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クラウドサイン デジタルガバメント支援室長 高柴 明朗「3.11、あの日から。」#CloudSign_Astronauts

クラウドサインを創っている社員を、クラウドサイン責任者・橘がインタビューする企画「Astronauts(アストロノーツ)」。第5回目はクラウドサインのデジタルガバメント支援室責任者 高柴 明朗さんをインタビュー。

3.11で味わった無常感

橘:ではインタビューを始めたいと思います。高柴さんとは飲みに行ったりもしますし、デジタルガバメント支援室は自分の直下部署でもあるので日頃からコミュニケーションさせてもらってます。高柴さんのキャリアを振り返る時に「3.11」の出来事は避けて通れないですよね。

高柴:はい。今までのキャリアを振り返ってもあの日に味わった無常感や無力感は私の中で大きな出来事でした。私は元々大手システム会社に所属しコーダーとして開発業務をしてきましたが、その後にプロジェクトマネジメントの役割でシステム開発に携わってきました。

お客様もいわゆる大企業も多かったので、大規模開発のシステムの基本設計、開発工程管理、試験品質管理、リソースマネジメントに長く携わりました。

そんな中、入社して12年目の2011年3月11日に起きました。

橘:その時その瞬間は何をしていたのですか?

高柴:当時は川崎のオフィスで働いてましたので、訪問先企業からの帰社中、多摩川の上で揺れ、急ブレーキがかかって電車が止まりました。その時はただただ驚き、早く会社に戻らなければと焦っていました。

案の定会社に戻ると大混乱で、オフィスの中も乱雑に物が落ち、溢れ返ってました。

当時はクラウドもなかった時代、お客様のシステムも止まってしまったのも勿論ですが、自社の基幹システムも止まり、ゆえにメールサーバも止まっているので自社の安否確認をどのように実行するのかにも奔走しました。いわゆるBCPといわれる事業継続計画(Business Continuity Plan)です。

基幹システムの復旧、ファイルサーバがなくなってしまえば現在の事業運営もままなりません。その日は家が蒲田で、わりかし近いこともあり、徒歩で歩いて帰ることができました。

その後も国が主導して計画停電を行うことで、自社内での計画停電に関する影響、お客様への影響などの陣頭指揮をとっていました。

橘:核心に迫っていきたく、その後の無力感としてどのように感じましたか?

高柴:報道を見ても今回の震災が東日本地域への未曾有の危機だとわかり、自分自身の立場から何ができるのかを日々考えていました。多くの企業が食事を提供したり、簡易施設を提供したりする中、大手のシステム会社として何を提供できるのかを通常業務が終わってから、1人で考え尽くすことが続きました。

システム提供が被災された方々に意味を為すのかといえば、当時は何も出来ませんでした。クラウドがない時代のシステムはサーバも被災してしまえば復旧にも時間を要し、電力もない中でシステムを利用するどころではなかったです。自分が為すべきことの少なさに無力さを嘆きました。

橘:そんな無力さを感じて、高柴さんはどのような行動をしましたか?

高柴:特に大震災のような大規模災害の場合には一早い防災情報の伝達が必要となります。しかしながら当時の防災情報配信システムは物理的な設備が必要で、その設備は東日本大震災の時に破壊や故障したと聞きます。大震災の時にこそ機能しなければならない設備が、大震災によって故障したのです。

橘:映画の「君の名は」に出てくるような放送設備をイメージすればいいですか?

高柴:まさにあれです。あれは学校内の放送室から糸守町内に配信されましたが、まさにあのような設備を用いて防災情報の配信は行われます。当然ながら非常に高コストで日本全国地域に整備が進まないこと、また機器が故障して配信がなされないことなどが課題で、実際に先の大震災においてもこれらが理由で震災による二次災害をいち早く伝達できなかった地域があることも事実でしょう。

橘:当時の報道でも防災対策庁舎から最後まで津波の危険を伝達し、その結果ご不幸にあってしまった件を聞いたことがあります。

高柴:まさに防災の現場では自治体職員様ご自身の安全性も重要な論点となります。様々なことに配慮しながら公平かつ網羅的な配信手段を考える必要があります。当時の防災システムは防災行政無線による配信が一般的でしたが、離島や山間部などの地域も多い我が国の地理的条件では無線の届かない電波不感地帯が発生してしまうなどの課題もありました。

橘:そこで高柴さんが新規事業として新たな防災情報配信システムを事業化したんですよね。

高柴:その通りです。無線配信は引き続き重要な役割を果たしていますが、配信手段の多様性を考え、高い人口カバー率の携帯電話網やWi-FiなどのIP通信網を利用した防災情報配信事業を立ち上げました。これによってコスト面が理由で防災情報配信システムを利用できなかった自治体も導入ができたり、我が国にとって意味のある事業が出来たのではないかと考えています。

(編集注記:具体的な話は全編カットしました。なぜ安全な防災情報配信が我が国で震災前に実現できなかったのかの話を聞き、怒りが湧いた。)

公共向け事業で、クラウドサインほど魅力的な事業はない

橘:そんな高柴さんですが、なぜクラウドサインに入社されようと考えたのですか?

高柴:クラウドサインは公共向け事業をやってきた人間にとって、これ以上ない魅力ある事業でした。まず大きかったのは、日本でCOVID-19をきっかけに法律が変わり、その法律改正にもクラウドサインが大きく関与し、国や地方自治体でもクラウドサインのような電子契約サービスを導入してよいことになりました。

橘:そうですね。正確に言うと、まず2020年の12月に会計法から委任を受けた契約事務取扱規則が改正され、国でクラウドサインを利用することが可能になりました。そして、2021年1月29日付かな。地方自治法施行規則が改正され、地方自治体でもクラウドサイン利用が可能になることになりました。内閣府主催の規制改革推進会議が旗振り役となり、様々な改正がなされ、まさに我が国で電子契約化が法的に実現可能になった時期に高柴さんは入社されました。

高柴:そうです。このような機会は、公共向けに事業をやってきた身でも聞いたことがないです。これだけ日本で普及の兆しが見え始めた電子契約化の流れが、従来まで法律が理由で公共分野で全く導入されてこなかった。その課題が法改正で解決されたその瞬間に携わることができ、自らの手で公共営業が出来る事はまたとない機会です。それも当社だけでなく、どの電子契約サービスも導入されてない状態、つまり日本中が余白の段階でクラウドサインの公共営業ができるわけです。胸が躍りました。

しかもクラウドサインは地方の自治体全てが導入すべきサービスであり、そんな曇りがない製品も珍しいです。導入するデメリットも感じられず、自治体の職員も幸せになる。シンプルな感情ですが、この製品を届けたいという心からの気持ちになり、クラウドサインは輝いて見えました。入社当時はマネージャーや責任者というポジションではありませんでしたが、そんな役割は関係なく、入社したかったです。

橘:入社してみてどうでしたか?このAstronauts(アストロノーツ)の企画では自分が企画責任者でもあり、悪いことも好きに書けるので本音を書きたいです。こういう社内インタビュー企画だと「我が社は最高です!」みたいな記事も多いですが、自分の責任で公表できるので良いところも悪いところも社内外にありのまま掲載することを心掛けています。

高柴:まず入社して感じた良いところは、ビジョナリーな会社、ビジョナリーな事業なのだなと感じた点です。クラウドサインでは毎月総会をしているのですが、橘さんからも数字の話はもちろんしながらも、社会をこうしていきたいという想いを話してくださいます。私もいろんな会社でいろんな責任者と接してきましたが、「何十億円目指す。」とか「何%の成長率を目指す。」とか数字の話しかしない責任者が大半でした。

そんな中で数値の話よりも、こうしていきたいというイメージや想いを共有する責任者は新鮮でした。だからクラウドサインの皆様と会話しても「何の為に仕事してるんだっけ」という人は1人もいません。もちろん様々な課題はありますが「仕事の意義」とかで悩んでいる人がいないというのはとても新鮮な会社でした。

他には、人を大切にする会社だなとも感じています。年齢や性別に関係なく、1人1人をどう活かしていくかを議論していると、接する責任者クラスの方々から自然と感じます。こういう言い方はなんですが、クラウドサインという組織では多少失敗する方がいても、皆で議論し活躍や成長の方法を議論することができる組織なのだと思っています。

橘:ありがとうございます。逆に、入社して苦労した点も聞きたいです。

高柴:当初ですが、単純にリソースやマンパワーが足らずに苦労した点が一番大きいです。もちろん公共営業が立ち上げ部署だったこともありますが、もっとスピードを早めたいときにリソースが足らずに苦心した記憶が強いです。ただ現在のメンバーは行政営業経験のある奇跡のメンバーだと感じています。

あとは率直に言うと、橘さんとの距離を感じている面もあります。わりと大きめの組織になってきている時期ですので仕様がないのもわかっていながら、橘さんとの距離を縮めたいとも思っています。

橘:それはすいません。今度デジタルガバメント支援室チームで一日合宿しましょうよ。自分も行きますよ。自分自身、会議室にいるよりも、現場で一緒になって事業を創っていく方が楽しいし、自分のスペシャリティとも合います。デジガルガバメント支援室自体も営業部とは別に自分直下のチームにしてる理由もその点です。

話は変わりますが、クラウドサインに入社して一番嬉しかった日とかありますか?

高柴:一番嬉しかった日は、皆と飲みに行く日ですよ。皆楽しそうに仕事の話をするんです。結局は仲間たちとその喜びを分かち合って、人間同士で熱く語り合うことほど楽しい事はないと思います。そう言う意味でも今のメンバーは奇跡的なチームです。最高に楽しいですよ。

橘:高柴さんらしいですね。例えば重要な案件の受注過程では相当なプレッシャーを高柴さんにかけにいきましたが、そういう案件を受注した瞬間とかではないんですね。

高柴:あの橘さんからのプレッシャーは凄かったです(笑)。もちろん大規模自治体がクラウドサイン製品を選定いただいた瞬間も嬉しかったですし、他の自治体様もクラウドサインをお選びいただくのも嬉しいです。

でも受注したということは、それを本当にご利用いただくまでご支援する業務の始まりでもあるので責任感を感じる事の方が大きいのが素直な感想です。

橘:確かにSaaSビジネスは受注はお客様との始まりなので、それが適切な感情なのだと改めて思い返しました。喜びではなく、責任を感じるのが現場の責任者の正しい感情ですね。勉強になりましたし、自分もそうであろうと思いました。逆に一番凹んだ日はありますか?

高柴:それは、失注した時に自分の甘さが出たときですね。●●案件(編集注記:具体的案件名はカット)のときに本当は受注できたと後悔したときがあります。公共は入札手続きという特殊性もありますので価格見積もりをどう提示するかは1つの技術です。なぜ妥協してしまったのか、自分の甘さに凹みました。

橘:最後の方の質問ですが、デジタルガバメント支援室を今後どのようにしていきたいですか?

高柴:私の今の想いですが、契約の電子化を実現する過程で地方や日本全体を良くしていくきっかけを掴みたいと思います。今の仲間たちなら実現出来ると思いますし、結果として当社における有望な新規事業にも繋がると信じています。

新規事業としては「便利」くらいでは売れない。生活を変えるレベルのものでようやく皆様に買っていただけるものだという信条がありますのでそんな製品を生み出していければと考えています。

橘:そんなチームにこれから加わっていただける方、採用ではどんな人を採用していきたいと思いますか?

高柴:やはり強い想いを持っている方に加わっていただきたいです。何を為すにも先ずは強い想いや目標を持っている人であることが大事だと考えています。是非入社していただいた後にはそれを皆で語り合いたいです。公共営業をやるにあたってこんな魅力的な事業や組織はないと自負していますので、是非よろしくお願いします。

高柴 明朗

編集後記

2020年10月12日にクラウドサインの公共営業部門である「デジタルガバメント支援室」を立ち上げた。

菅義偉議員が内閣総理大臣に任命され菅政権が成立したのが同年9月16日。河野太郎議員が行政改革大臣として行政手続きにおける押印手続きの廃止に取り組まれるのを見て、クラウドサインでもそれを支援することができればと、1ヶ月も経たずに部門を創設した。

ただ創設するだけでは機能しないから、その間、責任者の抜擢、採用計画、予算の編成、戦略の策定、行政向け料金の策定など、ありとあらゆる手段で部門創設まで起案した。自分自身、公共営業は初めての経験であったが、会社全体でも経験者は1人もいなかった。暗中模索で創設した記憶が蘇ってくる。

1分1秒を惜しみ、食べる時間や寝る時間を削って我が国を支援できることはないかと奔走した。そんな働き方を誰に要求することもできないので、自分自身、入札手続きや地方自治体における予算編成時期も知らない中、関連書籍を何冊も購入し、夜な夜な読み耽った。単純に、毎日眠たかった。

当時は会計法と地方自治法が改正前で、国や地方自治体がクラウドサインを利用することが法的にできない段階での立ち上げだったので、この努力の日々も何にも繋がらない可能性があった。自分一人ならいいけれど、誰かを巻き込んでしまう罪悪感や徒労に終わってしまう虚無感と戦いながら、それでも何かに繋がると信じて最後は自分が責任を取る覚悟で仲間集めに奔走した。最後でいいと思った。

そんな中、高柴さんが入社した。

行政営業のプロフェッショナルであったけど、経験やスキルよりも、自分よりも行政営業にコミットメントしてくれる覚悟が嬉しかった。高柴明朗が創るクラウドサインのデジタルガバメント支援施策は自分よりも優れている自信がある。行政向けのクラウド製品の新規事業も今後生まれてくるんだろう。喜んで起案者でなく、承認者であろう。喜んで、傍観者になる日々を心待ちにしながら。

総合企画・ライター・編集:橘 大地
デザイナー:笛田 満里奈、佐伯 幸徳
写真撮影:長浜 裕子
テーマソング:Dragon Ash「静かな日々の階段を」

お読みいただきありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ