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不法行為とは!~ちょっと解説

ちょっと前に「損害賠償責任」について説明しました。
不法行為により損害が生じた場合などに損害賠償請求訴訟を提起することができると書きましたが・・・不法行為ってどういうことなんでしょうか?
このことについて説明するね。


|不法行為とは

不法行為とは、故意(わざと)または過失(うっかり)によって、他人の権利または法律上保護される利益を侵害する行為であるとされている(民法第709条)。

つまり故意であるか、過失であるかを問わず他人の権利等を侵害すること、そしてその結果発生した損害を賠償する責任を負うことになるのだ。

(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

|不法行為の具体例

不法行為に該当する行為の代表的な例には、以下のようなものがある。

◍ 他人を殴ってけがをさせる行為
◍ 誹謗中傷をして他人に精神的損害を与える行為
◍ 他人の知的財産権を侵害する行為
◍ 交通事故を起こして被害者にケガをさせる行為
◍ スーパーの店員が背任行為をすること(友人に勝手に商品を割引して販売する行為) など

|不法行為の種類

不法行為は、以下の2つに大別される。

民法で定められている不法行為の種類としては
① 一般不法行為(民法709条)
② 特殊不法行為
 ◍ 責任無能力者の監督義務者等の責任(民法714条)
 ◍ 使用者責任(民法第715条)
 ◍ 工作物責任(民法717条)
 ◍ 動物占有者の責任(民法718条)
 ◍ 共同不法行為者の責任(民法719条)

原則的な類型である一般不法行為に対して、特殊不法行為については、行為者や被害者の利益衡量を踏まえて要件が修正される。

|不法行為の立証責任を負うのは誰?

「不法行為の要件」の立証責任は、原則として「被害者」が負うことになる。したがって、被害者として損害賠償請求を行う際には、不法行為の要件(4つ)の全て立証しなければならないとされている。

なお、知的財産権の侵害に関しては、損害額の推定規定があるなど、立証責任が緩和される場合もある。

|不法行為の4つの要件

不法行為が成立するための要件としては、以下の4つであり、その全てを満たす必要がある。

① 故意または過失があること
② 権利・利益の侵害があること
③ 損害が発生していること
④ 侵害行為と損害の間に因果関係があること

以下それぞれの要件について説明する。

要件1:故意または過失があること
不法行為の成立には、行為者故意または過失があることが必要。

「故意」とは、
他人に損害を与える結果になることを認識しながら、それを容認して損害を与える行為をすること。
いいかえると「わざと」損害を与えることが「故意」である。

「過失」とは、
予見可能性(損害の発生につき、信義則上必要な注意を払えば予見できた、または予見すべきだった)があったにもかかわらず、回避する義務を怠った状態(結果回避義務違反がある状態)を意味する。
つまり『うっかり(不注意)』によって相手に損害を与えることをいう。

要件2:権利・利益の侵害があること
不法行為が成立するのは、被害者の権利または法律上保護された利益が侵害されたということが必要なのだ。
法律上保護に値しない利益が損なわれたとしても、不法行為は成立しない。※(例)他人の行為によって違法な麻薬を購入する機会を逃したとしても、不法行為に基づく損害賠償は請求できない。

どのような権利・利益が保護されるのかについては、憲法・法律・判例などによって決まる。

要件3:現に損害が発生していること
不法行為の効果は損害賠償であるため、その成立には損害の発生が要件となっている(これは当然なことだね)。
そして「損害」は物理的なものに限らず、精神的損害も認められる。

例えば、交通事故の場合、怪我の治療費や車の修理費などの財産的損害に加えて、被害者が受けた非財産的損害に対応する慰謝料も損害賠償の対象である。
なお、財産的損害は、さらに、積極的損害消極的損害に分けられる。

積極損害
|怪我の治療費、修理代などのように、お金の支払いが生じる損害

消極損害
|給料など、将来もらえるはずだったお金がもらえなくなる損害

要件4:侵害行為と損害の間に因果関係があること
不法行為によって損害が発生した
という因果関係が必要になる。
因果関係は、「不法行為がなければ損害が発生しなかった」という条件関係に加えて、行為者にどこまで責任を負わせるべきかという社会的評価を考慮して判断することになる。

|一旦まとめ

不法行為の成立が否定されるケースなどについては、次回以降に説明する。


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