番外編⑨猫用ミルク

番外編⑨猫用ミルク
こどもの日も近い四月下旬、ねねの様子が何だかおかしい。
何度もトイレの回りをウロウロしていた。
「ねね、どうしたの?」とみつがねねに聞くと
「ん~、ん~、思うようにシッコが出ないにゃん」と苦しくて泣きそうな声でねねが言った。
次の朝…猫トイレには真っ赤に染まった猫砂が!
「ちょっと…これって何!?血尿じゃないの!?」
みつは、見たことのない光景に驚いていた。
何度も何度も繰り返しトイレに座っては血尿をしてぐったりな様子のねねを、みつは1時間もかかる、隣町のみのり市のハッピーアニマルクリニックに連れて行った。
何故近くではなくそんな離れた場所にあるクリニックにねねを連れて行ったかと言うと、近くの病院でねねは爪を切ってもらうのでさえ、本能むき出しでそこのお医者さんのことを拒否したからだ。
その点、ハッピーアニマルクリニックでは、ねねは嫌がることなくおりこうさんにして診察を受けてくれるのであった。
しかし、そこまでの道のりが大変なのである。
「何するにゃん!離すにゃん!!」
ねねには気の毒だが、診察の時、逃げたり暴れないようにねねを捕まえて、洗濯ネットに包む。
「出してにゃ~ん!不安だにゃ~ん!」
車の中で不安そうに鳴くねね。
「ごめんね~、良い子にしてね~、優しいおじさんと優しいお姉さんに会いに行こうね」
なだめるようにみつは言うが、ねねは心配そうに鳴く。
車の中で万が一ねねが失禁してもいいように、かごの中にペットシーツを敷いていたが、ねねはそこにも血尿をしていた。
ねねを守っていた洗濯ネットも血尿で赤く染まっている。
ねねは病院に着くと診察台の上に乗せられ、体重を測ってもらい、先生から触診、血液検査、レントゲンを受け、
先生から腎臓の機能が弱まっています、膀胱に腫瘍があるかもしれませんともいわれ、すぐに、栄養剤、止血剤、抗生剤の指示が出され、ねねは首の後ろに点滴と注射をしてもらった。
点滴中、ねねは処置を嫌がることもなく、
「ここはどこにゃん?色々な臭いと音がするにゃん?」
と不思議そうな顔をしていた。
その日は、みつもホッとして「ありがとうございます!!お世話になりました。」と先生たちに挨拶をして、帰路に就いた。
しかし…次の日
血の色が濃くドロッとした血尿が出た!
さすがのねねもグッタリして、好物のエサも喉を通らない様子。
みつはあまりの衝撃に驚きを隠せなくなり…しかし、やれることはやろうと思い、まずは猫砂で散らかったトイレ周りを片付け、ねねの口に注射器で飲み薬を飲ませた。
「いやんいやん!いやんいやん!」
ねねは首を振り薬を拒み、みつは薬を上手に飲ませることができなかったが、ねねの頭を捕まえ、ねねの口角から薬を飲ませることがなんとかできた。
ねねはエサをあまり食べてくれなかったので、みつは、栄養補給と水分補給にねねにちゅるちゅるを食べさせた。
ねねは、鼻にシワを寄せながら必死にちゅるちゅるを食べた。
みつはとにかく必死だった。病院へも一週間近く通った。
ねねは、毎日の病院への行きかえりで疲れたのか、グッタリしていた。
シッコが出ないのに、トイレにヨロヨロとなりながら何回も歩いていた。
それを見たみつはとてもねねが気の毒にみえて、みつはこのままねねとさよならしてしまうんじゃないかと悲しんでいた。
でも、みつはいつでもねねが栄養補給をできるように、水、カリカリのエサ、柔らかいエサ、水分補給できるエサ、猫用ミルクを準備していた。
ねねはじっと耐えるように猫ベッドに座っていた。
何日もみつはねねに薬を飲ませた。ねねは、みつが与えたエサをあまり食べなかった。
しかし、ちゅるちゅるだけは食べてくれた。
次の日…ねねの皿から柔らかいエサとミルクが無くなっていた。夜にねねが食べてくれたのだろう。
血尿も治まっていた。
「ねね…大丈夫?良い子ね、ねね、エサ食べてくれたの?」
とみつがねねの身体を撫でながら問うと
「うん…何とか食べたにゃん。苦い薬はいらないにゃんよ!」
「もう少しだけ頑張ってちょうだいね、いい子だから…」
「しょうがないにゃんね!」
ねねは、みつの布団の上でゆっくり毛づくろいをしていた…。
みつはねねが寝る前、ねねのエサ皿にそれぞれカリカリ、水、猫用ミルク、水分補給できるペースト状のエサを準備した。
次の日、なんとねねのエサ皿は水以外空になっていた。
ねねは、前足を前に伸ばしたり、後ろ足を後ろに伸ばしたりとう~んと身体を伸ばしていた。
「う~ん!!元気モリモリにゃん!全快にゃん!!」
ねねは日向目掛けてダッシュした。
そして、気持ちよさそうに毛づくろいをした。
それを見たみつはホッと胸をなでおろした。
ねねが元気になってくれて本当に良かったと思った。
動物病院のお医者さんや看護師さん達に感謝の気持ちでいっぱいだった。
みつは、ねねがあまり水を飲まなくなり、また体調を崩すといけないと思って、水分補給できるペースト状のエサと、猫用ミルクを別々にエサ皿に準備してみた。
ねねは、他のエサと一緒にペースト状のエサをペチョペチョと食べてくれたし、猫用ミルクも美味しそうに飲んでくれた。
みつは、これからもねねの体調管理に気をつけていこうと思った。

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