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SFの巨匠レムさんの作品を文学として読む「捜査・浴槽で発見された手記」

<文学(92歩目)>
かつて熱く読んだ作品を、現在のウクライナの問題と紐づけて読む。相変わらず「難解」です。

捜査・浴槽で発見された手記 (スタニスワフ・レム・コレクション)
スタニスワフ・レム (著), 久山宏一 (翻訳), 芝田文乃 (翻訳), 沼野充義 (解説)
国書刊行会

「92歩目」はSF界の巨匠スタニスワフ・レムさんの60年以上も前の作品が、国書刊行会さんのおかげで新訳で読めることになった。

もともと収録されている2作品はSFと言うよりもメタ・フィクションに挑まれたレムさんによる奇妙な推理小説です。

「捜査」
この作品を読むと、レムさんの多彩な才能が理解できる。
SF作家として固定されること嫌ったのかな?と感じました。
実はなんでも描ける万能選手ですね。

「浴槽で発見された手記」
この作品の世界観にすっかり取り込まれてしまいました。
遠未来SFなのですが、「記録」を失うことにより「知識」も失い崩壊した地球についての考察。

まさにSF設定なのですが、内容は巨大な官僚機構についてであり、まさに「1984」の様なディストピアをレムさんなりに描いている。

風刺が効いていてとても面白いと同時にこの作品を執筆された時期はまだ「鉄のカーテン」の向こう側の共産主義国家ポーランドだった時代。
もちろん、「共産主義」「全体主義」に対しての哲学的な示唆が散りばめられている中に、旧ポーランド(現ウクライナ)のリヴィウで生まれたレムさんらしく「決められたこと」は「あくまでもその時点で」という考えが色濃かった。

私たち日本人にとっては、「決められたこと」の大きな変更の経験は多くは無い。しかし、「常に変更可能」だとすると「よき発展」と「知識も全て失われての崩壊」も紙一重に感じました。

レムさんの作品は、脳に「直接フリーキック」ではなく、「間接フリーキック」で刺さります。

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