「負の歴史」を振り返るとは「レストラン「ドイツ亭」」
<文学(45歩目)>
アウシュビッツの悲劇を双方から振り返る作品、どう向き合うのかを考えさせられました。
レストラン「ドイツ亭」
アネッテ・ヘス (著), 森内薫 (翻訳)
河出書房新社
「45歩目」はノンフィクションでもある小説。ドイツでは戦後15年を経て、フランクフルトにてアウシュビッツにかかわる裁判からドイツでアウシュビッツにどう向き合ってきたかを知る作品です。
戦後15年の間、ドイツでは戦前世代はアウシュビッツを知るも、若者は知らなかったようです。
ドイツ人が人道にかかわる罪をフランクフルトで行ったことは、この作品を読むまでもなく、すごいことであると感じた。
アドルフ・ヒトラーを中心としてであるが、多くの市井の人々も何らかの形であるものは迎合し、またあるものは命令に忠実に応えるためにかかわっていった。
戦後しばらくして、多くの人の記憶から抹殺したくなる負の歴史を、ドイツ内で裁いたことに大きな意義があり、原罪に向き合ったと言える。
この裁判とその判決等々は「ノンフィクション」であり、そこに携わる主人公が「フィクション」である。
でも、記録から一番伝えないといけないことを未来につなげるのに、この手法はありだと感じた。
特に主人公の幼い頃の記憶は、他のノンフィクション作品と同じで「重い」。
作者のアネッテ・ヘスさんは、テレビ局関係者。テレビ・動画・映画の影響力を熟知しながらも、この作品を文字で残したことを考えると胸に突く。
ドイツ全土での空襲、及び敗戦時のソ連兵の蛮行、あるいは捕虜たちのソ連国内での強制労働。
ドイツとしても「被害者」意識から、「あの政権は私たちとは違う」を起点として「平和を愛する国家・国民」になることも可能だったと思う。しかし、自らの「加害者」としての歴史を総括して、且つ多くの国民が関与していたことまで白日の下にさらす。
これが、ドイツ(当時は西ドイツ)の60年代であったことを初めて知ったた。
私たちは「加害者」として向き合ってきたのだろうか?と自問する作品です。
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