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「落石」は大きな災害リスク!アフガニスタンにおける落石リスクを回避する試み

皆さん、こんにちは。事務局長の小美野です。「落石」と聞くと山間部に住んでおられる方にとっては身近なことかなと思いますが、それ以外の方にはあまり馴染みが無いかもしれません。しかし、世界の多くの地域、特に丘陵地帯や山岳地帯では頻繁に起きるリスクの一つです。

CWS Japanが防災力向上を進めているアフガニスタンでも、落石は大きな災害リスクと捉えられていて、そのリスク削減をどう進めているか、今日はカブール市の事例とともにご説明したいと思います。


首都カブールでも高い落石リスク

カブール市はアフガニスタンの首都ですが、貧困や急速な都市部への人口流入によって、落石リスクの高い場所に居住する人が増えています。たとえばKart-e-Mamorinという地区では、以下の写真のような巨礫が住宅地のすぐ上にあります。

この岩の総重量は推定416トン(!)もあり、2023年3月21日に発生したマグニチュード6.5の地震によって、岩はわずかに下方に移動し、岩の下方と上部に大小の亀裂が生じたことが確認されています。すぐ下には住宅地があり、滑落したときの被害は非常に大きなものになることが想定されます。

貧困などの社会経済的要素によってリスクにさらされる人が増えていることを考えれば、落石リスクも単に岩のリスクを超えたものがあると感じています。

カブール市内で落石対策をしている現場©CWSA

すぐそばに人が住む場所で、落石リスクをどう回避するか?

落石リスクを回避するためには、一般的に斜面を安定化させて落石自体を防いだり、万が一落ちたときにはそのエネルギーを吸収して被害を抑えたり、といった方法があります。

アフガニスタンでは上述のように急斜面の近くに居住し、すでにリスクにさらされている人が多く、そのような場所でリスクから身を守る為には、集団移転をするか、原因となる巨礫を取り除くか、のどちらかになります。

集団移転をして危険な巨礫を落としてしまうのも一案ですが、すでにある家屋や道路など、地域インフラにも多大な被害を及ぼすため、巨礫を取り除く方法も取っています。

まずは岩の状況や対処方法を調査分析していくのですが、岩を崩してリスクを取り除くしかない場合の方法はいくつかありあります。たとえばドリリング&ハンマー法という方法は、ハンドドリルで岩に穴を開け、くさびを打ち込み、ハンマーで叩いて割っていく方法です。 この方法は非爆発法とも称され、比較的安価で実施できますが、硬い岩や大きな岩の破砕には使えないという難点もあります。

もう一つの方法は、ドリル&ブラスト工法というもので、岩にあけた穴に爆薬を詰め込んで破壊するという方法です。よくアフガニスタンで用いられている方法ですが、爆発の際に生じる地盤振動によって更なる落石リスクを引き起こしたりするので、斜面の安定度や岩の状態などを見極めることが重要です。

岩にくさびが打ち込まれた様子©CWSA

落石対策と安全確保

落石対策を進める上でもう一つ重要な点があります。それは安全対策です。作業をする人、周りの住民双方にとって安全を確保しながら進める必要があります。現地で実際にとっている対策ですが、たとえばスチールケーブルで石を縛り、滑り落ちるのを防いだり、サンドバックで巨礫の下部分を支えたり、大きな木製の柱で下から支えたりしています。

不安定な巨礫を取り除く際にロープで固定している様子©CWSA

アフガニスタンには落石リスクで悩んでいるコミュニティがとても多いので、落石リスクを回避する方法を広めるためのガイドラインづくりも進めています。安価で地元のリソースを使って対処ができる方法をさらに広めていきたいと思っています!

(文:事務局長 小美野剛)

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