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かってに川柳論

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川柳について考えたことをまとめています。
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記事一覧

川柳の分類を考えてみた

前口上

 川柳が一時期世間で話題になっていました。一介の俳句詠みとしては、俳句をやらない人に「俳句をやっています」というと、「サラリーマン川柳はやらないの?」と聞かれたりします。「いやあ、あれはあれで難しいんですよねえ」とお茶を濁しながら、サラリーマン川柳をまじめに作っていたことを思い出します。落選しましたけどね。
 「川柳」とひとまとめに言うけれども、作り方が投稿先によって違います。補助線なし

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企業主催の川柳を眺める〜川柳の入口各論

 川柳は色々な分類ができますが、経済を軸にして考えた時、企業、メディア、結社・総合誌、愛書家・出版社といった入口に分類されます。(※独自研究です)
 本稿では、まず、企業主催の川柳コンクールについて見ていきましょう。企業主催の川柳大会には、旧サラリーマン川柳(現、サラッと一句!わたしの川柳)、シルバー川柳に代表される川柳コンクールがあります。こういったものはテレビでも扱いやすく、川柳といったら、こ

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新聞川柳と穿ち〜川柳の入口各論

※本稿では差別表現を含む記述がありますが、差別を意図したものではありません。予めご了承ください。

 新聞川柳が一時期、話題になりました。「穿ち」が痛烈で、為政者が弾圧したような反応が見られましたが、新聞川柳とは何かを考える良い機会になったはずです。
 いつものごとく、川柳の三要件の「穿ち」「軽み」「おかしみ」を考えます。新聞川柳は時事川柳の系統を汲むものです。「穿ち」があるはずなのですが、実作を

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現代川柳の中の文芸性〜川柳の入口各論

 『金曜日の川柳』という一句鑑賞アンソロジーが手元にあります。その中には「若手」と呼ばれる年代の作者の句もあります。最先端の川柳は、今までの川柳とは何かが違います。川柳の「穿ち」「軽み」「おかしみ」という三大要素に「落とし」まで考慮して、一言で言うとコミュニケーションの受け答えや切り返しを期待する川柳形式において、最新の川柳はチューニングを変えているのではないかと思います。
 前回、読み方が現代川

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俳句と川柳の区別がつかない

 縁あって、小学生向けの国語の問題集を読む機会を得ました。小学生向けに俳句と川柳の違いを説明する時、どう説明するかはちょっと興味があります。手元のにある出口汪『出口式 はじめての論理国語 小6レベル』(水王舎)を見ていくと、俳句も川柳も「五・七・五(十七音)」で、俳句は「季語を用いており、自然を扱ったものが多い」、川柳は「季語がなくてもよく、人事を扱ったものが多い」と説明されています。
 なるほど

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無季俳句と川柳を区別したい

 発表するかわからないですが、今までの記事を再構成する川柳論を書いています。論文中で、無季俳句と川柳を比較検討した結果、川柳作家の方々が実感する「物」と「心」の比較が上手く出来たので、noteに共有したいと思います。
 無季俳句について、俳句の構成要素とも言うべき「季語」がない俳句というのが存在しています。現代俳句協会の取りまとめた『現代俳句歳時記』に「無季」の巻があります。掲載語を見ると、俳句は

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無季俳句からの反証と再検討〜無季俳句と川柳を区別したい(2)

 事件です。無季俳句と川柳の分類、上手くいっていたけれども、感情を詠む無季俳句が見つかりました。無季俳句の「人間」の部では、人間の感情を網羅しています。「人間」の部で感情を表す季語は、愛、恋、心、怒り、悲しい、愁い、寂しい、幸福、不安などなど。となると、無季俳句が感情を詠んだ場合の新たな基軸を作らないといけません。
 まず、描かれた心が主観的か客観的かという検討はどうでしょうか。

 という川柳と

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かるみについて(持論優先版)

 「かるみ」という言葉があります。俳句においても川柳においても、形式の根幹に位置付けている要素です。しかし、議論が複雑怪奇で、先行研究を追いかけるだけで、一杯一杯です。学術論文を書いているわけではないので、先行研究である程度コンセンサスが取れている部分を基軸に、持論を育てる方向で論を進めようと思いました。方針を取るのが難しいですが、ちょっと試してみます。

「かるみ」本論先行研究のコンセンサス

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「かるみ」について(持論優先版のコンパクト版)

 「かるみ」について、少ない資料を読み込んで、自分の思うところを書きました。書きながら持論に対して気づきを得ることが多く、また、整合性を取りながら書き直すことが難しいので、改めて、コンパクト版を書くことにしました。

かるみ

 かるみとは、「表現が平明で通俗である」という意味です。因果関係にまとめると、俳句においては、表現したいこと(本稿では「悩み」と定義します)を風雅の誠という態度で表現するこ

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