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たてがた洗濯機

 我が家では10年くらい前からドラム式洗濯機を使っている。
 理由は、単純にフランスではドラム式洗濯機が普通だったので、ちょっとカッコよかったから憧れて採用したというのと、実際使ってみたらなんだか洗濯物の出し入れが楽だったからである。
 さらに、当時はドラム式洗濯機が流行り始めた頃で、洗浄力も全然高いし水は使わないし、乾燥機もついてるしみたいなのが売り文句だったと思う。値段も普通の洗濯機より全然高いし、いわゆるちょっと贅沢品みたいな位置付けだったと記憶している。
 ところが、先日そのドラム式洗濯機をたてがたの洗濯機に買い替えてしまった。
 長年使用してついにドラム式洗濯機が壊れてしまったので、新しいのを買おうということになったのだが、家族で熟考の末、これはむしろたてがたの方がベストなんではないかという結論になったからである。

 ドラム式洗濯機はどうもあまり我が家と相性が良くなかったみたいで、じつは初代に買ったものはものの1年くらいで壊れてしまった。
 そして新しいのを買ってそれを8−9年使ったわけだが、買って割とすぐに、「埃が詰まったから手入れしろ」というエラーが頻繁に出て乾燥がストップするようになった。
 しかし、これはドラム式洗濯機の乾燥機付きのを持っている人はわかると思うのだが、掃除できる取り外し可能なフィルターは何度掃除してもあまり状況は改善せず、通常開けられないようなマシンの奥深くになぜか埃がたまって詰まる構造になってしまっているのだ。よく、YouTubeなんかで、洗濯機をネジで大仰に分解して、専門的な何らかの知識でナゾの箇所を開くと山のような埃が出てくる、という映像がある。
 なんだってそんな構造なのだ。意味ないじゃないか。
 というわけで、その一生見ることのできない体内のほこり詰まりの存在をなんとか誤魔化しなだめすかしながら(2回に一回くらい乾燥機が途中で止まるので本当に面倒くさい、申し訳程度に掃除するとその時だけ機嫌を直して仕事をしてくれる)、ストレスと共に何年かを過ごしてきた。
 しかし、今年になって、今度はほこりではなく、「乾燥中に洗濯物がかたよっている」というまたナゾの主張をするようになった。しかし、わかるとは思うが、どうみても洗濯物はかたよってなどいないのだ。
 しかも最悪なことに、かたよっていると思い込んだ洗濯機は、あろうことか乾燥中なのに洗濯槽内に水を投入してかたよりをなくそうとするのだ。もうもう、狂気の近未来ロボットのようである。
 これでもう心が折れて、買い替えることにした。そしてその時出した結論が、もうドラム式でなくてよくない?ということだった。

 そして、ドラム式よりも10万円以上安い値段の新しい洗濯機は、我が家に到着するなり、今までのは何だったんだというくらい快調に仕事をこなしてくれている。
 あっけに取られているこちらに対して、「え、これが普通ですよね。違うんですか?」と言われているようにすら感じる。
 もちろん、乾燥だって何の問題もなく行なってくれる。というより、むしろふわふわである。よく言われることだが、ドラム式は叩いて洗うので、タオルなんかは縦型の方がふわふわになると言われている。
 最新式なので、洗剤も自動で投入してくれるし、自動で槽内を洗浄もしてくれる。いいいことづくめである。洗濯物の出し入れだって、別にいうほど大変でもない。やはりたてがたで正解だったのである。

 と、思っていたら、この前ラジオ番組でパーソナリティが「縦型洗濯機を使っているが、ドラム式に憧れて買い替えようと思っている。ドラム式は乾燥もできてふわっふわに仕上がるらしい。値段は高いが、憧れていていつか買いたいと思っている」と力説していた。
 幸運を祈りたい。

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