地元に何もないと嘆いていた私が、自ら地元に”醸す場”を作り出す話
話を聞いた拠点オーナー
ー秋田県横手市で、ゲストハウスを開業されるまでの経緯を教えてください。
ゲストハウスを運営している場所のすぐ近くに私の実家があり、ここは私の出身地です。
よく言われるような田舎から出ていくときのエピソードのように、私も「ここには何もないな」「ここにいても自分がやりたいことはやれないんじゃないか」と思い、大学進学で上京しました。
在学中には、ヨーロッパやアジアなどを、ゲストハウスやホステル、エアビーを利用して旅していました。
他のゲストやホストとの出会いや、同じ目的地に向かうことがわかり、偶然出会った人と共に旅したりなど、普通のホテル宿泊では味わえないであろう体験ばかりでした。
そういった体験から、「いつか自分でゲストハウスを開いてみたい」という気持ちがありました。就職活動がうまくいかなかったこともあり、「いつかやってみたいと思っていたことをもうやっていこう」と考え、地元の秋田県横手市に戻って、そこでのゲストハウス開業の準備を始めました。
ーゲストハウス開業まで、準備は大変でしたか。
開業の準備は勿論大変でした。
約7か月くらいかかったかなと思います。実家の近くに蔵付きの古民家の物件があり、ここを活用できないかと考え、紹介してもらい、物件が決まった後は改修作業に入っていきました。
最初、解体作業などを自分で行っていましたが、後半は大工さんに入ってもらい、予定していた春のオープンに間に合わせました。
ー最初から、ゲストハウスだけではなくバルも一緒に開いたんでしょうか。
ゲストハウスの機能だけでは運営はなかなか大変だ、というところは最初から考えていたことだったので、お酒を飲みながら食事ができる食事処も合わせて準備し、始めました。
飲み処、食事処があったほうが、地元の方も訪れやすいですし、自然と外からやってきた人と地域の人の関わりが生まれるんじゃないかなあというのもあります。
この古民家には蔵がついているので、そこも『シェア蔵』として利用できるようにしており、作品の展示や交流イベントに使ってもらえるようにしております。
また、これは今年からなのですが、近くの別の蔵物件を回収してサウナも始めました。サウナだけの日帰り利用も、そこでそのまま宿泊することもできるようにしています。
ーお聞きしていると、地域には「蔵」が多いように思うのですが、横手市の文化的背景なんでしょうか。
私自身も実家が味噌蔵で、味噌を作っているのですが、特に蔵が多いのは同じ横手市内の増田町というエリアです。
商人の行きかう町として栄えたところで、明治・大正・昭和の古い建物が今でも残っており、多くの家屋に蔵があります。食べ物を保管するという用途だけではなく、このあたりの地域では物置的に蔵を活用してきた文化があります。
ー一度地元を出て、再度戻ってきたと思うのですが、出る前と戻ってきた後では地元の捉え方は変わりましたか。
変わりましたね…
最初は「秋田には何もないな」と思って、都内に進学したわけなんですが、在学中海外を色々旅した経験もそうですし、一度外に出たことによって、秋田への見方、地元の捉え方が変化していきました。
ゲストハウスを始めるために地元に戻ってきた最初の頃は、まだ胸を張って「地元が好きだ」と言えるような状態では実はなかったんです。
周りからは、「地元を盛り上げるために戻ってきて頑張っている子だ」と見られていたと思うのですが、自分としてはやりたいことをここでやろうとしているだけ…というような心境でした。
ただ、徐々に、地元を出ていく前には見えなかった地域の良さが感じられるようになって。
地方だと一定の閉鎖性、閉塞感みたいなものもよく話に上がるのかなと思いますが、私がいる十文字という町は、地理的にも人と人が行きかいやすいような場所にあるので、外からやってきた人や新しいものを受け入れていく土壌があるなと感じています。
ー普段はどんなゲストが多いですか?訪れる方にはどんな風に滞在してほしいですか。
観光で寄って下さる方もいますし、秋田市内でのお仕事の関係で長期で滞在して下さる方もいます。海外の方だと、「東京や大阪など有名どころはもう行ったので、日本のもっと別の地域に行ってみたい」というディープな方がいらっしゃることが多いです。
どんな形でも、ぜひゆっくりと滞在していただければと思っています。camosibaのバルで飲むのはもちろん、近くに色んな飲食店があるので飲みはしごをするのが楽しいと思います。秋田を楽しむにはお酒が必須です!
ー今後、地域でどんなことをやっていきたいですか。
今年サウナを始めましたが、他にも横手市のりんごを使ったハードサイダー(発泡酒)の事業などを展開しています。
秋田空港に久しぶりに国際線が発着するようになったこともあって、今以上に海外の方に秋田に訪れてほしい、そのために何ができるかと日々考えて運営しています。地域をよくしていきたいという気持ちや、こういうことをやってみたいという意思を持った人を会社に迎え入れながら、今後もいろんなことを手掛けていけたらと思います。
"camosiba(カモシバ)"という名前は、ここ秋田に訪れる人と暮らす人が出会って、いろんな化学反応が起こる場になりますように、そこからはじまる”醸し合い”を育てていけるように、という気持ちを込めて名付けました。勿論、蔵や「醸造する」という地域の良さも込められています。
是非、一度お越しいただけると嬉しいです!
この記事を最後まで読んでいただいた読者の皆さん、いつもありがとうございます!
オーナー阿部さんが待つ、circle秋田県横手市拠点は来年1月に連携開始予定です✨
是非、楽しみにお待ちください!