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関西に来たら食べればいい。そこでしか食べられない551蓬莱豚まんの味。

その地に入った時に、自分をフォーマットさせる味。私はあると思っています。「551蓬莱」、大阪の有名なここの豚まんも私が関西エリアに赴いた際のそんな味の一つです。

ちょうど先日、クルマで関西に行く用がありました。かなりの強行軍で、すぐに引き返さねばならなかったのですが、少し遅い時間の昼食を、大津サービスエリアで取ることにしました。

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最近改装されたこちら、改装後は初めての訪問かもしれません。琵琶湖を見下ろすロケーションを活かした展望レストランなどもあり、地元に人からすれば当たり前のものかもしれませんが、久しぶりに訪れた人を懐かしくさせ、この地を離れる人には離れるのを寂しくさせる。初めて訪れた人には「そうそうこれこれ。この辺と言えばこういうものよね!」とつい心躍らせるような品々、味覚が販売されている、そんな高速道路のSA/PAは単なる安全運転のための休憩施設という以上の価値を感じるものです。

なんと、そこに大阪の豚まんの名店「551蓬莱」の売店があるではありませんか!なんでも上りも下りもありますが、その場で包んで蒸かしているのは東京名古屋方面だけなのだとか。訪れる人が思うことはみな同じなのか、おやつの時間も過ぎて、夕食の時間にはまだ早い。そんな時間にもかかわらず長蛇の列ができていました。

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店内にはいい香り。豚まんの他、シューマイやちまきなども販売され、すぐい食べようという人の他、お土産に蒸かしていないものを買い求める人もたくさんいました。

すると待っている間、一人の男の子が「ねえねえ、何でゴーゴーイチなの?」とお父さんに尋ねました。するとお父さんが反応するのを待たずに「あ、ココイチ?カレー屋さんみたい」と言い出します。ココイチでもゴーゴーカレーでもありません。創業当時の電話番号が大阪551番だったことに由来しているそうですね。そして「味もサービスもここが一番!」を目指して店名に入っているのだとか。そういう意味ではカレー屋さんではないが、固有名詞ではないながらも、「ここいち」は間違っていないわけで、自然とそこに想起した少年の発想は素晴らしい。「よくやった少年」と心の中で叫んだものです。

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長い列とは言え、5分ほど並ぶと後二人ほどと言うところまで進んでいました。ふとその時柱に目を遣ると、当店は現金払いのみでカードなどは使用できないからあらかじめ準備しておいてください、という旨の張り紙がありました。

世はキャッシュレス化の波が押し寄せ、素早く便利になりつつある変革期を迎えた2020年。しかも、高速道路のサービスエリアというパブリックな場所で、ずいぶん頑なだなあと思いました。

中には現金は全く持たない。元気が使えない店は利用しない、という消費行動の判断基準に支払い方法を上げる人もいるほど。そう考えるとこれは大いにビジネスチャンスを逸しているのではないか。取り残されてやがて廃れてしまうのではないか。それは、普段関東に住んでいて、関西に行ったら食べたい551、という小生にとっても由々しき事態!と思ったほどでした。

そしていよいよ、私の番になって注文することに。「豚まん二個と、鶉の卵のちまきを下さい。」というと、蒸し方に大きな声でそのオーダーが伝わり、豚まんは箱に、そしてちまきはビニールの袋に入れられて手渡してくれました。その時、ちまきは湿気でべちゃっとならないようにふんわりと袋の口が閉じられ、出された時は実際に触って、温度の確認をさせてくれました。隣のテーブル居座って早速食べると、しっかりと味の付いた具と、ふっくらモチっとした皮が織りなすハーモニー。もちろん美味しい訳だが、美味しいかどうかより、ああ関西の味だ、来てこれを食べられてよかった♪と思ったものでした。

そう思うと、豚まん一つに温度確認をさせてくれることは、ある人からしたら過剰かもしれませんし、そんなことよりキャッシュレス決済できるようにしてよ、と思う人もいるかもしれません。しかし、むしろそういう全体主義、平準化させるクオリティへの抗いなのではないか。豚まん一口がそんな気付きを私に与えたのでした。

そんな横柄なことは言わないどころか、店員さんもみんなにこやかで元気だが、どこでも食べられる味、よくある雰囲気はむしろは意味がない!そういうメッセージなのではないでしょうか。もちろん今後はキャッシュレス決済ができるようにもなるかもしれませんし、それは味の本質を替えるものではないでしょう。しかしパブリックな場所で購入ハードルを下げ過ぎないことは、多くの人に適度な限定感を感じてもらえる「演出の一部として奏功」しているように感じました。

だいたいのことは「ググれ」ば済む今、行かないと味わえない体験こそ似価値があると思うのです。目的の98%はグーグル先生に聞いて、ネット完結でサクサク済ます。残りの2%に最大限の工数をかけて「取りに行く」。多くの人が面倒だとやらないことをやった人だけが手にすることができる境地。そんな実際に行った人、体験した人、取り組んだ人でなければわからないことが身に付き、手に入る。こういうことにこそ、真の価値が出てくる時代になるのではないか。改めてそんなことを強く感じたのでした。

大阪551番、創業当時に超先駆的な電話番号を持っていた豚まんは、その当時はそもそも地元の人しかほとんど買わない味だった一概ありません。交通網が発達し、私のようなよそ者でも地元の人たちに交じって粋がって食べるようになった21世紀は、ローカルスペシャルこそが価値の源泉になろうとしている。すると次の時代もやはり先駆的あのかしら。551蓬莱の「変わらぬ味」に感じた未来。これからも変わらないでいてほしい。豚まん越しに時間旅行をしているような気持ちになったのでした。

また食べよう、関西に来たら。

ううう「リピートの誘い」までも・・・
魅力あること、入手するためのハードルが高いこと。これもとても大事ですね。そうしたことを度外視しても「普通においしい」味、やるな551蓬莱。


しかしうちで食べたいときもある…よね。差し詰めこれは「関西に行ったつもり」を買うことなのかもしれないなあ。


#わたしが応援する会社 #551蓬莱  #大津SA #豚まん #くるま旅 #日帰り関西

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