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クラウドサイン事業統括部長 坂元秋奈 「SaaS分業時代の、全体最適責任」 #CloudSign_Astronauts

クラウドサインを創っている社員を、クラウドサイン責任者・橘がインタビューする企画「Astronauts(アストロノーツ)」。初回はクラウドサイン事業統括部長である坂元秋奈さんをインタビュー。

SaaSは分業されるからこそ、統合された全体責任部署が必要

橘:坂元さんの今の仕事内容はなんでしょうか?

坂元:今は事業統括部長として、クラウドサイン事業内の営業、カスタマーサクセス、パートナーアライアンスなど各部門のオペレーションを司る部門を統括しています。例えば営業が受注率を上げるために期間限定のキャンペーン一つとっても、キャンペーンルールの設計、景表法の確認、販売管理的観点からの設計、Salesforce、Zuoraなどのシステム設計を行う必要があります。

橘:クラウドサインでは当初はSales Ops(営業企画)、CS Ops(カスタマーサクセス企画)と各部門毎にオペレーション部署を設置していましたが、途中から各Ops機能を統合し、事業統括部を創設しましたよね。

坂元:そうですね。(2020年8月に)クラウドサインに入社した当時はいわゆる営業企画部署に配属されていましたが、その後各企画部署、Ops機能を集約する形で2022年4月に事業統括部を新設しました。

橘:なぜこのような判断に至ったか、当時の判断を説明お願いできますか?

坂元:クラウドサインでは私が入社した当時、The Model型の分業体制を意識していました。

インサイドセールスは商談、クロージングセールスは受注、カスタマーサクセスは継続率と各指標に責任を持って分業し、協業していくことを理想として体制構築が行われていました。その仕組み自体はフェーズにより機能するものと考えていますが、当時のクラウドサインでいくとデメリットも多かったことも事実です。

橘:重要な振り返りだと思います。SaaS企業でもThe Model型の分業体制を引いたはいいものの、実証的な利用ができなかった反省も見聞きします。私たちの反省も、当時はありましたね。

坂元:はい。組織のリズムもPDCAの最中で、一般的な理想論ではなくて自分たちのフェーズにあったオペレーションモデルを構築することが重要だと考えています。特に組織が大きくなったときに機動性を失わないオペレーションをどう構築するかは、どの企業にも必要な永遠のテーマです。

私たちが直面した課題は、部門を跨いだ調整・意思決定の在り方です。部門同士でコミュニケーションし合い、議論することはもちろん重要ですし、クラウドサインでも推奨されてきました。

しかしながら言うは易し行うは難しで、意思決定にはどちらかの部門に犠牲になってもらう瞬間も起き、その判断を各部門同士の調整に任せることは難しいのも事実です。分業された当事者部門同士が議論すれば、ある種利害相反になる当たり前の現象が起きます。

橘:これは反省です。組織が比較的少人数の規模のときはお互いの部門の繁忙が目に見え、どこに課題があるのかが一目瞭然でした。2019年まではどの部門も顔を合わせていたこともあり、阿吽の呼吸で部門同士の会話で全体最適な意思決定がなされていました。

しかしながら在宅勤務が主流になり、かつ組織も大きくなってから、隣の部門の繁忙さが理解できなくなることは当然として、それが組織の意思決定に致命的な差を生むことを肌感覚として認識していませんでした。

坂元:調整ごとには何より強烈な当事者意識と主体性が必要とされます。そして調整には全体最適の視点が常に問われ、短期的に今よりも苦しくなる部署が出てくるものです。

顧客の最前線に立つ営業やカスタマーサクセスの人が働きやすくなる最終的な意思決定は、全体最適の目線で判断しなければと思います。

それがSales Ops(営業企画)、CS Ops(カスタマーサクセス企画)を廃止し、事業統括部にて全てのオペレーションを構築した理由です。

橘:その体制にしてから驚くほど意思決定がスピーディーになり、また大胆な施策も実行できるようになりましたね。全体最適で俯瞰した判断が毎日求められる坂元さんには心身共に負荷は大きいと思いますが、今クラウドサイン事業のオペレーションはスムーズに回っています。

入社4ヶ月でマネージャー。その4ヶ月後、事業統括部長に

橘:クラウドサインに入るまでのキャリアについてもお聞かせください。

坂元:私は新卒で2008年にリクルートに入社し、2019年に退社となりますので10年以上リクルートに在籍していたことになります。

橘:クラウドサインで活躍している社員でもリクルート出身者は多いですよね。現パートナー責任者やオウンドメディア編集長もリクルート出身です。坂元さんのリクルート時代での成功体験とか印象に残ったことはありますか?

坂元:リクナビNEXT時代に新商品を立ち上げる時期が今振り返っても印象的です。ちょうどリーマンショック後で人材市場が冷え込んだ時期で、新商品を模索する時期にいました。そのため新規事業案を考え、先輩に当ててを繰り返して、新商品案を100個用意しました。

橘:新商品案100個はすごいですね。

坂元:とは言いつつも半年間近く結果が出ずにいました。そのときはくすぶっていながらも、その当時の上司に仕事は面白がってするものだと助言をいただきながら、がんばってきました。その結果でなんとか目玉商品(※秘密情報として外部には非公開)を生み出すことができ、26歳で初めてMVPをとることができました。

橘:その後面白いキャリアの選択で、東京オリンピックパラリンピック競技大会組織委員会に転職されましたよね。

坂元:はい。人事部の採用課に在籍しました。いよいよ東京オリンピックパラリンピックが始まるというタイミングで、ここしかないやり切れる時期だと考えて飛び込みました。1年間で数千人を採用するとてつもない経験をさせていただきました。

橘:そして東京オリンピックが延期されたこともあり次のキャリアを選択したと。クラウドサインを選択した理由はなんですか?

坂元:まず、SaaS事業がやりたいというのがありました。改めて激しい環境の中で思い切り働きたいという気持ちと、リクルートで面白さを知ったBtoB Webサービス領域で自分の市場価値をもっと磨きたいという思いから、そのど真ん中といえばSaaS事業だなと。まだ体験したことのない事業モデルに単純に興味があったからというのもあります。

橘:クラウドサインに入社してからは本当に様々な活動をして、大活躍の日々でした。先程のように事業統括部を発足してからも、坂元さんは様々な業務を担当されてきましたね。

坂元:入社してから担当した仕事を振り返っても、セールスイネーブルメントの立ち上げ、各部門の目標設定、予実管理、新入社員研修の整備、内部統制の拡充、採用人事など、幅広い仕事をなんでもやってきました。

橘:どの仕事もクオリティの高いアウトプットで大活躍の印象ですが、苦労した仕事はありましたか?

坂元:一番苦労した経験はクラウドサインの顧客管理システムである「Salesforce」を全面的にリニューアルする仕事でした。

当初はエンハンススピード向上に向けて、他部門と併存していた環境をクラウドサイン専用環境に載せ替えることから始まったのですが、これまで積み上げで都度作ってきたものをそのまま移管するのではなく、SaaS事業としてあるべきオブジェクト構造や売上データ・顧客マスタの持たせ方などを設計・調整し、そこに旧データを移管していったので、ゼロから構築するよりもかなりの労力と混乱がありました。

マーケ・IS・セールス・CS・企画の横連携に加え、全社のシステム部門や外部ベンダーの方々など多くの協力のもとリリースし、今では各施策に対して柔軟に対応できる状態までくることができています。

クラウドサインに、求められている

橘:苦労もある中で、今クラウドサインで働いている醍醐味、やり甲斐はどこら辺にありますか?働いていて、楽しいですか。

坂元:クラウドサインでは今までにないキャリアだと感じています。今働いて思うのは、自分の中で無理なく、自分に向いている仕事をこなし、貢献できている実感が持てていることです。

橘:前職とかとの違いはどこにあるんですかね。なぜクラウドサインでそれを感じることができているのかの唯一性を聞いてみたいです。

坂元:それは、クラウドサインに求められている実感があるからです。課題が見つかり、それを自分にアサインいただき、貢献できている実感が湧きます。今が一番輝いている実感があります。

橘:自分自身、困った難問があれば坂元さんに仕事をふることが多いです。答えがない調整、難問、解く難易度が高い問題は結論を出すこと以上に、そこに至るプロセスを含めてコンセンサスを取ることも重要です。坂元さんなら解決できるという自信があります。

坂元:橘さんとの相性もあると思います。橘さんのことは信頼できるが、同時にサポートできる部分も大きいと思います。事業が思い描く理想に向かってオペレーションを構築したり、調整することで貢献できる部分も大きいと思っています。

橘さんは自分たちの力では動かせない事実に関しては諦め、今からできる最大限の何かを一緒に考えてくれる。そうしてチーム全体が強くなっていければと思っています。

橘:坂元さんとは毎日種類の違う課題を解きに、一緒に仕事する時間が増えてきてますよね。そんな傍らで、お勧めした本は直ぐに読破し感想を送ってくれる印象もあります。ある意味ですごい後輩力もあるなと感心しています。仕事以外の本を読む時間や努力については普段からしているんですか?

坂元:実は、ビジネス書は最低限しか読まないです。

橘:そうなんですか。すぐに読んでくるので普段から読んでいるのかと思いました。

坂元:お勧めされた本に関してはすぐ読んでいます。内容もですが、お勧めされた本はその本がお勧めされた理由も含めて勉強になる。なぜいいとその人は思っているのかの理解に繋がるので、そういう意味でもすぐ読むようにしています。一次情報に触れることが自分の自信にも繋がるからです。

橘:ちなみに坂元さんにはいくつか書籍をお勧めしましたが、一番印象的な本はありましたか?

坂元:見城徹さんの「編集者という病」を読んだのが印象的でした。橘さんの発言の中にあるワードが「これのことだったのか」と思う発見があったり(笑)、異常なまでのストイックさとかまさに「病」としか言いようのない没頭感がひたすら書かれていて、橘さんの思考をトレースできる感覚です。そして自分も熱くなったので、似てる部分があるのかなと。

橘:仕事量も多い中でのその読書もすごいです。そもそも仕事の処理速度が異常に早い印象があります。仕事の時間の使い方を聞いてみたいです。

坂元:仕事には、①脳に汗をかく時間、②人とコラボレーションする時間、③高速でタスク処理する時間の3種類があると思います。今は③>②>①を意識していてというか、そうならざるを得なくて高速でタスク処理をしています。

橘:その高速なタスク処理に秘訣はあるんですか?自分もついつい溜めがちで、最近では土日で処理すればいいやとか思い始めてもいます。(注:真似しないでください)

坂元:タスクはその仕事がきた瞬間に半分片付けることを意識しています。その仕事がふってきたタイミングが一番解像度も高いので、すぐに処理するようにしています。

橘:確かに坂元さんに「あの件を調整お願いします」と伝えると、会議中に数分後にはslackで調整の連絡が終わっている様を目撃しています。

坂元:他にはチームでのタスク処理も意識しています。マネジメントとしては当たり前のことなのですが、ゴールの共有とリソースの負荷分散です。チームで物事を達成する上で最も気をつけていることです。

橘:やはり坂元さんはすごいなあ、と感心します。他にSaaS事業でもあるクラウドサイン の事業で意識している点はありますか?

坂元:クラウドサインのユニークさはその価格体系にあると思っています。固定料金は安価で、1件契約送信していただく毎に料金をいただくプライシングになっています。お客様の利用価値と私たちの売上が連動していて、真の意味でカスタマーサクセスが実現できる点です。

経営企画的な立場からすると従量課金は予実管理が難しいのも事実でその難しさにも直面していますが、顧客の成功との比例関係が組織を強くするとも考えています。

橘:最後に、どんな人がクラウドサインに合うかについてコメントをお願いします。これから入社いただく方の何か参考になればと。

坂元:視座が高く成長し続けたいと思える人が、クラウドサインにあっていると思います。クラウドサインは外部環境も含めて変化が激しく、故に求められる役割もレベルが高いもので在り続けます。そんなある意味でのカオスや混乱を我がごとかのように楽しめて、自ら手を動かしていけば、これほど成長できる環境もないと思います。そしてクラウドサインの仕事は、社会貢献に繋がっているんだと。

最後に、人が好きな人にもお勧めです。クラウドサインには橘はもちろんのこと、他にも面白いメンバーがたくさんいます。そして空気が温かい。

先日、兼任していたチームマネージャーを後任に引き継ぐタイミングで、あるメンバーから「感謝状」をもらいました。この半年くらい、いろいろな悩みや不安をぶつけてくれて、私も真っ向から向き合い続けたメンバーだったので、とても嬉しく同時に頼もしく感じた出来事でした。

事業成長と個人の成長と、たくさんのことを得られる場ですので、ぜひたくさんの方に働く場として検討いただけたら嬉しいです。

坂元秋奈
twitter: @aki_sakamoto
note: https://note.com/akina_sakamoto

編集後記

SaaS事業は、分業化により発展してきた。マーケティングはリード/MQL創出に責任を持ち、インサイドセールスは商談化に責任を持ち、クロージングセールスは受注に責任を持つ。その分量化された責任に応じて金銭的なインセンティブが支給され、それにより事業全体が伸びるプロセスである。「The Model」と呼ばれ、その開発に日本人が寄与した。

歴史にも想いを馳せる。トヨタ自動車の大野耐一氏が「かんばん方式」という名称で呼ばれる生産システムを開発した。MITによりこの方式をリーン生産方式と呼称されるようになり、世界に宣伝され、注目を浴びた。この方式は、要するに前後工程の状況を可視化し、連携することだ。在庫を抱えないためのジャストインシステムの開発、1953年の出来事である。

その大野耐一氏は、重要な発言を残している。
「かんばんは重要だけれど、あくまでジャスト・イン・タイムを実現するための運用手段だ。だから、かんばんだけを真似しても現場は混乱する。

かんばんを付ける前に工場全体に流れを作らなければならない。また、トヨタ生産システムという考え方を理解しないで、部品にかんばんを付けることには意味はない。」

今の分業化されたSaaS事業運営に、とても示唆的だ。

分業がなされ、効率化されるSaaS事業だからこそ、統合された全体の流れを創る業務に逆説的にスポットライトが浴びる。全体統括を行う者は、各部署からの報告、要求に応える責任を負い、時に非難を浴びる。結果責任だけでなく、説明責任をも負う。容易にできる仕事ではない。そんな全体責任を全うする、新しい職業に立ち向かおうとしている。今はまだ、その職業に名前はない。

総合企画・ライター・編集:橘 大地
デザイナー:笛田 満里奈、佐伯 幸徳
写真撮影:長浜 裕子
テーマソング:BUMP OF CHICKEN「ギルド」

お読みいただきありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ