馬場万磐

宮沢賢治好きの農業技術者です。最近はChatGPTにはまっています。

馬場万磐

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最近の記事

宮沢賢治 鉄道線路と国道が

#宮沢賢治 #AIイラスト 九九 鉄道線路と国道が 一九二四、五、一六、 鉄道線路と国道が、 こゝらあたりは並行で、 並木の松は、 そろってみちに影を置き 電信ばしらはもう堀りおこした田のなかに でこぼこ影をなげますと いたゞきに花をならべて植えつけた ちいさな萓ぶきのうまやでは 馬がもりもりかいばを噛み 頬の赤いはだしの子どもは その入口に稲草の縄を三本つけて 引っぱったりうたったりして遊んでゐます 柳は萌えて青ぞらに立ち 田を犁く馬はあちこちせわしく行きかへり 山は草

    • 宮沢賢治 すがれのち萱を

      #宮沢賢治 #AIイラスト 一〇六九 すがれのち萓を 五、一五、 すがれのち萓を ぎらぎらに 青ぞらに射る日  川は銀の  川は銀の  恋人のところからひとりつゝましく村の学校に帰って  彼女は食品化学を勉強してゐるのである 一点つめたくわたくしの額をうつものは 青ぞらから来たアルコール製の雨であるか 竜が持ってきた薄荷油の滴であるか 青い蠅が一疋 思想の隅角部を過ぎる (解説) 1927年5月15日に書かれた詩です。 食品化学を勉強し「恋人のところ」から村の学校

      • 宮沢賢治 水汲み

        #宮沢賢治 #AIイラスト 七一一 水汲み 一九二六、五、一五、 ぎっしり生えたち萓の芽だ 紅くひかって 仲間同志に影をおとし 上をあるけば距離のしれない敷物のやうに うるうるひろがるち萓の芽だ ……水を汲んで砂へかけて…… つめたい風の海蛇が もう幾脈も幾脈も 野ばらの藪をすり抜けて 川をななめに溯って行く ……水を汲んで砂へかけて…… 向ふ岸には 蒼い衣のヨハネが下りて すぎなの胞子(たね)をあつめてゐる ……水を汲んで砂へかけて…… 岸までくれば またあ

        • 宮沢賢治 エレキや鳥がばしゃばしゃ翔べば

          #宮沢賢治 #AIイラスト 一〇六八 エレキや鳥がばしゃばしゃ翔べば 一九二七、五、一四、 エレキや鳥がばしゃばしゃ翔べば 九基に亘る林のなかで 枯れた巨きな一本杉が もう専門の避雷針とも見られるかたち ……けふもまだ熱はさがらず   Nymph, Nymbus, Nymphaea,…… 杉をめぐって水いろなのは 羊歯から花を借りて来て 梢いっぱい飾りをつけた やくざな檞の樹ででもあらう ……最后に  火山屑地帯の  小麦に就て調査せよ…… 雲は淫らな尾を曳いて

        宮沢賢治 鉄道線路と国道が

          宮沢賢治 休息

          #宮沢賢治 #AIイラスト 休息 そのきらびやかな空間の 上部にはきんぽうげが咲き  (上等の butter-cup(バツタカツプ)ですが   牛酪(バター)よりは硫黄と蜜とです) 下にはつめくさや芹がある ぶりき細工のとんぼが飛び 雨はぱちぱち鳴つてゐる  (よしきりはなく なく   それにぐみの木だつてあるのだ) からだを草に投げだせば 雲には白いとこも黒いとこもあつて みんなぎらぎら湧いてゐる 帽子をとつて投げつければ黒いきのこしやつぽ ふんぞりかへればあた

          宮沢賢治 休息

          宮沢賢治 鬼語四

          #宮沢賢治 #AIイラスト 一〇六七 鬼語四 五、十三、 そんなに無事が苦しいなら あの死刑の残りの一族を おまへのうちへ乗り込ませやう (感想) 宮沢賢治には珍しいホラー系の詩です。 日常が平和すぎて刺激が足りない、とかぜいたくなことをいっている人への警告かもしれません。 「死刑の残りの一族」とは何者かわかりませんが、そんな連中が家に来たら怖いですねえ。 今回のイラストのプロンプトでは「1930年の少女雑誌のカラー挿絵風に」と指定しました。なかなか怖い感じにできました

          宮沢賢治 鬼語四

          宮沢賢治 今日こそわたくしは

          #宮沢賢治 #AIイラスト 一〇六六 今日こそわたくしは 一九二七、五、一二、 今日こそわたくしは どんなにしてあの光る青い虻どもが 風のなかから迷って来て 縄やガラスのしきりのなかで 留守中飛んだりはねたりするか すっかり見届けたつもりである

          宮沢賢治 今日こそわたくしは

          宮沢賢治 さっきは陽が

          #宮沢賢治 #AIイラスト 一〇六五 さっきは陽が 五、十二、 さっきは陽が 草地から来たのに こんどはひかる雲の裂け目から来やうとする 今年もすっかり 手がひゞ入ってしまった  みだれた雲と  たくさんの羽虫 風は吹くけれども山鳩はなくのである

          宮沢賢治 さっきは陽が

          宮沢賢治 失せたと思ったアンテリナムが

          #宮沢賢治 #AIイラスト 一〇六四 失せたと思ったアンテリナムが 五、十二、  失せたと思ったアンテリナムが  みんな立派に育ってゐた キンキン光る青朱子のそら  あすこの花壇を  それでぎらぎらさせられるのだ 風の向ふの崖の方で わづかな蝉の声がする いったいわたくしは いつ蜂雀に夏を約束したのか (解説) アンテリナムとはキンギョソウのことです。 草丈0.5~1mで金魚のヒレに似たひらひらした美しい花を咲かせます。 花色は赤ピンク白黄色などたくさんあります。

          宮沢賢治 失せたと思ったアンテリナムが

          宮沢賢治 手簡

          #宮沢賢治 #AIイラスト 手簡 雨がぽしゃぽしゃ降ってゐます。 心象の明滅をきれぎれに降る透明な雨です。 ぬれるのはすぎなやすいば、 ひのきの髪は延び過ぎました。 私の胸腔は暗くて熱く もう醗酵をはじめたんぢゃないかと思ひます。 雨にぬれた緑のどてのこっちを ゴム引きの青泥いろのマントが ゆっくりゆっくり行くといふのは 実にこれはつらいことなのです。 あなたは今どこに居られますか。 早くも私の右のこの黄ばんだ陰の空間に まっすぐに立ってゐられますか。 雨も一層すき

          宮沢賢治 手簡

          宮沢賢治「風景」雲はたよりないカルボン酸

          #宮沢賢治 #AIイラスト 風景 雲はたよりないカルボン酸 さくらは咲いて日にひかり また風が来てくさを吹けば 截られたたらの木もふるふ  さつきはすなつちに廐肥(きうひ)をまぶし   (いま青ガラスの模型の底になつてゐる) ひばりのダムダム弾がいきなりそらに飛びだせば  風は青い喪神をふき  黄金の草 ゆするゆする   雲はたよりないカルボン酸   さくらが日に光るのはゐなか風だ

          宮沢賢治「風景」雲はたよりないカルボン酸

          宮沢賢治 「国立公園候補地に関する意見」熔岩流とオーケストラと火をふく大砲

          #宮沢賢治 #AIイラスト 三三七 国立公園候補地に関する意見 一九二五、五、一一、 どうですか この鎔岩流は 殺風景なもんですなあ 噴き出してから何年たつかは知りませんが かう日が照ると空気の渦がぐらぐらたって まるで大きな鍋ですな いたゞきの雪もあをあを煮えさうです まあパンをおあがりなさい いったいこゝをどういふわけで、 国立公園候補地に みんなが運動せんですか いや可能性 それは充分ありますよ もちろん山をぜんたいです うしろの方の火口湖 温泉 もちろんですな 鞍

          宮沢賢治 「国立公園候補地に関する意見」熔岩流とオーケストラと火をふく大砲

          宮沢賢治 春谷暁臥 鳥と中学五年生の性欲

          #宮沢賢治 #AIイラスト 三三六 春谷暁臥 一九二五、五、一一、 酪塩のにほひが帽子いっぱいで 温く小さな暗室をつくり 谷のかしらの雪をかぶった円錐のなごり 水のやうに枯草(くさ)をわたる風の流れと まっしろにゆれる朝の烈しい日光から 薄い睡酸を護ってゐる ……その雪山の裾かけて  播き散らされた銅粉と  あかるく亘る禁慾の天…… 佐一が向ふに中学生の制服で たぶんはしゃっぽも顔へかぶせ 灌木藪をすかして射す キネオラマ的ひかりのなかに 夜通しあるいたつかれのため

          宮沢賢治 春谷暁臥 鳥と中学五年生の性欲

          宮沢賢治 つめたい風はそらで吹き

          #宮沢賢治 #AIイラスト 三三五 つめたい風はそらで吹き 一九二五、五、一〇、 つめたい風はそらで吹き 黒黒そよぐ松の針 ここはくらかけ山の凄まじい谷の下で 雪ものぞけば 銀斜子の月も凍って さはしぎどもがつめたい風を怒ってぶうぶう飛んでゐる  しかもこの風の底の  しづかな月夜のかれくさは  みなニッケルのあまるがむで  あちこち風致よくならぶものは  ごくうつくしいりんごの木だ  そんな木立のはるかなはてでは  ガラスの鳥も軋ってゐる さはしぎは北のでこぼこの

          宮沢賢治 つめたい風はそらで吹き

          宮沢賢治 雲の信号

          #宮沢賢治 #AIイラスト 雲の信号 あゝいゝな、せいせいするな 風が吹くし 農具はぴかぴか光つてゐるし 山はぼんやり 岩頸(がんけい)だつて岩鐘(がんしやう)だつて みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ そのとき雲の信号は もう青白い春の 禁慾のそら高く掲(かゝ)げられてゐた 山はぼんやり きつと四本杉には 今夜は雁もおりてくる

          宮沢賢治 雲の信号

          開拓地の農家女性を英雄と讃える宮沢賢治

          #宮沢賢治 #AIイラスト 一〇六三 五、九、 これらは素樸なアイヌ風の木柵であります えゝ 家の前の桑の木を Yの字に仕立てて見たのでありますが それでも家計は立たなかったのです 四月は 苗代の水が黒くて くらい空気の小さな渦が 毎日つぶつぶそらから降って そこを烏が があがあ啼いて通ったのであります どういふものでございませうか 斯ういふ角だった石ころだらけの いっぱいにすぎなやよもぎの生えてしまった畑を 子供を生みながらまた前の子供のぼろ着物を綴り合せながら また炊

          開拓地の農家女性を英雄と讃える宮沢賢治