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星新一と素ラーメン

人生において最初の読書体験といえば、たいていの場合絵本からだと思う。

私も例に漏れずそうなのだが、少しだけラッキーだったかなと思うのは母親が保育士で、めちゃくちゃ読み聞かせが上手かったこと。

我が子相手でも一切の手抜き無し、変幻自在の声色で物語のどんなキャラクターにもなってしまう母の読み聞かせは、いつも一瞬で私と妹を物語の世界に連れて行った。

例えば超有名な『ねないこだれだ』などは、出てくるおばけが迫力ありすぎて、他の子ならトラウマになるんじゃないかってくらい怖かった(笑)

あとは2匹の野ネズミが森で大きな卵を見つけてカステラを作る物語『ぐりとぐら』は、なぜかいつもオープニングを愉快な曲に乗せて読んで(歌って?)いたので、私は今でもその一文を曲とセットで覚えている。

“僕らの名前はぐりとぐら、この世で1番好きなのはお料理すること、食べること♫ ”


そんな母の読み聞かせの効果もあってか、私と妹は割と本好きな人間になった。

でも文学少女だったとかでは全然なくて、私が中学・高校あたりで読んだのは、折しも角川映画の全盛期だったので『セーラー服と機関銃』からの赤川次郎とか、『ねらわれた学園』からの眉村卓とか、『時をかける少女』からの筒井康隆など流行りの小説が多かった。

あとは短編小説やショートショートが好きで、特によく読んでいたのは星新一と阿刀田高。

ショートショートは肩の力を抜いて気軽に読めるのが良くて、ちょっと行儀が悪いけれど小腹が空いた時、何の具も入っていない「素ラーメン」(サッポロ一番)を食べながら星新一を読むというのを実家にいた頃よくやっていた。

『ボッコちゃん』を読みながら啜る「素ラーメン」は、何気に美味いのだ。

ちなみにこの場合、阿刀田高では駄目で『ナポレオン狂』は、何というか…もう少し違う食べ物がいい。(結局食べながら読むんかい)

ちょっと変わった私の性癖を書いてしまったが、実を言うと我が妹も昔、この「素ラーメン」に「本」をよくやっていた。

そして彼女がラーメンのお供に読んでいたのは『妖怪大全集』。

姉同様、なかなか変わったヤツである。

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