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今さら『ふしぎの海のナディア』が超絶面白い!第一話「エッフェル塔の少女」

『ふしぎの海のナディア』は1990年4月13日から1991年4月12日にかけて、NHKで放送されていたテレビアニメ。総監督は後にエヴァンゲリオンをつくる庵野秀明監督だ。知らんかった。
現在38歳のわたしは当時5歳で、テレビで見た記憶はあるものの内容はてんで覚えていない。今さらながらに最初から観てみることにした。
当時はNHK放送だが、なぜかFODで独占配信のようだ。

第一話「エッフェル塔の少女」は主人公であるジャンと、ナディアがパリの博覧会で出会い、旅に出るまでを描く。

『汝は冒険者か。危険という名の滝をくぐりぬけ、その奥に伝説の正体を求める者か。ならば、我を求めよ』
物語はこんな伝承のようなモノローグから始まる。現代でもワンピースのアニメに使われているような伝統的な演出方法。使い古されているともいえるけど、「これは何か大きな物語がはじまるぞ・・・!」という男の冒険心を掴んで離さない何かがある。

そして時代背景の説明が入ったあと、主題歌・・・!
「いーまーきーみーのめーにー、いーーっぱいのみーらいー」
あああ、やばい! いい! 超いい!
なんだろうこの、冒険がはじまるぞと感じるこの感じ。最高のオープニングだ! テンション爆上げ! みてよかった!

オープニング明け。遠景からズームイン、川を走る船、そして飛び交う鳥。船の中に入りドリー(横スライドで動く)。
引きから寄りへ画面を映していき、視聴者の興味を物語の中へ誘う手法だ。そして最後は主人公であるジャンの寝顔。物語の最初に登場する人物こそが主人公。うん、スタンダードだけどカットのバランスがいい!

ジャンが来たのはフランスのパリ。
「すごいなー、これがパリの万国博覧会かー」と説明セリフ。
展示されている発明品をみて、「駆動系に無駄があるなー」などというジャン。視聴者に「お、こいつは発明に詳しいんだ」と分かりやすく伝える。

次にやってきたのは飛行機コンテストの会場。先に来ていた叔父に「みろ、今から一番機が落ちるところだ」と声をかけられる。
飛行機コンテストで「今から落ちるところだ」なんて皮肉が聞いてて面白い。そしてジャンはジャンで、へんてこな風力計を取り出して「あの羽じゃエンジンを支えきれないよ。風力2か、追い風だけど8メートルってとこかな」なんて言い出す始末。
そしてもちろん飛行機はろくに飛ばずに落下。アナウンスが「ただいまの記録8メートル」「ほらね、やっぱり」とお約束が気持ちいい!
ここで視聴者は「ジャンは口だけじゃないんだ」と気づくと同時に、特別な才能をもっているジャンに興味がわく。最近でいえばなろう系の俺TUEEEに通じる導入だ。

謎の風力計測器。ほんとにあったのか・・?

「おじさん僕らは何番なの?」
このセリフで、ジャンの目的が飛行機コンテストへの参加なのだと判明。
ここまでオープニングから3分。
主人公が誰か、どんな能力を持っているか、どんな目的があるかを伝えている。分かりやすいうえに面白いぞ! さすがだ庵野監督! 1話の演出やってるか知らんけど!

シーンが移り、川辺でエントリーを組み立てるジャンとおじ。ここでの会話からジャンの父親が海で行方不明になっていることが分かる。
「親父を探すのもいいが、そろそろガールフレンドを探すんじゃな」
というセリフを5秒で回収。自転車ではしる褐色の美少女にジャンの目はくぎ付けに。そして夕方には戻ると告げて、ジャンは少女を追いかけていく。
そして同じ少女を望遠鏡で監視している怪しい女。どうやら少女を狙っているようだ…。

後ろにいるのはライオン

エッフェル塔の上、黄昏れる美少女。「空を飛べたら(ふるさとを)探しに行けるかしらね」というひとり言に対し突然「飛べるさ!」と背後から声をかけるジャン。ちゃれぇ~。君かわうぃねぇ!
Z世代には考えられない積極性でがんがんアプローチするジャン。美少女から投げかけられる言葉のナイフ(現代ならどのセリフも致命傷)に対しても全くひるまない。メンタルつええ~・・・。
そして突然鳴り響く美少女のペンダント。
あれ、それって飛〇石・・・。バ〇スなやつでは・・・?

リュシータ・トエル・ウル・ラ〇ュタ

実はナディアは『天空の城ラピュタ』の原案ともいえる『海底世界一周』という企画にベースとしているらしい。宮崎駿の企画だ。なので、実際のところ飛〇石とルーツは同じなのかもしれない。

飛〇石は悪者に狙われるのが常。
ということで先ほど少女を監視していた女が子分二人を引き連れて飛〇石を奪いにやってきた!
さあ、ジャンがカッコよく少女を守る・・・! と、思いきや。ナディアは人の頭を悠々と飛び越える大ジャンプで脱出。その後はなんと手すりの上を全速力で駆け抜け、遥か下方のエレベータに飛び乗る大技を披露!
去り際の「さよなら・・・」は某綾波〇イを彷彿とさせる。庵野ぇ。
そのトンデモ身体能力から、少女がサーカスの関係者だとジャンも敵の女も気づく。ついでに視聴者も少女が守られるだけのヒロインではないと気づく。この強い女性像は宮崎駿の原案の色が強く残っていそうだ。駿ぇ。

そしてシーンはサーカスへ。
ここで少女の名前がナディアであることが分かる。まあたぶん誰もがタイトルでうすうす分かっていた。
ナディアはサーカスの団長に対して「今日は働きたくないの」というが、「食べた分は働け」と冷たく突き放す団長。まあそりゃそーだが、どうやらあんまりアットホームな職場ではないな、とみている側は気づく。
そして案の定、大金(贋金)をもってナディアを買いに来た敵の女にあっさり売り渡されるナディア。
これだけみるとひどい団長だが、ワンカットだけ、サーカスの団長がお金をもらって後ろめたいような表情をしているカットが入る。その前にもお金をチラつかせても最初は断っていたような演出があった。もしかしたら団長も本当はナディアをお金で売り渡しくなかったが、脅しに屈したか、お金がどうしても必要な事情があったかという背景が想像できる。おそらく二度と出てこないサーカスの団長だが、ちゃんと人間性を丁寧に描いているところがきちんとクリエイトされた作品だと思わせてくれる。

分かりやすい悪党

(贋金がばれるまでは)合法的?に売り渡されたナディアは、最初は連れ去られることに抵抗していたが、ついには諦めてしまう。
そこに一輪バイクで突っ込んでくるジャン。いいぞ主人公!やったれ!

どこかで見たことあるような・・・

首尾よく脱出できたジャンとナディア。
ジャンは「乗りなよ」とナディアに声をかけるが、「馴れ馴れしくナディアって呼ばないでよ」と相変わらず塩対応なナディアさん。しかし鋼のハートのジャンは全くひるまない。胸から一輪の花を取り出し、「そんな意地はってないでさ、乗りなよ!」と声をかける。つええよジャン・・・。

次のカットでは、あれだけ拒否していたナディアがジャンの後ろに座っている。花の効果すげえ・・・。まあナディアも自分で意地を張っていたのは分かっていたのだろう。何か受け入れるきっかけがあればよかった。それが花だったのだ。

「あの人たちは?」
「大丈夫、人の足じゃとても追いつけないさ」

そんなフラグとしか思えないセリフを1秒で回収。
二人の真横に巨大な鉄の乗り物が!
このスピード感がたまらない!

秒でフラグ回収

このびっくりどっきりメカから、この世界は1800年代でありながらも、現代でもあり得ない超発明がされているのだと分かる。であれば今後も想像もつかないようなすごいメカが現れるんじゃないかと、視聴者が退屈(=予想がつく/見たことがある)しないように期待を持たせてくれる。1990年のアニメでこんなにわくわくできるのは、それだけ丁寧に作りこんでいるからだ。

さあここからは敵のメカの見せ場だ!
車からロボットアームが飛び出し、あっさりとナディアとジャンは捕獲される。展開が秒である。
放り出されたジャンはダッシュで追いかけるも、とんでもメカは時代を感じさせるフロッピーディスクシステムと、謎の鍵盤システムで飛行モードに変身! 翼が生えるのか!? と思いきや飛行船方式だった。

バルーンのでかさがリアル

そして前半のフラグを回収しにいく。
ジャンは飛行機コンテスト用に開発していた機体で大空へ飛び立つ! 紅の豚のようなかっこいい機体で・・・ではなく、足で走るまさかの鳥人間スタイル。ジャン、お前それでエンジンがどうとかよく言えたな・・・。

だが翼の設計がちゃんとしているのだろう、ジャンの機体は風に乗って大空へ飛びたった! 強風に吹かれ! まったくコントロールできず!

ジャン、おまえ・・・

だがなんやかんや上手いこと敵の飛行船にダイレクトアタックをかます。
翼がいい感じに飛行船を切り裂き、持ち前のエンジニアスキルでナディアを救出。ナディアに抱えられセーヌ川に飛び込み脱出完了!

女性がかっこいいのは宮崎駿スタイル

残された悪党3人は「墜落死なんて嫌ですよぉ」「安心し、下はセーヌ川さ。あたしは絶対にあきらめない・・・ブルーウォーターを!」と決め顔で言った瞬間にセーヌ川にかかる石橋にド派手に墜落する。
「橋にぶつかんのかよ!」と思わず笑ってしまった。

この振りからの即回収がクセになりそうだ。
読者に展開を予想をさせたら負けだぞ、その前にフラグを即回収してやるという強い意思を感じる。

悪者もしばかれて一件落着。
ジャンとナディアの二人は、冒頭でジャンが乗っていた船で川を下っていく。ずぶぬれになり、毛布にくるまるナディアに「寒くない?」とナチュラルボーンイケメンのジャンのセリフ。パズーに通じるイケメンっぷりだ。
そしてついに絆されたナディアは「あなたの名前は?」と尋ねる。名乗ったのにひどいなあ、というジャンが再び名乗り、ナディアがはじめて「ありがとうジャン」と名前を呼んでお礼をいう。

「これからどうするの? サーカスに帰るの?」
「帰れないわ・・・もう」
「うちの人は?」
「・・・いないわ」
特大の地雷を全力で踏み抜くジャン。
どうするチャライケメン。さすがにこれは気まずいだろ!
だがしかし、オリハルコンメンタルのジャンさんはこの状況すらも覆す。

「じゃあ、僕とおんなじだね」

えっ?

え?

ナディアが驚いた顔でジャンをみる。
視聴者も驚いた顔でジャンをみる。
まじで? お前この状況でナディアの好感度あげられるの?
そんなルート用意されてんの?
ジャンさんまじパネぇ・・・! そこにしびれる、憧れるぅ・・・。

そして二人を乗せた船は一路、ジャンの住まいのある街を目指し走っていく。

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ここまでが第一話「エッフェル塔の少女」。
主人公とヒロインの魅力をたっぷりと伝え、1800年代のヨーロッパ+超発明メカの世界観を伝え、ボーイミーツガールの末に大きな冒険の予感を感じさせながら船で旅に出る。
完璧である。
もはや教科書レベルの素晴らしい第一話だ。
当時は週に1回の放送だから「来週もみたい」と思わせる引きがないといけない。その点でも完璧だ。早く続きがみたい!!!

サブスクなのでいつでも見れるが、一日一話の楽しみにしたい。
ああー、今さらながら超絶面白いぞナディア!!


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