばないだろう。
まとまった睡眠はおろか、自分の時間もろくにとれないはずだ。美術館に一人でゆっくり、なんて行けないだろうし、家族みんなで美術館もまた難しいだろう。

今までは美術館やらライブやら好きなように行っていたけど
私ももう以前のようには行けない。
そして保護者はそれを知らない。

 
外側からは人の困ったことなんて見えないのだ。
みんな、そうやって見せないように生きているから。

 

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